表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/80

第7話「黒ローブの脅威と小石の新たな力」

朝の採石場で、レイは昨夜ヘルムから借りた防御魔法の本を読みながら小石を握りしめていた。


「集中して魔力を均一に広げる…」


手のひらで青い光がゆらめく。アズライトに近い性質を持つ小石が現れた。昨日より色が濃く、内部の光がより安定している。


「レイ、今日も変わった石を作ってるのか?」


ダンカン親方が近づいてきた。


「はい。魔力を込めた石で、ヘルムさんに評価してもらってるんです」


「そうか。最近お前の石を見る目が鋭くなったと思ったら、勉強してたのか。だが…」


ダンカンの表情が急に険しくなった。


「昨日から変な男がこの辺りをうろついてるんだ。黒いローブを着た怪しい奴でな」


レイの背筋に冷たいものが走った。ソーンだ。


「親方、その男を見かけたら僕に教えてください。危険かもしれません」


「分かった。気をつけろよ」


---


午後、レイはヘルムの店で錬金術の本を読んでいた。


「おや、今日の石は昨日より質が上がってるじゃないか!」ヘルムが青い小石を魔力検知具で調べている。「魔力の密度が均一で、アズライトの純度でいえば60%程度まで来てるぞ」


「60%ですか!本当ですか!」


「本物のアズライトは90%以上だが、60%でも十分実用的だ。素晴らしい!だがな…」


ヘルムの声が急に低くなった。


「君を狙っている者がいるようだね。さっき店の前を黒ローブの男が通った。魔力検知具を持っていたよ」


レイの顔が青ざめた。ソーンが本格的に動き出している。


「ヘルムさん、転移石について教えてください。もしもの時に使えるかもしれないので…」


「転移石は空間を歪めて瞬間移動する道具である。だが作るには高純度のアズライトと複雑な錬金術式が必要で、君のレベルでは…」


その時、店の扉が静かに開いた。


「やあ、お邪魔するよ」


黒いローブのソーンが現れた。昼間の明るい店内でも、フードの奥の顔は見えない。


「宝石商ヘルム、そしてレイ君」


低く落ち着いた声が店内に響く。


「君の作る青い石、なかなか興味深いものだね」


ソーンが懐から魔力検知具を取り出した。ヘルムのものより精巧で、複雑な文様が刻まれている。


「魔術師ギルドの調査により、この村で異常な魔力反応が検出されたのでね。調べてみれば、転生者が希少なアズライトを生成しているとは…実に興味深い」


「ソーンさんは本当に魔術師ギルドの方なんですか?」レイが恐る恐る尋ねた。


「おや、疑っているのかい?」


ソーンが胸元の記章を見せた。だが、ウィルさんの話を思い出す。あの記章は偽物だ。


「その記章…本物ではありませんよね?」


店内の空気が一瞬で張り詰めた。


「…ほう、よく分かったね」ソーンの声に含み笑いが混じる。「確かに、私は正式な魔術師ギルドの人間ではない」


フードが取られ、鋭い目をした中年男性の顔が現れた。左頬に古い傷跡がある。


「私はかつてギルドを追放された元研究者だ。アズライト研究の第一人者だったがね」


「何が目的だ?」ヘルムが警戒しながら尋ねた。


「決まっているだろう。レイ君に私の研究に協力してもらうのだ。君の能力があれば、アズライトの量産が可能になる。そうすれば…」


ソーンの目が異様に光った。


「空間魔法の革命が起こせる。転移石を大量生産し、この世界の交通手段を一変させるのだ」


「それは…素晴らしいことなんじゃないですか?」レイが戸惑いながら言った。


「そうだとも、実に素晴らしい。だが魔術師ギルドの連中は私の研究を『危険』だと言って止めた。アズライトの過剰使用は空間に亀裂を生むとかなんとか…杞憂もいいところだ」


