表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/80

第47話「再会の光」

意識が浮上してくる感覚は、深い海の底から光へと向かうようだった。


重いまぶたを開けると、見慣れた石造りの天井が視界に入る。ここは古代都市の治療院だった。


「う、うーん...」


体を起こそうとした瞬間、全身に鈍い痛みが走る。まるで長い間使っていなかった機械が軋むような、重く疲れた感覚。


「おい、起きたのか!」


聞き慣れた声に驚いて振り返ると、そこには見覚えのある赤い髪の青年がいた。


「カイル!」


「よかった...本当によかった」


カイルの目には涙が浮かんでいる。その表情を見て、僕はようやく状況を理解し始めた。


「どのくらい...」


「半年だ。半年も眠り続けてたんだよ、お前は」


半年。その言葉の重さに、僕は言葉を失った。


カイルが僕の肩に手を置く。「アクアリスさんやヴィラさんが言うには、生命力を使いすぎたせいで体が回復に専念してたらしい。でも、もう大丈夫だって」


「みんなは...フィンとエリックは?」


カイルの表情が少し曇る。「それが...」



治療院の外に出ると、僕は目を疑った。


空には二つの太陽が輝いている。一つは見慣れた黄色い太陽、もう一つは青白く光る古代の太陽だった。


街並みも一変していた。現代的なコンクリートの建物と古代の石造建築が入り組むように混在し、空中に浮かぶ古代の魔法陣と現代の電線が交差している。


「これが統合世界だ」カイルが説明する。「お前が眠ってる間に、こんな風になっちまった」


道を歩く人々も、古代の衣装を着た人と現代の服装の人が混在している。しかし、その表情は決して明るくない。困惑や不安を浮かべている人が多い。


「みんな戸惑ってる」カイルが続ける。「急に世界が変わって、古代の人たちと一緒に暮らすことになったんだから。技術も魔法もごちゃ混ぜで、予想外のことばかり起きてる」


歩いていると、古代の魔法陣に現代の電気が流れて火花を散らしているのが見えた。慌てて作業員たちが修理している。


「問題だらけなんだ」カイルがため息をつく。「みんなが望んだ世界じゃない。でも、もう戻れない」



古代都市の中央広場に到着すると、アルカディウス王とエルディス長老が待っていた。


「レイ君、目覚めてくれて安心した」王が微笑む。「体調はどうだい?」


「まだ少し疲れてますが、大丈夫です。それより、この状況は...」


「統合世界の運営は困難を極めています」エルディス長老が資料を手にしながら答える。「古代の魔法技術と現代科学の予期せぬ融合で、制御不能な現象が多発している。住民間の文化的対立も深刻です」


王が重々しく頷く。「君の素晴らしい救済により、確かに封印は解けた。しかし、世界の強制的な統合は、全ての人にとって幸せな結果ではなかった」


「僕の責任です...」


「違う」王が首を振る。「これは世界調和器の暴走による結果だ。君の責任ではない。そして今、我々に必要なのは責任の追及ではなく、この新しい現実をより良いものにすることだ」


カイルが僕の肩に手を置く。「お前のせいじゃない。お前は最善を尽くしただけだ」



王の執務室で、僕たちは地図を広げて話し合った。


「統合の際、空間の歪みが発生した」王が説明する。「その影響で、多くの人が予期せぬ場所に転移してしまった」


地図には、統合世界の全体像が描かれている。古代都市を中心に、現代の都市部分と古代の遺跡群が複雑に組み合わさっている。


「フィンさんは東の学術都市群に転移したと思われる」エルディス長老が指差す。「そこは古代の図書館と現代の研究施設が融合した地域です。彼の知識欲なら、きっとそこで研究に没頭しているはずです」


