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(6-7)


   ◇


 あまりにも追いつくのが遅いキージェを、クローレとミュリアは小川の畔で待っていてくれた。


「遅いよ。日が暮れちゃうよ」


 上から目線の余裕のリーダー様に対し、ぜいぜいとあえぎながらキージェは声を絞り出した。


「どうせ、今夜は、野宿なんだ。急いでも、しょうがないさ」


「ヴォルフ・ガルムの新しい被害が出たらまずいじゃない」


「とは言っても、少しは休ませてくれよ」


「しょうがないなあ」と、上から目線で笑いつつも、クローレは水をくんでくれた。


 それをミュリアが浄化してくれる。


「ねえ、見て、すごいでしょ」


「ほお、そんなスキルもあるのか」


 褒められてうれしいらしく、ミュリアは飼い犬のように尻尾を振ってクローレの脚に頬ずりをしている。


「ありがとさん。いただくよ」


 汗だくでよたよたと走ってきたおっさんの体に冷たい水が染み渡る。


 思わず、プハァと声が出る。


「お酒じゃないんだから」


 クローレの笑い声にミュリアの声が重なる。


 ――おっさん。


 何だよ、悪かったな、その通り、おっさんだよ。


 ようやく落ち着いてきたところで、休みを引き延ばすために、キージェはヴェルザードたちと戦ったときに感じたことを話してみた。


「なあ、おまえさんの剣の技、決して悪くないんだが、何か足りないんだよな」


「下手ってこと?」


「いや、下手なやつがフレイムクロウなんて使いこなせるわけないだろ。むしろ、技としては正確だし、威力もある。だけど、演武を見たときも思ったんだが、動きを見切られてるんだよな」


「人間相手に戦うことがないからかな」


「ああ、なるほどな」


 やっぱりそうか……。


 キージェはクローレの偏りに納得していた。


 ダンジョンのモンスターは正面攻撃で、しかも、それぞれ性質が決まっている。


 だから、敵の弱点を知ってしまえば、後は同じ作業の繰り返しになる。


 それはまさに、正確な技を磨く上で一番効率のいい鍛錬になるわけだ。


 討伐実績も積み上がっていくから、Sランクまでいけてしまう。


 だが、人間相手だとそうはいかない。


 モンスターと違って人間は予測不可能で、しかもずるい。


「人間は勝つためなら、どんな手段でも選ぶからな。髪の毛をつかまれたのだってそうだろ」


「ひどいよね」と、クローレは口をとがらせる。「ミュリアを罠にはめたり、私の髪の毛切ろうとしたり、なんでもありだよね」


 クローレの剣は素直すぎて人間相手だと逆にそこにつけ込まれるんだろう。


 卑怯な相手のやり口に対して無防備すぎるのだ。



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