第75話「嵐の前」
夜明けとともに、静寂が破られた。
「警報!警報!統合世界各地で分裂現象発生!」
けたたましいサイレンが鳴り響く。
僕は飛び起きて、急いで外に出た。
「レイ!」
ソーンさんの声が聞こえる。
「始まったか......」
空を見上げると、統合世界の東の空が紫色に光っている。
「あれは......」
「分裂術の光だ」
ソーンさんが厳しい表情で言う。
「ディスコードたちが総攻撃を開始した」
市民広場に住民たちが集まってくる。
みんな、不安そうな顔をしている。
「レイさん!」
技術者の一人が駆け寄ってくる。
「東地区で建物が分離しています!古代部分と現代部分に分かれて......」
「わかりました」
僕が頷く。
「予定通り、住民の皆さんの避難をお願いします」
カイル、フィン、エリックも駆けつけてきた。
「おはようございます......って、これは挨拶してる場合じゃないですね」
フィンが苦笑いする。
「状況はどうだ?」
カイルが聞く。
「統合世界全域で同時攻撃が始まった」
ソーンさんが報告する。
「住民の安全確保が最優先だ」
「......みんな、怖がってるね」
エリックが住民たちを見回す。
子供たちが大人にしがみついている。
お年寄りも不安そうに空を見上げている。
「大丈夫です」
僕が住民たちに向かって言う。
「僕たちが必ず、みんなを守ります」
「レイさん......」
住民の一人が言う。
「本当に大丈夫ですか?」
「はい」
僕が微笑む。
「昨日、みんなで確認したじゃないですか。僕たちは一人じゃない」
住民たちの表情が少し明るくなる。
「そうでした」
「私たちも、レイさんたちを信じています」
「避難の準備をしましょう」
マスター・エルドラが指示を出す。
「西地区の避難施設に向かってください。あそこは古代の防護魔法で守られています」
「はい!」
住民たちが動き始める。
でも、パニックにはならない。
昨日話し合った通り、みんな落ち着いて行動している。
「すごいな」
カイルが感心する。
「みんな、ちゃんと準備してたんだな」
「昨日の話し合いの成果ですね」
フィンが言う。
「レイさんの言葉で、みんな安心できたんでしょう」
「僕一人の力じゃありません」
僕が首を振る。
「みんなで作り上げた信頼関係です」
ウィルさんが近づいてくる。
「レイ君、住民の避難誘導は私たちに任せて」
「ウィルさん......」
「君たちは、もっと大切な仕事があるだだろ?」
ウィルさんが微笑む。
「私たちも、君たちを支えたいんだ」
「ありがとうございます」
僕が深く頭を下げる。
アルカディウス王もやってきた。
「レイたちよ」
王が厳かに言う。
「ついに、その時が来たようだな」
「はい」
「調和破壊者たちの攻撃は、統合世界全体に及んでいる。しかし、彼らの本体は東端の拠点にいるはずだ」
「わかりました」
僕が頷く。
「僕たちが直接向かいます」
「気をつけろ」
王が僕たちを見回す。
「しかし、君たちなら大丈夫だ。昨日見た君たちの絆を信じている」
東の空で、また紫色の光が強くなった。
「急がないと」
ソーンさんが言う。
「被害が拡大する前に、決着をつけよう」
「そうですね」
僕が装置の方を見る。
「準備はできています」
巨大調和増幅装置が、朝日を受けて美しく輝いている。
住民たちが作ってくれた、想いの結晶だ。
「装置は持ち運べないから、決戦の時は僕が戻ってきて操作します」
僕が説明する。
「まず、現地でディスコードさんと話をしてみましょう」
「そうだな」
ソーンさんが同意する。
「いきなり戦うより、まずは対話を試すべきだ」
「でも、相手は攻撃してきてるぞ?」
カイルが心配する。
「それでも、まずは話をしてみます」
僕が答える。
「ディスコードさんも、本当は戦いたくないはずです」
避難が始まる。
住民たちが、整然と西地区に向かっている。
子供たちが僕たちに手を振る。
「お兄ちゃん、頑張って!」
「必ず帰ってきてね!」
「はい!」
僕が手を振り返す。
「必ず帰ってきます!」
大人たちも励ましてくれる。
「私たちの分まで、よろしくお願いします」
「レイさんたちなら、きっと上手くいきます」
「ありがとうございます」
僕が住民たちに頭を下げる。
「みんなの想いを、絶対に無駄にしません」
最後に、マスター・エルドラが近づいてきた。
「レイ」
「はい」
「覚えておいて。あなたは一人じゃない」
エルドラが僕の肩に手を置く。
