表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/80

第4話「評価係の眼と成分の秘密」

朝日がまだ顔を出し切らない早朝、レイは部屋の小さな机に向かっていた。昨日までウィルから借りた鉱物学の本を夜遅くまで読み込み、目の下には薄く隈ができている。


「成分調整……できるはずだ」


手のひらに意識を集中させ、今日最初の小石を生成する。普段なら意識せずに生み出していた灰色の小石だが、今日は違う。鉱物学の本で学んだ石英の成分を思い浮かべながら、その構造を想像する。


ほんのりと暖かくなった手のひらに、わずかに半透明の小石が出現した。


「これが……石英か!」


生成した石は普段より若干透明感があるが、完全な石英とは言い難い。それでも、意図した成分に近づいたことは間違いなかった。


「レイ! 朝食ができたぞ」


階下からウィルの声が響き、レイは小石をポケットに入れて食堂へ向かった。


---


「今日から君は採石場の石材評価を担当するんだ」ダンカン親方は朝礼で大きな声でそう告げた。「採掘された石材の品質を判断し、等級分けをする重要な仕事だ」


作業員たちの中には驚いた表情を見せる者もいたが、トビーは複雑な表情でレイを見つめていた。


「親方、あいつはまだ来て数週間ですよ」誰かが不満を漏らす。


「黙れ。あの落石事故の対応を見れば、石の硬度を見分ける目があることは明らかだ。それに……」ダンカン親方はレイの肩を叩いた。「この若造、石のことなら驚くほど詳しいんだ」


レイは緊張しながらも頷いた。自分が前世で地質学に興味を持っていたことが、こんな形で役立つとは思ってもいなかった。


---


評価作業は思いのほか複雑だった。採掘された岩石を机に並べ、見た目、触感、硬度、割れ方、さらには簡単な検査用薬品での反応を確認していく。


「これは上質の砂岩、建材向き……これは石灰岩だが不純物が多い、低級……」


レイは黙々と作業を続け、分類した石材にはそれぞれ印をつけていった。時折、自分のスキルで生成した基準となる小石と比較しながら判断する。昨日よりもさらに硬度調整の精度が上がっていることを実感した。


午後になると、一人の男性が特別な箱を持ってダンカンに面会に来た。


「ヘルム、久しぶりだな」ダンカンは男性と握手を交わした。「今日は何か良い石を持ってきたか?」


「ええ、西の山脈で見つけた変わった鉱石です。評価してもらえますか?」


ダンカンはレイを呼んだ。「こいつに見せてみろ。うちの新しい目利きだ」


レイは緊張しながらもヘルムから渡された小さな鉱石の欠片を手に取った。青みがかった透明の結晶で、普通の宝石とは明らかに違う何かを感じる。


「これは……」レイは思わず息を呑んだ。前世で見た鉱物図鑑の記憶が蘇る。「アクアマリンの一種ですが、純度が非常に高い。それに……」


レイは慎重に言葉を選びながら、「微量の魔力を含んでいるようです」と付け加えた。


ヘルムとダンカンは驚いた顔を見合わせた。


「君、よく分かったな」ヘルムは感心した様子で言った。「私は宝石商だが、この石は確かに魔力反応がある。普通の宝飾品として売るには惜しい代物だ」


「魔法の触媒になるかもしれません」レイは自分の知識を総動員して答えた。「または魔力増幅の装飾品に」


ヘルムは微笑んだ。「正解だ。この石は『空詠みの石』と呼ばれ、魔術師たちが風の魔法を唱える際の触媒として重宝される」


レイの頭に閃きが走った。もし自分のスキルでこのような特殊な鉱物を生成できるようになれば……その価値は計り知れない。


「ところで、採石場に新しい目利きがいると聞いて、サンプルを持ってきたんだ」ヘルムは小さな布袋を取り出した。「様々な鉱物のサンプルだ。目利きの練習になるだろう」


レイはそのサンプルを一つずつ手に取りながら、それぞれの特性を確認していった。サファイア、ルビー、翠玉、水晶……どれも小さな欠片だが、前世での知識と照らし合わせながら特徴を述べていく。


「君、本当に面白い若者だな」ヘルムは感心した様子で言った。「もし興味があれば、私の店に来てくれないか? 宝石の鑑定を手伝ってくれると助かる」


レイは喜んで頷いた。宝石商との交流は、自分のスキル発展に大きなヒントになるかもしれない。


---


その夜、レイは自室で集中して二つ目の小石を生成した。今度はサンプルで見たサファイアの成分構造を意識する。


手のひらに現れたのは、わずかに青みを帯びた石だった。完全なサファイアではないが、確実に青色の要素が入っている。


「できる……確実に成分調整ができる!」


レイは興奮して窓から夜空を見上げた。きらめく星々が、無数の可能性を示しているかのようだ。


「小石生成……このスキルの本当の価値がようやく見えてきた」


最後の一つは明日のために取っておこう。レイはそう決めて、ベッドに横になった。まだまだ発展途上だが、一歩ずつ確実に前進している実感があった。


---


翌朝、レイがまだ眠りについている頃、村の入り口では黒いローブを着た人影が歩みを進めていた。


「この村に……珍しい力を持つ者がいるという噂は本当か」


ローブの男は村を見渡し、静かに微笑んだ。


「転移石の材料を見つけられるか、確かめてみるとしよう」


━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス】 ━━━━━━━━━━━

【名前】レイ・ストーン 【レベル】4(↑1)

【称号】石の目利き(New!)

【種族】人間(転生者) 【年齢】16歳

【職業/クラス】採石場評価係


【ステータス】

HP: 105/105 MP: 18/18 (↑3)

攻撃力: 5 防御力: 6

魔力: 6 (↑1) 素早さ: 7

命中率: 8 運: 5 (↑1)


【スキル】

・小石生成 Lv.3→4: 手のひらに小石(直径1cm以下)を1日3個まで生成できる。基本的な成分調整が可能になった。

・投擲 Lv.1: 物を投げる基本的な技能

・鉱物知識 Lv.2→3: 様々な鉱物の特性と用途についての理解が深まった。魔力を含む鉱石も識別可能。


【関係性】

・ウィル:下宿先の老人、引き続き鉱物学を教えてくれる(友好的)

・ダンカン:採石場の親方、レイの才能を信頼している(信頼↑)

・トビー:採石場の若い作業員、レイへの見方が変わりつつある

・ヘルム:宝石商、レイの鑑識眼に興味を持ち協力を申し出た(新規・好意的)


いかがでしたか、第4話。

今回はレイのスキルが“成分調整”という新たな段階に進化し、

鉱物の専門知識が実際の仕事で活かされる場面を描きました。

特に宝石商ヘルムとの出会いは、今後の展開に大きなヒントとなる予感です。


そして最後に現れた“黒いローブの男”。

彼が探す「転移石」とは一体何なのか?

レイのスキルとどのように関係してくるのか……

次回、第5話もどうぞお楽しみに!


感想・コメント、励みになります。お気軽にお寄せください!


※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