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第45話「王の絶望」

氷雪の叡智を継承したレイは、体力と魔力の一部回復を感じながら、仲間たちと共に地下最深部への階段を降り始めた。世界調和器のあるフロアから、さらに下へ向かう螺旋階段は、古代文明の技術で造られた光る石材で照らされている。


「残り時間は36時間……」エルディス長老が呟く。「しかし、この最深部は特別な空間だ。時の流れが少し異なる可能性があります」


セルヴィンさんが分析装置を確認しながら説明した。「世界調和器の真下に封印された存在……それが古代文明最後の王アルカディウスです。彼は大戦の全責任を一身に背負い、自らの意志で封印を選択しました」


「自分から封印を?」僕は驚いた。


「ええ。彼は王として、文明崩壊の責任をすべて自分が負うと決意した。そして世界調和器と共に、永遠の償いを続けることを選んだのです」


階段は深く続いていた。レイの体力は氷雪の叡智で回復したものの、連続戦闘の疲労は確実に蓄積している。そして何より、小石の前借り使用により、明日分の生成ができない状況が重くのしかかっていた。


「レイ様、お疲れのご様子ですが……」ヴィラさんが心配そうに声をかける。


「大丈夫だよ。4つの継承意志があるから、小石がなくても戦える」レイは微笑んだ。しかし内心では、最強の封印存在との対峙への不安があった。



地下最深部に到着すると、そこには息を呑むような光景が広がっていた。巨大な円形の空間の中央に、美しい装飾が施された王座があり、その王座には一人の男性が座っていた。


古代文明の王アルカディウス。紫のローブに身を包み、金の王冠を戴いた威厳ある姿。しかし、その表情には深い絶望と痛みが刻まれている。王座の周囲には複雑な魔法陣が描かれ、封印の力が渦巻いていた。


「……ついに、来てしまったか」


アルカディウスが重い声で呟いた。その声には、長い年月を経た疲労と、深い後悔が込められている。


「古代文明最後の王アルカディウス」一歩前に出た。「僕は継承者レイ・ストーン。あなたを救済するために来ました」


「救済?」王は苦笑いを浮かべた。「私のような者に救済など必要ない。私は全ての罪を背負う者。世界を破滅に導いた愚かな王だ」


ソーンさんが構造解析眼で王座周辺を分析する。「レイ、この封印は特殊だ。外部からの封印ではなく、彼自身の意志による自己封印だ」


「自己封印……」


「そうだ」アルカディウスが立ち上がった。「私は古代文明を崩壊させた。異世界技術の悪用を許し、戦争を引き起こし、多くの命を奪った。その責任を取るため、自らを封印し、世界調和器の監視者となることを選んだ」


王の言葉に、僕は胸が痛んだ。ガロンの守護意志、シリウスの希望の歌声、ザンドールの雷光の意志、そしてイセリアの氷雪の叡智が、僕の心に響いている。


「でも、それでは本当の解決にならない」僕は言った。「あなたが自分を責め続けても、失われた命は戻らない。大切なのは、その責任をどう活かすかじゃないですか?」


アルカディウスの表情が変わった。驚きと、わずかな希望の光が宿る。


「活かす、だと?私のような罪人が?」


「はい。今、世界調和器が暴走して、現代世界と古代世界の時空統合が始まっています。36時間以内に解決しなければ、両方の世界が混乱に陥る」


「……知っている」王は重く頷いた。「私の怨念と絶望が、世界調和器を狂わせている。そして、それこそが私の真の目的だったのだ」


一同に緊張が走る。


「真の目的?」


「そうだ。私は古代文明の罪を現代世界にも背負わせようとしている。一人で責任を負うのに疲れ果てた。だから、全ての世界を一つにまとめ、全てを破滅に導こうと考えていた」


アルカディウスの告白に、レイは愕然とした。これは単なる救済の問題ではない。王は意図的に時空統合を引き起こそうとしているのだ。


「でも、あなたのお話を聞いていると……」王は続けた。「君は他の封印存在を救済したというのか?私の部下たちを?」


「はい。ヴォルダークさん、アクアリスさん、ガロンさん、シリウスさん、ザンドールさん、イセリアさん。みんな調和の力で救済し、彼らの意志を継承させてもらいました」


王の目に涙が浮かんだ。「そうか……彼らは救われたのか。私の愚かな戦争で苦しんだ彼らが……」


レイは深呼吸をして、重要な提案をした。


「アルカディウス王。今すぐ戦って封印を解くことも可能ですが、僕には一つ問題があります。小石の前借り使用で、明日まで新しい小石が生成できません」


「小石?」


「僕の主力戦術の要です。でも今は4つの継承意志があるので、小石なしでも戦えます。しかし、あなたは最強の封印存在。確実に救済するためには、万全の準備が必要だと思います」


ソーンさんが同意した。「レイの言う通りだ。王の力は他の封印存在とは桁違いだろう。それに、時空統合を意図的に引き起こそうとしている相手だ。慎重になるべきだ」


エルディス長老が時間を確認する。「残り36時間あります。24時間後であれば、レイさんは小石を3個生成できる状態になります」


「24時間の猶予……」僕は考えた。「その間に、作戦を練り直し、体力を完全回復させ、王との対話を深めることはできませんか?」


アルカディウスが興味深そうに見つめる。「対話?私と?」


「はい。あなたの本当の気持ちを聞かせてください。本当に世界を破滅に導きたいのか、それとも別の思いがあるのか」


王は長い沈黙の後、ゆっくりと王座に座り直した。「……興味深い提案だ。では、24時間の猶予を与えよう。その間、私と対話するがいい。ただし、その後は必ず決着をつける。世界の運命をかけて」