ソーンが一歩前に出た。


「だが君になら分かるはずだ、レイ君。転生者として、この世界をより便利にしたいと思わないかい?」


レイは迷った。確かに転移石が普及すれば、人々の移動は楽になる。だが、ソーンの目には狂気じみたものが宿っている。


「少し…考えさせてください」


「残念だが、時間はないのだよ」


ソーンが懐から小さな水晶を取り出した。それは赤く光っている。


「これは拘束石だ。君をラインガルドの私の研究所まで転移させる」


水晶が強烈な光を放った。レイとヘルムの体が光に包まれ、身動きが取れなくなる。


「何をする!」ヘルムが叫んだが、体が金縛りにあったように動かない。


その時、レイに閃きが生まれた。


(そうだ!魔力を込めた小石なら…ソーンさんの魔法を無効化できるかもしれない)


レイは必死に集中した。手のひらに小石を生成し、そこに今まで以上の魔力を込める。


「魔力操作…魔力を外に放出!」


青い小石が眩い光を発した。その光が拘束石の赤い光と激しく干渉し合う。


「何だと?!アズライトの光で拘束魔法を中和しただと?」


ソーンが驚愕の声を上げた。


拘束が解けた瞬間、レイは青い石を思い切りソーンに向かって投げた。


「えいっ!」


石はソーンの額に命中した。小さな石だが、魔力が込められているため衝撃は大きい。


「ぐあっ!」


ソーンがよろめいた隙に、レイは立ち上がった。


「ヘルムさん、大丈夫ですか?」


「ああ、君のおかげで助かったぞ。まさか魔力を込めた石で拘束魔法を無効化するとは…素晴らしい!」


ソーンが額を押さえながら立ち上がった。


「面白い…実に面白いぞ、レイ君。君の石は単なるアズライトの模造品ではないな。独自の性質を持っている」


血を流しながらも、ソーンは興味深そうにレイを見つめた。


「今日のところは引こう。だが、これで終わりではない。君の力は必ず私の研究に必要だ」


ソーンが新たな転移石を取り出した。


「次に会う時は、もっと強力な手段を用意してくる。覚悟しておくことだね」


光とともに、ソーンの姿が消えた。


---


「大丈夫だったかい、レイ」


ウィルが息を切らして店に駆け込んできた。


「村の人たちから変な光が見えたと聞いて…やはりソーンの仕業か」


「ウィルさん、ソーンさんは元魔術師ギルドの研究者だったんです」レイが説明した。


「そうか…それで合点がいった」ウィルが頷いた。「実は私も昔、魔術師ギルドで働いていたことがあるんだ。ソーン・ブラックウッドという名前なら聞いたことがある」


「えっ、ウィルさんも魔術師ギルドに?」


「下級の事務員だったがね。ソーンは確かに優秀な研究者だった。だが、危険な実験を繰り返して追放されたんだ。空間魔法の暴走で研究所を半壊させたという話もある」


ヘルムが深刻な顔で言った。


「つまり、少年の能力を使って再び危険な研究を始めようとしているということか」


「そういうことだ。レイ、君はもうこの村にいない方がいい」ウィルが言った。「ソーンは必ず戻ってくる。今度はもっと用意周到にな」


「でも、どこに行けばいいんですか…」


「ラインガルドである!」ヘルムが提案した。「東の大都市にある正式な魔術師ギルドに保護を求めるんだ。君の能力と状況を説明すれば、きっと助けてくれる」


レイは決意を固めた。


「分かりました。ラインガルドに向かいます」


「だが一人では危険だ」ウィルが立ち上がった。「私も一緒に行こう。昔の縁で、ギルドに顔が利くからな」


「ウィルさん…ありがとうございます」


「それに」ヘルムが微笑んだ。「君にはこれを渡しておこう」


ヘルムが小さな袋を差し出した。中には光る青い粉が入っている。


「アズライトの粉だ。緊急時に魔法の触媒として使えるぞ。君の作った石を砕いて粉にしたものだ」


「ありがとうございます、皆さん」


レイは感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。


「明日の朝一番で出発しよう」ウィルが言った。「ソーンが戻ってくる前にな」


---


その夜、レイは小さな荷物をまとめながら考えていた。


(転生してまだ数ヶ月なのに、もう大きな冒険に出ることになるなんて…でも、逃げてばかりはいられない)