「エリックは?」


「南西の森林地帯です。そこは古代の聖なる森と現代の自然保護区が統合された場所。植物の生態系が大きく変化していて、彼の力が必要とされているはずです」


カイルが地図を見つめる。「俺はずっとこの付近でお前を探してた。でも今なら、みんなで一緒に迎えに行けるな」



「それと」王が少し遠慮がちに言う。「ソーン君からの伝言がある」


「ソーンさんから?」


「彼は統合直後から、この新世界の調査の旅に出ている。『レイが目覚めたら、世界の真実を理解するために、まず仲間たちと再会してほしい』とのことだった」


王が小さな手紙を差し出す。ソーンさんの几帳面な文字で短い伝言が書かれていた。


『レイ、お疲れ様だった。この統合世界には、まだ我々の知らない秘密がたくさんあるはずだ。仲間と再会したら、必ず新たな発見があるはずだ。-ソーン』


「みんな、僕を待っていてくれたんですね」


「当たり前だ」カイルが豪快に笑う。「俺たちは仲間だからな」


アルカディウス王が立ち上がる。「レイ君、君に頼みがある」


「なんでしょうか?」


「この統合世界を、本当の意味で調和の取れた世界にしてほしい。君の持つ調和の力なら、きっと可能だ」


「僕一人では無理です。でも、仲間たちと一緒なら...」


「その通りだ」王が微笑む。「仲間との絆こそが、君の最大の力の源だった」



翌朝、僕たちは出発の準備を整えていた。


アクアリスさんが回復薬を準備してくれ、ヴィラさんが携帯用の治療道具を用意してくれた。セルヴィンさんは統合世界用の新しい地図と通信装置を持参した。


「体力はまだ完全じゃない」アクアリスさんが心配そうに言う。「無理は禁物よ」


「分かってます。ありがとうございます」


古代都市の人々が見送りに集まってくれた。半年前は封印に囚われ絶望していた彼らが、今は希望を持って新しい世界で生きようとしている。


「必ず帰ってきてくださいね」ヴィラさんが手を振る。


「この統合世界も、あなたたちの故郷です」エルディス長老が微笑む。


アルテミスさんの思念が聞こえ。『レイよ、君の旅はまだ続く。しかし今度は、世界を救うためではなく、世界をより良いものにするための旅だ』


「はい、分かっています」


最後にアルカディウス王が僕の手を取る。「君がこの世界に希望をもたらしてくれた。今度は君が、その希望を現実にする番だ」


「一人じゃできません。でも、仲間がいれば...」


「その通りだ。仲間との絆を大切にしなさい」



古代都市の門を出ると、統合世界の風景が広がった。遠くには現代の高層ビルと古代の塔が並び立ち、空には古代の飛行魔法陣と現代の飛行機が共存している。


混沌としているが、不思議と美しい光景だった。


「さあ、まずはフィンを迎えに行こうか」カイルが地図を確認する。


「東の学術都市群ですね」


「きっと研究に夢中になってるぞ、あいつは」


歩きながら、僕は自分の手のひらを見つめた。小石生成のスキル。半年の昏睡を経て、その力がより制御しやすくなっている気がする。


【小石生成 Lv.9:1日3個制限(安全制限)】


限界を超えることの危険性を身をもって学んだ。これからは、より慎重に、しかし確実に力を使おう。


「レイ、何考えてるんだ?」


「新しい世界で、僕たちに何ができるかなって」


「何でもだろ」カイルが笑う。「お前は世界を救ったんだ。今度は世界をもっと良くすることだってできるさ」


道の途中で、古代の住民と現代の住民が言い争いをしているのが見えた。言葉や文化の違いで混乱している。


僕は二人の間に入る。「すみません、何かお手伝いできることはありませんか?」


古代の住民が困った顔で答える。「この人の使う道具が、我々の魔法と干渉してしまうのです」


現代の住民も困惑している。「僕も困ってるんです。電子機器が勝手に魔法に反応して...」


「それなら」僕が手のひらに小石を生成する。純度85%のアズライトの石が、柔らかく光る。「この石を間に置いてみてください。調和効果があります」


小石を置くと、不安定だった魔法と電子機器の干渉が収まった。


「おお、これは素晴らしい」


「ありがとうございます!」


二人が笑顔で別れていく姿を見て、僕は確信した。


この統合世界は確かに混沌としている。でも、調和は不可能じゃない。一歩ずつ、みんなで作り上げていけばいい。


「やっぱりお前はすげぇよ」カイルが感心する。


「僕一人じゃできません。でも、仲間がいるから」


東の空に向かって歩き続ける。フィンとエリックが待っている。ソーンもどこかでこの世界を調査している。


新しい世界での冒険が、今始まろうとしていた。



統合世界の夕空に、二つの太陽が沈んでいく。黄色い太陽と青白い太陽が織りなす夕焼けは、見たことのない美しさだった。


歩きながら、僕の心の中で4つの継承意志が静かに響く。


ガロンさんの守護の意志:『この世界の全ての人を守れ』

シリウスさんの希望の歌声:『絶望を希望に変えろ』

ザンドールさんの雷光の意志:『正義を貫け』

イセリアさんの氷雪の叡智:『優しさで包み込め』


「分かってます」僕は心の中で答える。「みんなで、この世界をもっと良いものにします」


風が吹いて、統合世界の新しい匂いを運んでくる。古代の聖なる香りと現代の活力ある香りが混じり合った、希望に満ちた匂いだった。


「おい、あそこに宿場町が見えるぞ」カイルが指差す。


「今日はそこで休んで、早くフィンに会いに行きましょう」


「楽しみだな。あいつの驚く顔が目に浮かぶぜ」


統合世界での新たな冒険。それは世界を救う冒険ではなく、世界をより良いものにする冒険。


僕たちの物語は、まだ続いている。






━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス更新】 ━━━━━━━━━━━


【名前】レイ・ストーン 【レベル】25

【称号】小石の魔術師・統合世界の調和者


【ステータス】※回復中

HP: 250/320(回復中) MP: 140/220(回復中)

攻撃力: 19 防御力: 30

魔力: 70 素早さ: 22

命中率: 21 運: 18


【スキル】

・小石生成 Lv.9: 1日3個制限(安全制限・調和効果強化)

・投擲 Lv.4

・鉱物知識 Lv.6

・魔力操作 Lv.10

・身体調和術 Lv.2

・古代文字理解 Lv.4

・空間移動術 Lv.1

・聖なる障壁 Lv.2

・深癒の光 Lv.5: 4つの継承意志統合・統合世界調和効果


第3章のため称号を整理しました。


感想・コメント、励みになります。お気軽にお寄せください!


※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