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「疎外」からの解放
広東省へ出稼ぎにきている中国人はみな「疎外」されている。
ここでいう「疎外」とは、自分たちの伝統的な基盤から切り離されて生きているという意味だ。
中国人の伝統的な暮らしは、大家族主義だ。家族、親戚がお互いに助けあうのが彼らの生き方だ。
とくに、家族の結束は固い。逆にいえば、社会が信用できない、さらにいえば、見知らぬ他人との信頼関係を結ぶことができない彼らにとってみれば、家族だけが拠り所で、家族が結束しなければ生きてゆけないわけだけど。
広東へ出稼ぎにきて孤立して生きている彼らも一年に一度「疎外」から解放される。それが春節(中国の旧正月)だ。
帰省して家族や親戚とのんびり過ごす。御馳走を食べながら一家団欒のひとときを過ごし、親戚や幼馴染の家を訪ねて談笑する。出稼ぎ労働者にとっては至福の時間だ。そうして、また家族のために一年間がんばって仕事をするための英気を養う。