「私たちの心は、いつでもあなたたちと一緒よ」
「はい」
僕が頷く。
「忘れません」
住民の避難が完了した。
統合世界の中心部には、僕たち5人だけが残った。
「さあ」
ソーンさんが言う。
「出発しよう」
僕たちは東へ向かって歩き始めた。
後ろを振り返ると、巨大調和増幅装置が静かに佇んでいる。
そして西の空には、避難した住民たちがいる。
「守るべきものがはっきりしてるな」
カイルが言う。
「ああ」
ソーンさんが頷く。
「そして、救うべき人たちも」
東の空の紫色の光が、だんだん強くなってくる。
風も強くなってきた。
「嵐の前みたいですね」
フィンが言う。
「......でも、嵐の後には晴れ間が来るよ」
エリックが静かに言う。
「そうですね」
僕が微笑む。
「きっと、美しい晴れ間が」
僕たちは歩き続けた。
統合世界の美しい街並みを通り過ぎながら。
古代の石造りの建物と、現代の技術建築が調和した風景。
これを守りたい。
そして、ディスコードさんたちにも、この美しさを分けてあげたい。
「あ」
エリックが足を止める。
「あそこに、花が咲いてる」
道端に、小さな白い花が咲いている。
嵐が来ているのに、健気に咲いている。
「綺麗ですね」
フィンが言う。
「こんな時でも、花は咲くんですね」
「生命の力だな」
ソーンさんが言う。
「どんな困難があっても、諦めない力」
「僕たちも、この花みたいでありたいですね」
僕が言う。
「嵐が来ても、美しく咲き続ける」
「そうだな」
カイルが拳を握る。
「俺たちも負けてられない」
僕たちは再び歩き始めた。
風はさらに強くなり、空の紫色も濃くなってくる。
でも、僕たちの心は穏やかだった。
やるべきことがはっきりしている。
守るべき人たちがいる。
救うべき人たちがいる。
そして、信頼できる仲間がいる。
「見えてきた」
ソーンさんが前方を指差す。
遠くに、紫色の光に包まれた建物が見える。
調和破壊者たちの拠点だ。
「いよいよですね」
フィンが深呼吸する。
「緊張するか?」
カイルが聞く。
「少しだけ」
僕が正直に答える。
「でも、みんなと一緒だから大丈夫です」
「......うん。一緒だから大丈夫」
エリックが頷く。
「よし」
ソーンさんが立ち止まる。
「最後の確認をしよう」
僕たちも立ち止まった。
「目的は?」
「ディスコードさんたちを救うこと」
僕が答える。
「方法は?」
「まずは対話。それでダメなら、調和術で分裂術を無効化して、心を開いてもらう」
「そして?」
「みんなで一緒に、統合世界に帰る」
僕が微笑む。
「完璧だ」
ソーンさんが頷く。
「みんな、準備はいいか?」
「はい!」
僕たちが声を揃える。
「それじゃあ」
僕が前を向く。
「行きましょう。ディスコードさんたちを、迎えに」
紫色の光が、僕たちを包み込もうとしている。
でも、僕の心には、アズライト98%純度の小石の温かい光がある。
仲間たちの絆がある。
住民たちの想いがある。
装置に込められた、みんなの願いがある。
嵐の前の静寂が、ついに破られる。
でも、僕たちは恐れない。
なぜなら、これから始まるのは戦いじゃない。
救済だから。
新しい絆を結ぶための、最後の冒険だから。
空に雷鳴が響く。
でも、僕たちの足取りは軽やかだった。
希望に満ちた足音が、嵐の音に負けずに響いている。
統合世界の真の完成まで、もう少し。
すべての人が笑顔でいられる世界まで、もう少し。
僕たちは歩き続けた。
仲間と一緒に。
希望を胸に。
愛を心に。
━━━ 【キャラクターステータス更新】 ━━━━━━━━━━━
【名前】レイ・ストーン 【レベル】35
【称号】小石の魔術師・絆の証明者・救済の宣言者・先代の継承者・統合の完成者・平和の守護者・嵐を越える者
【ステータス】
HP: 450/450 MP: 350/350
攻撃力: 28 防御力: 42
魔力: 100 素早さ: 31
命中率: 30 運: 27
【スキル】
・小石生成 Lv.9: 1日3個制限(98%純度維持、最終決戦対応)
・投擲 Lv.4
・鉱物知識 Lv.6
・魔力操作 Lv.10
・身体調和術 Lv.3
・古代文字理解 Lv.4
・空間移動術 Lv.1
・聖なる障壁 Lv.2
・深癒の光 Lv.5
★巨大調和増幅装置操作 Lv.1
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