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第68話「敵の正体」

翌朝、僕たちは森の奥へ向かった。エリックの自然感知が捉えた敵の本拠地を、詳しく調査するためだ。


「......この辺りから、空気が重い」


エリックが立ち止まり、植物の蔓を地面に這わせた。昨日よりもさらに深刻な表情で、自然との対話を続けている。


「無理はするなよ、エリック」


ソーンさんの心配そうな声に、エリックは小さく頷いた。


「......大丈夫。でも、みんな気をつけて。ここから先は...心を強く持たないと」


フィンが古代文字の書かれた石碑を発見した。


「これは...『分離の聖域』と書かれていますね。かなり古い文字です」


「分離の聖域だと?そんな場所がこの森にあったのか」


ソーンさんが眉をひそめる。僕たちが知っている統合世界の歴史には、そんな記録はなかった。


「......石碑の奥に、大きな建物がある。でも、近づくと...」


エリックの警告と同時に、空気が冷たくなった。僕の小石も微かに震えている。何か強大な力が、この先にあるのだ。


「レイ、調和術の準備はいいか?」


「はい。いつでも」


僕たちは慎重に進んだ。古い遺跡の入り口が見えてきた時、突然声が響いた。


「よく来たな、統合世界の『英雄』たちよ」


紫色の霧が湧き上がり、その中から一人の男性が現れた。中年の現代人で、知識人らしい風貌をしているが、その目には深い憎悪が宿っている。


「貴様が調和破壊者の首領か」


ソーンさんが警戒しながら問いかける。


「私はディスコード・グレイソン。そして、統合世界の真実を知る者だ」


ディスコードと名乗った男は、僕たちを見下すような表情で続けた。


「君たちは統合世界を美しいものだと思っているだろう。しかし、それは偽りの調和に過ぎない」


「偽りだと?」


「そうだ。古代と現代は本来分離していたもの。無理に統合しようとするから、必ず破綻する」


ディスコードの言葉に、僕は強い違和感を覚えた。


「そんなことありません。僕たちは住民のみなさんが本当に幸せになっているのを見てきました」


「幸せ?」ディスコードが嘲笑う。「君は何も知らないのだな、小石の少年よ」


その時、ソーンさんが何かに気づいたような表情を見せた。


「待て...ディスコード・グレイソン。その名前、どこかで聞いたことがある」


「ほう、古代文献の研究者なら知っているかもしれんな」


ソーンさんが記憶を辿る。


「確か...統合世界建設初期の記録に。古代文明研究所の主任研究員、統合理論の基盤を築いた人物」


「よく覚えているじゃないか」


ディスコードの表情が変わった。誇らしさと苦悩が入り混じった複雑な表情だ。


「私は元々15年間古代文明を研究し、この統合世界ができた時、理論的基盤を築いた。統合の実現のために、私の人生を捧げたのだ」


「それなのに、なぜ...」


フィンの疑問に、ディスコードの目が怒りに燃えた。


「なぜだと?私が統合世界のために全てを捧げたその時、『現代人の思い上がり』として切り捨てられたからだ!」


ディスコードの怒りの叫びが森に響く。


「統合完成後、私の研究成果は政治的配慮で他者に移譲された。古代魔法研究からは排除され、『理論ばかりで実践を知らない』として現場からも疎外された」


「そんな...」


「私が最後の改善提案を町のために提出した時、提案書は読まれることもなく破棄された。『余計な口出しをするな』とな」


ディスコードの声が震えている。それは怒りだけでなく、深い悲しみも含んでいた。


「私は『統合の美名で自己顕示欲を満たそうとした偽善者』と公的に非難され、住居も研究設備も全て失った。完全に社会から抹殺されたのだ」


僕の胸が痛んだ。ディスコードは確かに加害者だが、その前に統合世界の被害者でもあったのだ。


「だからといって、住民のみなさんを巻き込むのは間違っています」


「巻き込む?」ディスコードが首を振る。「私は彼らを救っているのだ。偽りの統合から解放しているのだ」


「......それは違う」


エリックが静かに口を開いた。


