(6-3)
だが、助太刀したくてもヴェルザードが間にいて手は出せない。
「師匠、私は大丈夫」
背中を押さえながらクローレが体を起こすも、ガルドの戦斧に翻弄され、地面を転げ回るばかりだ。
そこへリリスが回り込み、短剣を振りかざす。
「あんたのその体、切り刻んであげるわ!」
キージェが叫ぶ。
「クローレ、マント!」
即座に反応したクローレが腕を広げ、脚を軸に回転しマントをはらませると、リリスの短剣がはじけ飛ぶ。
「師匠、さっそく役に立った!」
「いいぞ!」
二人の連携に苛立ったヴェルザードが杖を振り、黒い魔力の刃が弧を描いてキージェに襲いかかる。
小柄なリリスは木々を蹴りながら高速で駆け抜け、咆哮を上げたガルドが戦斧を水平に振り回す。
三方向からの攻撃が一気に殺到した。
――舐めやがって!
キージェのストームブレイドが一閃し、剣圧が木々の葉を散らし、黒い魔力の刃を粉砕、嵐撃絶刃が決まったかに思われた。
だが、ヴェルザードは卑劣に笑い、杖を地面に突き立てる。
「同じ手にかかるかよ! くらえ、闇の茨!」
地面から黒い茨の鎖が突き上がり、キージェの足を絡め取る。
――チッ!
狙ってやがったか。
キージェが動けなくなった隙に、両手に短剣を握ったリリスがクローレに飛びかかる。
「死になさい!」
「私だって、やられっぱなしじゃないからね!」
クローレはマントをはらませながらフレイムクロウで対抗し、炎弧旋回を繰り出す。
炎の軌跡がリリスを弾き飛ばし、短剣が木の幹に突き刺さった。
「生意気ね」と、リリスは短剣を抜くと茨に足を取られて動けないキージェに狙いを変えた。
「師匠!」
「俺のことは構うな」
と、言ったそばからガルドも戦斧を振り上げ、キージェに襲いかかる。
――くそっ!
かろうじてキージェは魔力の茨を剣圧で切り裂き、戦斧をストームブレイドで受け止めた。
火花が飛散し、金属がぶつかり合う甲高い音が森を貫く。
猛獣並みのガルドの力と体重に押され、キージェの腕が一瞬しびれたところを、ヴェルザードが腕を振るって茨を波打たせ、地面にたたきつける。
キージェの体は縫いつけられてしまった。
「もらった!」と、リリスが両手から短剣を放つ。
頬をかすめ、痛みが走る。
「キージェになんてことするのよ!」
「かすり傷だ」
駆けつけようとするクローレを手で制するが遅かった。
ガルドがクローレの背後から乱暴に銀髪をつかみ、醜悪な笑みを浮かべる。
「雪狼のついでにこいつの銀髪も売り飛ばしてやるか」
「カツラにはいいかもね」と、リリスも細い目で蔑む。
「痛いじゃないのよ!」
クローレは顔をゆがめ、フレイムクロウを振り回すが、銀髪が自縄自縛の鎖となって身動きが取れない。
「てめえら、離しやがれ」と、キージェは叫んだ。
「ほらほら、おっさん、おとなしく見てろって」
ガルドの挑発にリリスも乗る。
「本当はそそられてるんじゃないの」
――だったら、どうだってんだよ!
否定はできねえが、許せねえ。
「させるかっ」
しかし、ようやく茨を寸断して抜け出し、ストームブレイドを構えたものの、大事な銀髪に短剣を突きつけられていてはキージェも手が出せない。
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