(2-6)
もう一度まっすぐに突っ込むキージェに対し、クローレは前へ出て剣先を当てに来た。
軽く合わせてすれ違いざまストームブレイドを逆手に握り直し後方へ突き出すも、クローレは読んでいたのか前転で回避、すぐに起き上がってフレイムクロウを構え直す。
――いい動きだ。
キージェは口元に笑みを浮かべ、振りかぶって突進、剣圧でクローレの銀髪が舞う。
だがクローレは強気に応じ、フレイムクロウを地面に突き立て支点とし、そこへ両手で魔力を集中させる。
炎が強く燃え上がり、肌を焦がすほどの熱波が拡散し、キージェは剣を引いた。
炎気障壁は今度は簡単には揺らぐことなく見事に受けきったのだった。
「どう?」と、クローレが得意げに剣を収める。
「なかなかだな」
「なによ、もっと褒めてよ」と、頬を膨らませながら胸を張る。
――うん、まあ、見事だよ、その胸は、な。
キージェは勝手に顔を赤らめながら声を張り上げた。
「よし、このまま攻守関係なく実戦のつもりで行くぞ」
「わかった!」
フレイムクロウに炎をまとわせ、クローレが直線的に突っ込んでくる。
横にかわしたキージェに、振り向きざまに腕を伸ばし水平に剣を振るう。
が、読まれているのか軽く剣を合わせただけでいなされてしまう。
しかし、クローレはさらに右足を軸にした回転技でもう一撃繰り出した。
銀髪がなびき、胸が揺れ、遠心力を乗せた剣先は確実にキージェをとらえたかに見えた。
それに対し、キージェが繰り出したのは嵐撃絶刃。
敵の攻撃を防御力に吸収し、絶大な反発力を拡散させる技だ。
相手の力が強ければ強いほどその効果は増大し、ヴェルザードらを圧倒したように、複数同時に対応すれば、その力は想像を絶する破壊力となるのだ。
「っ!?」
ズガッっと剣圧が空気を切り裂き、衝撃波が泉の水を爆発的に跳ね上げ、体を後方に吹き飛ばされたクローレは顔を歪めて膝をついた。
鮮血が一筋、右腕から滴り落ちている。
「大丈夫か!」
キージェは素早くクローレに駆け寄り、傷口を布で強く押さえる。
「ごめん、受け損なった」
クローレは歯を食いしばり、痛みを堪えている。
「おまえ、ヒーリングのスキルは?」
「ないです……」
彼女の声は小さく、たちまち赤く染まる布に顔が青ざめる。
「まいったな、俺もだ」
キージェは舌打ちし、別の布で腕を縛って止血した。
「心を落ち着けろ。動揺すると血が止まらないからな。傷口を見んなよ。俺がしっかり押さえてるから大丈夫だ」
クローレがふっと笑う。
「なんだよ、ずいぶん余裕だな」
「師匠が慌てすぎてて、なんか笑っちゃって」
彼女の声は弱々しいが、どこか明るい。
「笑い事じゃねえんだが……まあ、気を楽にしてくれるなら、それでいいか」
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