「......昨日、子供たちを見た。古代の子も現代の子も、本当に友達だった。偽りじゃない」


「子供たちは騙されているだけだ。大人になれば統合の欺瞞に気づく」


「気づかないよ」


カイルが力強く言った。


「俺たちが見た職人たちも、本当に協力したがってた。一緒に作業することを心から喜んでたんだ」


「それは...」


ディスコードの表情に迷いが浮かんだ。


「君たちの経験は特別な例に過ぎない。統合の本質は分裂と対立だ」


「それなら証明してみせろ」


ソーンさんが挑戦的に言った。


「お前の理論が正しいなら、なぜ住民たちは昨日分離を拒否したのだ?強制的に分けられることに抵抗したのだ?」


「それは...一時的な感情に過ぎない」


ディスコードの声が弱くなった。


「私の分裂術がさらに深く作用すれば、彼らも真実に気づく」


「分裂術?」


フィンが鋭く反応する。


「理論的に考えて、分裂術は使用者自身にも影響を与えるはずです。あなた自身が分裂の影響を受けているのではありませんか?」


「馬鹿な!私は分裂術を制御している!」


しかし、ディスコードの否定は必死すぎた。


「......ディスコードさん」


僕は思い切って話しかけた。


「あなたが統合世界のために尽くされたことは、きっと無駄じゃありません。今からでも一緒に本当の統合を目指しませんか?」


「本当の統合だと?」


ディスコードが僕を見つめる。その目に、一瞬だけ迷いが浮かんだ。


「統合など不可能なのだ。私が身をもって証明されたのだから」


「でも、住民のみなさんは統合を選んでいます。分離されることを嫌がっています」


「それは偽りの調和に洗脳されているからだ」


ディスコードは再び頑なになったが、その声には確信が感じられなかった。


「ディスコード、君はかつて統合の理想を信じていたのだろう?」


ソーンさんが優しく問いかける。


「その理想は間違っていたのか?君が15年間研究し続けた古代文明の可能性は、全て無意味だったのか?」


「......それは」


ディスコードが口ごもる。


「私の理想は...裏切られたのだ」


「理想を裏切ったのは一部の人たちです。住民のみなさんではありません」


フィンの冷静な指摘に、ディスコードは反論できなかった。


「......でも、もう遅い。私は調和破壊者として、統合世界の敵として立ってしまった」


「遅くなんかありません」


僕は3個の小石95%純度のアズライトを手に取った。しかし、攻撃のためではない。


「あなたの心の分裂を、深癒の光で癒やせるかもしれません」


「やめろ!」


ディスコードが紫色の障壁を展開する。


「私に調和術など効かない!分裂術こそが真実なのだ!」


しかし、その障壁は昨日ほど強固ではなかった。僕たちとの会話で、彼の心に迷いが生じているのだ。


「ディスコード、君の部下たちはどうなのだ?」


ソーンさんが鋭い質問を投げかけた。


「彼らも君と同じように統合世界で裏切られた人たちなのか?」


「......そうだ。我々は皆、統合世界の被害者だ」


「なら、君たちを救うのも統合世界の責任ではないのか?敵として排除するのではなく、仲間として受け入れることが」


ディスコードの表情が大きく揺らいだ。


「仲間だと?この私を?」


「そうです」


僕は確信を込めて言った。


「あなたは統合世界を愛していたから、裏切られた時にこんなに苦しんだんです。その愛情は偽物じゃありません」


「私が...統合世界を愛していた?」


ディスコードが呟く。その声には、長い間封印していた感情が滲んでいた。


「......もしかしたら、そうかもしれない。私は統合世界を憎んでいるつもりだったが...」


その時、遺跡の奥から複数の人影が現れた。調和破壊者の構成員たちだ。


「ディスコード様、何をしているのですか?」


「敵と話し込んでいる場合ではありません」


部下たちの声に、ディスコードははっと我に返った。


「そうだ...私には同志たちがいる。彼らを裏切るわけにはいかない」


「でも...」


「もう十分だ」


ディスコードが紫色の分裂術を発動させる。しかし、その威力は明らかに昨日より弱い。