手のひらに小石を生成してみる。今日の戦いで、自分の石が単なるアズライトの模造品ではないことが分かった。独自の性質を持つ、特別な石なのだ。


「小石生成スキル…まだまだ可能性がありそうですね」


窓の外を見ると、東の方角に星が輝いている。ラインガルドはあの方向にあるのだろう。


(ソーンさんのような悪用ではなく、人々のために自分の力を使いたい。この小さな石で、大きな善いことを成し遂げたい)


レイは決意を新たにした。明日からの旅路は険しいものになるだろうが、信頼できる仲間がいる。きっと何とかなる。


そして何より、自分の「小石生成」スキルには、まだ知らない大きな可能性が眠っているような気がしていた。


---


翌朝、レイとウィルは村を後にした。


振り返ると、採石場で働く人々の姿が見える。ダンカン親方が手を振っているのが見えた。


「必ずまた帰ってきます」レイが小さく呟いた。


「ああ、きっとだ」ウィルが優しく言った。「その時は、もっと立派になった君に会えることだろう」


東の空に朝日が昇り、新たな冒険が始まった。


ラインガルドまでは徒歩で3日の道のりだという。その途中で何が待ち受けているか分からないが、レイは手のひらの小石を握りしめて歩き続けた。


---


━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス】 ━━━━━━━━━━━

【名前】レイ・ストーン 【レベル】7(↑1)

【称号】小石の魔術師

【種族】人間(転生者) 【年齢】16歳

【職業/クラス】冒険者/錬金術見習い


【ステータス】

HP: 115/115 (↑10) MP: 28/28 (↑4)

攻撃力: 6 (↑1) 防御力: 7 (↑1)

魔力: 14 (↑3) 素早さ: 8 (↑1)

命中率: 9 (↑1) 運: 6 (↑1)


【スキル】

・小石生成 Lv.6: 魔力を込めた青い小石を生成。拘束魔法を無効化する特殊性質を発現。アズライト純度60%相当の石を安定生成可能。

・投擲 Lv.1→2: 魔力石の投擲で敵を怯ませることができる

・鉱物知識 Lv.5: 錬金術的観点での鉱物理解。アズライト粉末の活用法を習得

・魔力操作 Lv.2→3: 魔力を外部放出可能。光による拘束魔法の中和技術を獲得(New!)


【関係性】

・ウィル:元魔術師ギルド職員の下宿先老人。レイを守るため共にラインガルドへ向かう旅の同行者(信頼↑↑)

・ヘルム:宝石商、アズライト粉末を提供してくれた恩人(感謝↑)

・ダンカン:採石場の親方、レイの帰りを待っている(友好維持)

・ソーン・ブラックウッド:元魔術師ギルド研究者、レイの能力を狙う危険人物(敵対↑↑)なぜかレイが転生者と気が付いている



第7話「黒ローブの脅威と小石の新たな力」をお読みいただき、ありがとうございました。


この話では、ついにソーンが正体を現し、レイの前に立ちはだかりました。元魔術師ギルドの研究者という設定は、単なる悪役ではなく、かつては正当な目的を持っていた複雑なキャラクターとして描きたかったからです。技術の進歩と安全性のバランス、そして力の使い方について考えさせられる展開になったのではないでしょうか。


レイの「小石生成」スキルも新たな段階に入りました。単なるアズライトの模造品ではなく、独自の性質を持つ特別な石を作れることが判明。拘束魔法を無効化するという予想外の力を発揮しましたが、これはまだ氷山の一角に過ぎません。


また、今回は村の人々との絆も深く描かれました。ヘルム、ウィル、ダンカン親方など、レイを支える人たちがそれぞれの方法で彼を助けようとする姿は、人と人との繋がりの大切さを表現したかった部分です。


次回からはいよいよラインガルドへの旅が始まります。大都市での新たな出会い、魔術師ギルドでの正式な評価、そしてソーンとの本格的な対決など、物語はさらに大きなスケールで展開していく予定です。


レイの小石がどんな奇跡を起こすのか、どうぞ引き続きお楽しみください。


感想・コメント、励みになります。お気軽にお寄せください!


※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