(5-3)
「一つ、情報があります」と、ライラが声を落として真顔になる。
「なんだよ」と、三人は顔を寄せ合った。
「ヴェルザードたちですが、となりのキュレル村のギルドで獲物を換金したそうですよ。ギルドの回覧書が今朝届きました」
「うわ、せこい」と、クローレが頬を膨らませる。「私から横取りしたから、ここだとバレると思ったんだね」
「訴えますか?」と、ライラは事務的にたずねる。「いちおうここのギルドでも審判は受け付けてますよ」
クローレは肩をすくめながらあっさり首を振った。
「いいよ、面倒なんでしょ」
「ええ、双方が出頭しなければなりませんし、その間、やはりどちら側もクエストを受けられなくなります」
「なんでクローレも制限されるんだよ」と、キージェは疑問を口にした。
「審判結果が出るまでは、双方を疑うしかありませんからね。相手を貶めるために嘘の提訴をする卑怯者もいるでしょうから」
「そんなんじゃあ、誰も訴えないだろ」
「ええ、実際、私も審判の申請書を受け付けたことがありません」
「実力が物を言う世界だからな。自分で解決しろってことか」
キージェは手を打ち合わせて話を終わらせた。
「行くぞ、クローレ。さっさとこのクエストを片付けて、次の町へ行く」
「はい、師匠となら、どこへでも行きます!」
クローレがキージェの腕にからみつく。
「おい、離れろって! 少しは人目を気にしろよ!」
キージェの声がギルドのホールに響き、冒険者たちからさらなる笑い声と野次が飛び交う。
「見せつけてんな、おっさん!」
「Fランクで、剣聖様だとよ」
「夜だけSランクかよ」
ホールに爆笑がこだまする。
「Sランクの弟子に負けんなよ」
「うるせえよ、ったく」
キージェはゆであがった顔を振りながら、からみつくクローレを引っ張ってギルドの出口に向かった。
「師匠、今回は私がリーダーだからね」
「へいへい、よろしくお願いしますよ、クローレ様」
――まったく、とんだ災難だぜ。
外へ出てようやく野郎どもの臭いから解放される。
肩を落としてため息をつくと、キージェは広場の隣にある市場へ向かった。
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