第49話「学術都市の賢者」
統合世界の空に浮かぶ二つの太陽が、東の学術都市群を照らし出している。僕とカイルは、街の入り口で足を止めた。
「うわあ……これは凄いな」
目の前に広がる光景は、まさに異世界だった。古代の石造図書館と現代のガラス張り研究施設が、まるでパズルのピースを無理やり組み合わせたように混在している。高さ100メートルはありそうな古代の魔法塔の隣に、現代の電子機器が並ぶ実験棟が建っている。
「レイ、気をつけろよ」カイルが警告する。「この街は特に技術と魔法の干渉が激しいんだ。研究者たちが色々実験してるから、予期せぬ現象がしょっちゅう起きるらしい」
実際、街を歩いていると、古代の魔法陣と現代の配電盤が隣り合って設置されている箇所で、小さな火花が散っているのが見える。
「フィンはこんな場所にいるのか……」
「ああ、あいつらしいだろ?」カイルが苦笑する。「知的好奇心旺盛だから、この混沌とした環境に飛び込んでいったんだ」
僕たちは街の中心部へ向かった。古代文字と現代文字が併記された看板を頼りに、メイン図書館を目指す。
「レイ、そういえば……」カイルが歩きながら話しかけてくる。「フィンのやつ、この半年でかなり変わったって聞いてるぜ。統合世界の研究に没頭して、重要な発見をしたらしい」
「重要な発見?」
「詳しくは知らないが、古代魔法と現代科学の融合理論について、何か新しいことを見つけたって話だ」
その時、前方から大きな爆発音が響いた。
「うわあああああ!」
悲鳴と共に、煙が立ち上る。僕たちは慌てて音の方向へ走った。
煙の発生源は、古代魔法学研究棟と現代物理学実験棟が接続された建物だった。入り口付近で、研究者らしき人たちが右往左往している。
「何が起きたんですか?」僕が声をかけると、白衣を着た中年男性が振り返った。
「ああ、君たちは……また魔法陣と電子機器の相互干渉が起きたんだ」男性は困り果てた様子で説明する。「古代魔法の実験中に、隣の現代実験室の機器が反応してしまって……両方の実験が暴走状態になってしまった」
建物の中から、断続的に火花が飛び散っている。
「危険すぎて中に入れない」別の研究者が嘆く。「このままでは貴重な資料が……」
「レイ」カイルが僕を見る。「お前の調和の力が必要だな」
僕は頷いた。これは、統合世界でよく起きる問題の典型例だ。
「みなさん、少し下がっていてください」
僕は建物に近づき、【小石生成】スキルを発動した。青く輝く小石が手のひらに現れる。アズライト純度85%の小石だ。そして深癒の光を使用した。
「調和の力よ、対立する力を和らげて」
小石から発せられる調和の波動が、建物全体を包み込む。すぐに、内部から聞こえていた異常音が静まった。火花も止まり、煙も薄くなっていく。
「すごい……」研究者たちが驚嘆の声を上げる。
「これで大丈夫だと思います」僕が振り返ると、研究者たちが拍手を送ってくれた。
「君は……もしかして、調和の力を持つという噂の少年か?」白衣の男性が目を輝かせる。
「あの、僕たちは友人を探しているんです」僕は話を戻す。「フィン・アルカードという名前で、風魔法が使えて、眼鏡をかけた知的な感じの……」
「ああ、フィン君か!」男性が手を打つ。「彼なら統合理論研究室にいるよ。この建物の最上階だ。君たちのおかげで安全に案内できる」
僕たちは研究者に案内され、複雑な構造の建物内を上がっていく。古代の石造螺旋階段と現代のエレベーターが奇妙に組み合わさった構造だった。
最上階の扉には「統合魔法科学研究室」と古代文字と現代文字で併記されている。
「フィン君、お客さんだよ」研究者が扉をノックする。
「はい、どうぞ」
聞き慣れた声が中から響く。僕の胸が高鳴った。
扉が開くと、そこには……
「フィン!」
眼鏡をかけた親友が、机の上に古代文書と現代の研究資料を広げて座っていた。半年ぶりの再会だった。
「レイ!カイル!」
フィンが飛び上がるように立ち上がる。僕たちは三人で抱き合った。
「よかった……本当によかった」僕の目に涙が浮かぶ。
「レイ、目が覚めたんですね!」フィンも涙ぐんでいる。「心配していたんです。アルカディウス王から連絡は受けていましたが、実際に会えるまで……」
「みんな、無事で本当によかった」
僕たちは暫く感動的な再会を味わった後、フィンの研究について話を聞いた。
