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第44話 「氷雪の涙、雷光が照らす心」

「次は氷結の神殿です」


嵐の尖塔から降りた僕に、エルディス長老が緊張した表情で告げた。英知の神殿の観測室では、世界調和器から放たれる光がさらに激しく脈動している。


「残り時間は39時間を切りました」セルヴィンさんが観測装置から顔を上げる。「時空の歪みも視覚的に確認できるレベルまで拡大しています」


実際、神殿の窓から外を見ると、古代都市の向こうに現代の街並みが薄っすらと透けて見えている。あの向こうに、カイルたちがいる。守らなければならない世界がある。


「レイ様、お体の方は大丈夫でしょうか」


ヴィラさんが心配そうに僕の顔を覗き込む。正直、体力はかなり厳しい。ザンドールとの戦いで更に消耗し、小石も明日分まで使ってしまった。


「継承した意志があります」僕は胸に手を当てる。「ガロンさんの守護の意志、シリウスさんの希望の歌声、そしてザンドールさんの雷光の意志。みんなが僕を支えてくれている」


「なら、俺も全力でサポートする」ソーンさんが構造解析眼を光らせる。「完全統合術で、お前の力を最大限に引き出してやる」


「私も同行いたします」アクアリスさんが静かに頭を下げる。「継承者の調和の力を、私の治癒技術で支援させていただきます」



神殿を出て、古代都市の北西へ向かう。氷結の神殿は都市の外れ、氷に覆われた小さな丘の上にある。近づくにつれて、空気がひんやりと冷たくなってきた。


「氷雪の女王イセリア」セルヴィンさんが歩きながら説明する。「古代文明時代、彼女は氷雪魔法の大賢者でした。人々の生活を支える氷の魔法を研究し、砂漠地帯にも清らかな水を届けていた偉大な魔法使いです」


「それが、なぜ封印されることになったんですか?」


「戦争です」アクアリスさんが悲しそうに答える。「戦争で、敵軍が彼女の故郷を氷漬けにしました。住民全てを。彼女は怒りと絶望で暴走し、大陸規模の氷河期を引き起こそうとした。それを止めるために、封印するしかなかったのです」


故郷を失った絶望。その痛みは、僕にも少し分かる気がする。


神殿が見えてきた。白い大理石で作られた美しい建物だが、全体が厚い氷に覆われている。入口付近の氷は青く光り、中に何かが閉じ込められているのが見える。


「あれが、イセリアか」ソーンさんが構造解析眼で観察する。「氷の中に完全に封印されている。怒りと絶望のエネルギーが渦巻いているが…レイ、何か感じるか?」


僕は目を閉じて、心を集中させる。胸の中で、継承した三つの意志が静かに響いている。そして、氷の向こうから聞こえてくる声があった。


『冷たい…寂しい…みんな…みんな帰ってこない…』


「聞こえます」僕は目を開ける。「イセリアさんの声が。とても悲しくて、寂しそうです」



神殿の中に入ると、中央の氷柱の中に一人の女性が封印されているのが見えた。美しい銀髪に青い瞳、氷の女王と呼ばれるにふさわしい神秘的な姿だ。


僕が近づくと、氷柱が青く光り、女性の瞳がゆっくりと開いた。


『また…侵入者ね』イセリアさんの声が、氷を通して響く。『私の悲しみを邪魔しに来たの?それとも、私を倒して英雄になりたいの?』


「違います」僕は氷柱に手を当てる。冷たいけれど、その向こうに温かい魂があることを感じる。「僕は、あなたを救いに来ました」


『救う?』イセリアの表情が歪む。『誰が私を救えるって言うの?私の故郷は氷に閉ざされ、愛する人たちはみんな死んでしまった。この寂しさ、この絶望を、あなたが分かるの?』


氷柱から冷気が噴出し、神殿内の温度が急激に下がる。アクアリスさんが治癒の光で僕たちを暖めてくれるが、イセリアさんの悲しみの方が、氷よりもずっと冷たく感じる。


「分かりません」僕は正直に答える。「僕は、あなたほど大きな喪失を経験したことがない。でも…」


胸の中で、ザンドールさんの雷光の意志が温かく光る。愛する者を失う痛み、守れなかった後悔。そんな感情が伝わってくる。


「でも、僕は最近知りました。愛する人を守れなかった時の絶望を。そして、それでも諦めない強さがあることも」


『諦めない?』イセリアの瞳に、わずかな光が宿る。『全てを失って、何を諦めないって言うの?』


「愛することです」僕は微笑む。「あなたが故郷の人たちを愛していた気持ち。その人たちがあなたを愛していた気持ち。それは、失われていない」



氷柱の中で、イセリアさんの表情が変わる。驚きと、そして微かな希望の光。


『愛は…失われていない?』


「はい」僕は深癒の光を手に集める。小石はないけれど、継承された三つの意志が僕の力を支えてくれる。「ガロンさんは、最後まで仲間を守る意志を貫きました。シリウスさんは、絶望の中でも希望の歌を歌い続けました。ザンドールさんは、愛する人への想いを最後まで手放しませんでした」