「私は調和破壊者ディスコード。統合世界の敵だ。それ以外の何者でもない」


自分に言い聞かせるような口調だった。


「今日の会話は無意味だった。明日からさらに強力な分裂攻撃を開始する」


「待ってください!」


僕の呼びかけも空しく、ディスコードと部下たちは紫色の霧に包まれて消えた。


「......行ってしまった」


エリックが残念そうに呟く。


「しかし、収穫はあった」


ソーンさんが振り返る。


「ディスコードの正体がわかった。そして、彼の心に迷いが生じているのも確かだ」


「分裂術の影響で、彼自身も苦しんでいるようでしたね」


フィンの分析に、僕たちは頷いた。


「あの人を救うことができれば...」


僕の呟きに、カイルが力強く答えた。


「絶対に救ってやろうぜ。統合世界のために尽くしてくれた人を、敵のままにしておくなんてできないだろ」


「そうだな。彼を救うことが、真の統合の証明になるかもしれない」


ソーンさんの言葉に、僕たちは深く同意した。



遺跡を後にしながら、僕は今日の会話を振り返った。ディスコードは確かに危険な敵だが、その根底にあるのは統合世界への愛情だった。裏切られた愛情が憎悪に変わっているのだ。


「レイ、君の調和術なら彼を救えるかもしれないな」


「はい。必ず救ってみせます」


小石が、僕の決意に応えるように温かく光った。


統合世界に戻ると、ウィルさんとマスター・エルドラが心配そうに待っていた。


「お疲れ様でした。敵の情報は得られましたか?」


「はい。重要なことがわかりました」


僕たちは今日の発見を詳しく報告した。ディスコードの正体と過去、そして彼の心の迷いについて。


「なるほど...統合世界建設の功労者が敵になってしまったのですね」


マスター・エルドラが深刻な表情で考え込む。


「これは単純な善悪の戦いではありませんね。救済が必要な複雑な問題です」


「ディスコード君のことは、記録にも残っています」


ソーンさんが古文書を取り出した。


「確かに優秀な研究者でした。統合理論の基礎を築いた人物の一人です」


「それが今は...」


ウィルさんが悲しそうに呟く。

「でも、希望はあります」


僕は今日の会話を思い出した。


「ディスコードさんの心には、まだ統合への愛情が残っています。分裂術の影響で混乱しているだけかもしれません」


「そうですね。彼を救うことができれば、調和破壊者組織も大きく変わるでしょう」


マスター・エルドラの言葉に、僕たちは希望を感じた。


「明日からさらに強力な攻撃が来ると言っていました」


フィンの警告を受け、僕たちは対策を練った。


「住民のみなさんとの絆をさらに深めることが大切ですね」


「そうだな。真の統合の力を示すことが、ディスコードの心を動かす鍵になるかもしれない」


ソーンさんの総括に、僕たちは決意を新たにした。


敵の正体は判明した。そして、救済の可能性も見えてきた。明日からの戦いは、破壊ではなく救済のための戦いだ。


統合世界の真の力を示し、ディスコードの心を調和で満たす。それが僕たちの新たな使命だった。


━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス更新】 ━━━━━━━━━━━


【名前】レイ・ストーン 【レベル】34

【称号】小石の魔術師・救済の希望


【ステータス】

HP: 430/430 MP: 310/330

攻撃力: 26 防御力: 38

魔力: 95 素早さ: 29

命中率: 28 運: 25


【スキル】

・小石生成 Lv.9: 1日3個制限(救済意志で共鳴力向上)

・投擲 Lv.4

・鉱物知識 Lv.6

・魔力操作 Lv.10

・身体調和術 Lv.3

・古代文字理解 Lv.4

・空間移動術 Lv.1

・聖なる障壁 Lv.2

・深癒の光 Lv.5


感想・コメント、励みになります。お気軽にお寄せください!


※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

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