僕たちは地下最深部に簡易的な休息場所を設け、交代で王との対話を続けた。アルカディウスは封印の力により王座を離れることはできないが、会話は可能だった。


「私の治世は平和そのものだった」王は語り始めた。「古代文明は最盛期を迎え、アズライトの恩恵により、人々は豊かな生活を送っていた。私は理想的な王だと自負していた」


「何が変わったのですか?」


「異世界からの技術流入だ。より強力な力、より効率的なシステム。最初は素晴らしい革新だと思った。しかし、それが軍事利用されるようになり、制御できなくなった」


王の表情に深い悔恨が浮かぶ。


「私は止めようとした。しかし、もう遅かった。大戦が始まり、古代文明は分裂し、破滅への道を歩み始めた。そして最後の手段として、私は最も忠実な部下たちに封印を頼み、自分も封印されることを選んだ」


「部下たちに封印を頼んだ?」


「そうだ。ヴォルダーク、アクアリス、ガロン、シリウス、ザンドール、イセリア……彼らは私の命令で、世界の安定のために犠牲となった。彼らの封印が世界調和器の暴走を抑えていたのだ」


愕然とした。封印された存在たちは、実は世界を守るために犠牲になった英雄たちだったのだ。


「でも、長い年月が経つうちに、私の心は変わってしまった。彼らを犠牲にした罪悪感、一人で責任を背負い続ける重圧。そして……孤独。私は全てを諦め、全てを破滅に導こうと考えるようになった」



さらに12時間が経過し、残り時間は24時間となった。レイは小石生成が可能な状態に回復した。そして王との対話で、重要な真実が明らかになった。


「実は、私には最後の手段がある」アルカディウスが重々しく語った。「世界調和器を完全に暴走させ、時空統合を不可逆的にする方法だ。それが私の本当の最終目標だった」


「それは……」


「君が私を救済しようとしても、私が拒絶すれば救済は成立しない。そして拒絶の瞬間に、私は最後の力を使って世界調和器を完全暴走させる。古代世界と現代世界が強制的に融合され、両方の世界が混乱に陥る」


ソーンさんが唸った。「最後の悪あがき、ということか」


「そうだ。しかし……」王は迷いを見せた。「君たちとの対話で、私の心にも変化が生まれている。部下たちが救済されたと聞き、君の調和への意志を感じ、私も……」


「まだ迷っているのですね」僕は言った。


「ああ。だから、最後の戦いで決着をつけよう。君の調和の力で私を完全に救済できれば、私は素直に従おう。しかし、もし少しでも失敗すれば、私は最後の手段を発動する」



残り24時間の時点で、僕は小石生成ができるようになったと魔力を感じた。


「やっと戻ってきた」僕は安堵した。


「でも、相手は最強の封印存在だ」ソーンさんが言った。「それに、失敗すれば世界融合が起こってしまう」


「大丈夫」僕は4つの継承意志を感じながら答えた。「ガロンさんの守護意志、シリウスさんの希望の歌声、ザンドールさんの雷光の意志、イセリアさんの氷雪の叡智。そして、今まで救済してきた全ての経験。これらすべてを使って、必ず王を救済する」


ヴィラさんが最後の体力回復魔法をかけ、アクアリスさんが精神安定の治癒を施した。セルヴィンさんとエルディス長老は、万が一に備えた緊急プランを準備する。


「覚悟は決まったか?」アルカディウスが立ち上がった。王座の周囲の封印陣が光り始める。


「はい」立ち上がった。「古代文明最後の王アルカディウス。あなたの長い苦しみを終わらせ、本当の平安を与えます」


王の瞳に複雑な光が宿った。救済への希望と、破滅への衝動が混在している。


「では、始めよう。世界の運命をかけた、最後の戦いを」


━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス更新】 ━━━━━━━━━━━

【名前】レイ・ストーン 【レベル】24

【称号】小石の魔術師・古代都市の来訪者・生命の核修復者・古代技術発見者・空間術習得者・実戦経験者・実戦訓練生・初勝利達成者・守護戦士・英知の探求者・試練突破者・真実の受容者・協力の達人・世界調和の守護者・調和の戦士・魂の救済者・守護者の継承者・希望の歌声継承者・雷光の意志継承者・氷雪の叡智継承者


【ステータス】

HP: 320/320(完全回復) MP: 220/220(完全回復)

攻撃力: 19 防御力: 30

魔力: 70 素早さ: 22

命中率: 21 運: 18


【スキル】

・小石生成 Lv.9: 1日3個・3個でアズライト純度90%

・投擲 Lv.4: 精密攻撃精度向上

・鉱物知識 Lv.6: 古代アズライト理論完全理解

・魔力操作 Lv.10: 古代文明技術統合制御

・身体調和術 Lv.2: 持久力30分維持

・古代文字理解 Lv.4: 古代文明全知識習得

・空間移動術 Lv.1: 実戦での精密運用可能

・聖なる障壁 Lv.2: 協力者保護・古代防御術融合・都市規模防御

・深癒の光 Lv.5: 調和促進・精神安定・魂の浄化・治癒大賢者救済・守護騎士救済・歌姫救済・雷帝救済・氷雪女王救済


【重要な関係性】

・仲間3人:時空異常通信・現代世界への影響確認・24時間の危機意識

・ソーン・ブラックウッド:完全統合術・小石戦術協力

・エルディス・ムーンストーン:都市防衛同盟総指揮・時空危機対応

・ヴィラ:治癒サポート・体力完全回復

・セルヴィン:世界調和器分析・緊急プラン準備

・アクアリス:癒しの聖女・治癒協力者・同行支援

・アルカディウス:古代文明最後の王・最終封印存在・対話24時間完了


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※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

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