(10-13)
だが、残った黒衣騎兵はさすが精鋭中の精鋭だ。
数が減って空きができた広場を縦横無尽に駆け回る。
しかも、人馬一体となって疾風幽影で突進をかましてくる。
右にいたかと思えば左、目前に迫ったかと思えば消えている。
キージェはその動きを見切って対応しているが、クローレはつられて右往左往するばかりだ。
クレアの矢も的を外し始めた。
一騎がクローレに迫る。
フレイムクロウを構え、正面から受けようとしている。
宿に目をやると、クレアが矢をつがえている。
――だめだ。
キージェは手のひらを向けて腕を伸ばし、クレアを制すると、クローレの背中を押した。
「伏せろ!」
「ちょ、え!?」
「幻影だ」
突進してきた黒衣騎兵は正面衝突するかと思えば、クローレを素通りしていく。
「え、嘘!?」
「本物はこっちだ」
キージェはストームブレイドを背後に突き出し、クローレを軸にして旋回し嵐を巻き起こす。
「うぐぁっ!」
背後に回った敵の背後を捕らえ、一気に剣を振り上げた。
油断を誘う思惑を見切られ、驚愕の表情を浮かべた敵兵が太ももから血を噴いて落馬する。
瞬時に白い矢となったミュリアが飛びかかり、息の根を止める。
キージェはクローレを片手で抱き寄せた。
「俺から離れるなよ」
女が荒い息と共にうなずく。
「しぶといやつらめ」と、オスハルトは残りの二騎をまとめ隊列を組み直すと、二人を囲んで馬を駆る。
キージェは目で敵を追いながら笑みを浮かべた。
「俺たちには続きがあるんだ。邪魔すんじゃねえよ」
コクコクとうなずくクローレがキージェに強く絡みつく。
――今じゃねえって。
だが、終わりの時が近づいていた。
オスハルトは包囲の輪をいったん広げ、左右に馬を操りながら波状攻撃を仕掛けつつ、再び三騎並んで二人と正対した。
キージェは敵をにらみつけたままかたわらのクローレに耳打ちした。
「二人でやるぞ」
「これで終わらせる!」
クローレはフレイムクロウを垂直に構え炎をまとわせた。
血と藁の燃えかすの臭いが炎を揺るがせ、広場が一瞬静まりかえった。
オスハルトの左右から二騎が突進。
炎気障壁を展開したクローレに、敵は怯まず突っ込んでくる。
キージェが渾身の嵐撃絶刃を繰り出すと、クローレの火焔を巻き込んだ渦が敵を飲み込み、炎上させる。
だがそれは罠だった。
「甘いぞ、女!」
フレイムクロウを振り抜いていたクローレは無防備な体勢をさらしていた。
その隙を狙っていたオスハルトが剣を振り下ろす。
「死ね!」
だが、その剣は空を切った。
「甘いのはおまえだ!」
そこにいたのはクローレではなかった。
女を背後にかばったキージェが哀れみの目でかつての盟友と視線を交えたその瞬間、ストームブレイドが一閃、旋回し、血しぶきと共に剣をつかんだままの腕が宙を舞う。
「グアッ!」
片腕を失ったオスハルトは体勢を崩して落馬した。
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