光が氷柱を包み、少しずつ氷が溶け始める。


「みんな、愛する気持ちを諦めなかった。だから、その意志は僕に継承されて、今もここにある。あなたの愛も同じです。故郷の人たちへの愛は、今もあなたの心の中にある」


『でも…私は復讐しか考えられなかった』イセリアさんの声が震える。『大陸を氷で覆って、全てを凍らせようとした』


「それも愛だったんです」ソーンさんが口を開く。「歪んでしまった愛だけど、根本にあったのは故郷の人たちを想う気持ちだろう?」


「愛が深いほど、失った時の絶望も深くなります」アクアリスさんが優しく微笑む。「私たちは皆、その痛みを知っています。だからこそ、あなたの気持ちが分かるのです」


氷柱の氷が、大きく亀裂を入れ始める。



『もし…もし私が封印から解放されたら』イセリアさんの声が小さくなる。『私はどうすればいいの?愛する人たちはもういない。故郷ももうない』


「新しい愛を見つけるんです」僕は確信を込めて言う。「故郷の人たちがあなたに望んでいるのは、復讐じゃない。あなたが再び笑顔で、誰かを愛することです」


胸の中で、雷光の意志が強く光る。ザンドールさんの想いが伝わってくる。愛する者を失っても、新しい愛を見つける勇気を。


「あなたの氷の魔法は、人を傷つけるためじゃなく、人々を支えるためのものだった。その優しさは、今も変わらずあなたの中にある」


深癒の光が、継承された三つの意志と共鳴する。守護の意志、希望の歌声、雷光の意志。それらが一つになって、氷柱全体を包む。


『温かい…』イセリアさんの瞳から、涙が流れる。『こんなに温かい光を感じるのは、いつ以来かしら』


氷柱が完全に溶け、イセリアさんが床に膝をつく。長い銀髪が床に広がり、青い瞳が僕を見上げる。


「継承者…あなたが、世界調和器を救う継承者なのね」イセリアさんが立ち上がる。「私の中にあった怒りと絶望が…消えていく」


僕に歩み寄ったイセリアさんが、氷でできた美しい雪の結晶を手に作り出す。


「氷雪の叡智を、あなたに託します」雪の結晶が光に変わって、僕の胸に吸い込まれる。「清らかな心で、全てを包み込む優しさを」


新しい力が体に流れ込む。疲労で重かった体が、少し楽になった気がする。これが六つ目の継承の力。


「ありがとうございます、イセリアさん」


「いえ、私の方こそ」イセリアさんが微笑む。「長い間の氷の眠りから、私を救ってくださって。これで私も、安らかに旅立てます」


光に包まれて、イセリアさんの姿が薄くなっていく。


「継承者よ、最後の封印は困難を極めるでしょう。でも、あなたなら必ず乗り越えられる。愛の力で」



神殿の外に出ると、空の歪みがさらに大きくなっているのが見えた。現代世界の建物が、古代都市と重なって見える。


「36時間を切りました」セルヴィンさんが時空観測装置を確認する。「最後の封印地点は…世界調和器の真下、古代都市の地下最深部です」


「地下最深部?」ソーンさんが眉をひそめる。「そこに何が封印されているんだ?」


「それは…」エルディス長老の表情が重くなる。「古代文明最後の王、アルカディウス陛下です」


僕の心臓が大きく跳ねる。古代文明の王。最後にして最強の封印存在。


「王が…なぜ封印されたんですか?」


「戦争の責任を一身に背負い、世界調和器と共に封印されることを選ばれたのです」アクアリスさんが説明する。「全ての罪を自分が背負うと言って」


僕は空を見上げる。現代世界が透けて見える向こうで、カイルたちが心配して待っているはずだ。


「行きましょう」僕は仲間たちを見回す。「最後の封印を解いて、世界を救います」


胸の中で、四つの継承された意志が静かに光っている。ガロンさんの守護の意志、シリウスさんの希望の歌声、ザンドールさんの雷光の意志、そしてイセリアさんの氷雪の叡智。


みんなの想いを背負って、僕は最後の戦いに向かう。


残り時間36時間。世界の運命を賭けた、最終決戦が始まる。

━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス更新】 ━━━━━━━━━━━

【名前】レイ・ストーン 【レベル】24

【称号】小石の魔術師・古代都市の来訪者・生命の核修復者・古代技術発見者・空間術習得者・実戦経験者・実戦訓練生・初勝利達成者・守護戦士・英知の探求者・試練突破者・真実の受容者・協力の達人・世界調和の守護者・調和の戦士・魂の救済者・守護者の継承者・希望の歌声継承者・雷光の意志継承者・氷雪の叡智継承者(NEW!)


【ステータス】

HP: 120/320(+40) MP: 140/220(+40)

攻撃力: 19(+1) 防御力: 30(+1)

魔力: 70(+4) 素早さ: 22(+2)

命中率: 21(+1) 運: 18(+1)


【スキル】

・小石生成 Lv.9: 1日3個・アズライト純度90%・明日分前借り済み(翌日生成不可)

・投擲 Lv.4: 精密攻撃精度向上

・鉱物知識 Lv.6: 古代アズライト理論完全理解

・魔力操作 Lv.10: 古代文明技術統合制御

・身体調和術 Lv.2: 持久力30分維持

・古代文字理解 Lv.4: 古代文明全知識習得

・空間移動術 Lv.1: 実戦での精密運用可能

・聖なる障壁 Lv.2: 協力者保護・古代防御術融合・都市規模防御

・深癒の光 Lv.5: 調和促進・精神安定・魂の浄化・治癒大賢者救済・守護騎士救済・歌姫救済・雷帝救済・氷雪女王救済


【重要な関係性】

・仲間3人:時空異常通信・現代世界への影響確認・36時間の危機意識

・ソーン・ブラックウッド:完全統合術・小石なし戦術協力

・エルディス・ムーンストーン:都市防衛同盟総指揮・時空危機対応

・ヴィラ:治癒サポート・体力限界警告・薬による回復支援

・セルヴィン:世界調和器分析・最終封印地点案内

・アクアリス:癒しの聖女・治癒協力者・同行支援

・イセリア:氷雪の叡智継承・氷雪女王救済成功


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※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

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