「実は、この半年間で重要な発見をしたんです」フィンが興奮気味に説明する。「統合世界の技術・魔法干渉問題について、根本的な解決策が見つかるかもしれません」
机の上には、古代魔法陣の構造と現代電子回路の設計図が並べられている。
「見てください、これです」フィンが指差す。「古代魔法と現代技術の波動パターンを分析した結果、特定の調和周波数を見つけました。この周波数で同調させれば、相互干渉ではなく相互協力が可能になるんです」
「それって……」
「はい、レイの調和の力と同じ原理です」フィンが眼鏡を光らせる。「つまり、レイの小石の調和効果を技術的に再現できれば、統合世界全体の干渉問題を解決できるかもしれません」
これは凄い発見だ。僕の力だけでは局所的な対処しかできなかったが、フィンの研究が実用化されれば……
「でも、理論は完成しているんですが、実際の装置製作で問題が」フィンが困った顔をする。「古代の魔法工学と現代の電子工学、両方の知識が必要で、一人では限界があります」
「それなら」僕が提案する。「統合世界には、古代と現代、両方の専門家がいるはずだ。協力してもらえないかな?」
「それが……」フィンが苦笑する。「専門家同士の対立が激しくて、なかなか協力が得られないんです。お互いの方法論を理解しようとしないんです」
「だったら、僕が仲裁するよ」
僕の提案に、フィンの目が輝く。
「それは……可能でしょうか?」
「やってみよう。僕たちの力を合わせれば、きっと何とかなる」
その日の夕方、僕たちは統合世界の専門家会議を開催した。古代魔法工学者3名と現代電子工学者3名が、フィンの研究室に集まった。
最初は案の定、お互いの方法論について激しい議論が始まった。
「古代魔法は非科学的で非効率だ」
「現代技術は魂を欠いている」
対立が深まりそうになった時、僕が深癒の光を発動した。
「みなさん、お互いの知識を否定するのではなく、補完し合うことを考えてみませんか」
調和の波動が会議室を包む。参加者たちの表情が和らぎ、建設的な対話が始まった。
「確かに、古代魔法の持つ調和理論は、現代の量子力学と共通点がある」
「現代の精密測定技術があれば、古代魔法の効果を数値化できる」
フィンが嬉しそうに議論を整理する。
「では、共同研究チームを結成しましょう。古代と現代の技術を融合した、新しい調和装置の開発を」
会議は大成功だった。専門家たちは協力して、フィンの理論を実用化することに合意した。
その夜、僕たち三人は久しぶりに語り合った。
「レイ、君の調和の力は本当に凄いね」フィンが感心する。「人の心まで調和させてしまうなんて」
「フィンの研究も凄いよ。統合世界の根本的な問題を解決できるかもしれない」
「俺たちのチームワークも健在だな」カイルが笑う。「レイの調和力、フィンの頭脳、俺の実行力。完璧な組み合わせだ」
「そうだね。でも、まだエリックがいない」僕が少し寂しそうに言う。
「エリックの居場所も、研究で分かってきました」フィンが資料を取り出す。「南西の森林地帯で、植物の生態系変化に対応しているようです。調和装置が完成したら、彼の元へ向かいましょう」
「ああ、そうしよう」
僕たちは再び四人で冒険できる日を夢見ながら、夜更けまで語り合った。統合世界の問題は複雑だが、仲間と力を合わせれば必ず解決できる。
フィンとの再会によって、僕たちの調和への道のりは、また一歩前進したのだった。
━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス更新】 ━━━━━━━━━━━
【名前】レイ・ストーン 【レベル】25
【称号】小石の魔術師・統合世界の仲介者・学術都市の協力者
【ステータス】※回復中
HP: 290/320(回復中) MP: 180/220(回復中)
攻撃力: 19 防御力: 30
魔力: 70 素早さ: 22
命中率: 21 運: 18
【スキル】
・小石生成 Lv.9: 1日3個制限(安全制限・調和効果強化)
・投擲 Lv.4
・鉱物知識 Lv.6
・魔力操作 Lv.10
・身体調和術 Lv.2
・古代文字理解 Lv.4
・空間移動術 Lv.1
・聖なる障壁 Lv.2
・深癒の光 Lv.5: 4つの継承意志統合・統合世界調和効果
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