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第3話「小石が救う命、開花する才能」

採石場の朝は早かった。東の空がわずかに明るくなり始めた頃、レイは既に現場へと足を運んでいた。


「おはようございます、ダンカンさん」


「ああ、レイか。早いな。やる気があるのは結構だが、まだ準備段階だ」


採石場の親方ダンカンは、作業員たちに指示を出しながらレイに目配せした。


「今日は昨日より奥の区画で作業するぞ。お前は水汲みと工具の運搬を頼む」


レイは与えられた仕事に黙って頷いた。雑用係の仕事は決して楽ではなかったが、この世界で生きていくための第一歩だ。何より、様々な種類の石を間近で見る機会が得られることに喜びを感じていた。


---


昼休みの時間、レイは採石場の片隅で自分のスキルの実験をしていた。手のひらを集中させると、徐々に小さな石が形成されていく。昨日の発見を元に、今日は硬度だけでなく石の成分にも意識を向けてみた。


「集中...石英のような透明感のある石を...」


手のひらに現れた小石は、わずかに透明感があったが、完全な石英にはほど遠かった。


「まだまだか...」


「何をしてるんだ?」


突然背後から声がかけられ、レイは驚いて振り向いた。そこには若い作業員のトビーが立っていた。レイより数歳年上、恐らく20歳前後だろうか。


「あ、いや...ちょっと...」


「手品か何かか?手のひらに石が現れたように見えたぞ」


「いえ、違います。これは...」


言い訳を考えている間にトビーは床に落ちた小石を拾い上げた。


「変わった石だな。どこで拾った?」


「拾ったわけじゃなくて...」レイは迷った末、正直に話すことにした。「実は僕、小石を生成できるんです」


トビーは一瞬黙り込み、次の瞬間大声で笑い出した。


「生成?冗談だろう!そんな無駄なスキルがあるのか?石なら地面に落ちてるじゃないか!」


その笑い声は周囲の作業員の注目を集めてしまった。レイは赤面しながらも、冷静さを保とうとした。


「確かに普通の石なら意味がないかもしれませんが、硬度を調整できるんです」


「それがどうした?特別な石が作れるなら分かるが、普通の石の硬さを変えたところで...」


トビーの言葉は途中で切れた。採石場の奥から悲鳴が聞こえたのだ。


---


「落石だ!逃げろ!」

「バリケードの支えが折れた!」

「誰か助けてくれ!」


レイとトビーが現場に駆けつけると、採石場の一角で作業用の木製バリケードが崩れかけ、その下に若い見習いの少年が閉じ込められていた。上部からは小さな石が落ち始めており、大きな岩盤が崩れる前兆だった。


「クソッ、支えが必要だ!」ダンカンが叫んだ。「丈夫な木材を持ってこい!」


しかし、適切な材料を取りに行っている間に崩落が進む可能性があった。レイは瞬時に判断した。


「僕が何とかします!」


レイは前に出ると、手のひらを集中させ、1日3個の制限のうちまだ使っていない2個の小石を連続して生成した。今度は意識して最大限の硬度を持つ石を作り出す。


「これを支柱の代わりに!」


レイは生成した石を崩れかけたバリケードの隙間に差し込んだ。普通の小石なら即座に砕けるはずだが、レイの作り出した石は驚くべき硬度を持っていた。一時的にバリケードを支える役目を果たし、他の作業員が少年を引き出すための貴重な数十秒を稼いだ。


少年が無事に救出された瞬間、バリケードは完全に崩れ落ち、小さな土砂崩れが起きた。しかし、人的被害はなかった。


---


「お前...あれは一体...」


事態が収まった後、ダンカンはレイに問いただした。周囲には先ほどまでレイを笑っていたトビーを含め、数人の作業員が集まっていた。


「小石を生成するスキルです。硬度を調整できるので、あの場面では最大限の硬さにしました」


「ただの小石生成じゃなく、特性まで変えられるのか...」ダンカンは顎をさすりながら考え込んだ。「実に興味深い。採石場では石の硬度が命だ。お前のスキル、もっと詳しく見せてもらえないか?」


レイは頷いた。「はい、喜んで。今日はもう使い切ってしまいましたが、明日また...」


「待て、一日に使える回数に制限があるのか?」


「はい、今のところ1日3回までです」


ダンカンは満足げに微笑んだ。「それでも十分だ。明日からは単なる雑用係ではなく、石の特性評価も手伝ってもらおう。報酬も上げよう」


---


その日の夕方、レイは下宿先に戻ると、ウィルに一日の出来事を報告した。


「命を救ったとはな...お前さんのスキルは侮れんな」


「ありがとうございます。でも、まだまだです。石英のような透明な石を作ろうとしたんですが、うまくいきませんでした」


ウィルは急に身を乗り出した。「成分まで変えようとしたのか?」


「はい、試してみたんですが...」


「無理もない。石の成分を理解していなければ変えられるわけがないだろう」ウィルは立ち上がると、古い本棚から一冊の本を取り出した。「これは私が若い頃使っていた鉱物学の基礎書だ。読んでみるといい」


レイは感謝して本を受け取った。古びた表紙には「基礎から学ぶ鉱物の世界」と書かれていた。


「ありがとうございます!これで勉強します」


「お前さんのスキルは決して弱くない。知識と組み合わせれば、大きな可能性を秘めているはずだ」


レイは本を開きながら考えた。小石生成というスキルは、知識と創意工夫次第で無限の可能性を持つのかもしれない。今日の出来事は、その可能性のほんの入り口に過ぎなかった。


夜、ランプの明かりの下、レイは熱心に鉱物学の本を読み進めた。「石英は二酸化ケイ素で構成され...」「鉄分を含む石は...」「結晶構造によって硬度が...」


新たな知識が彼の頭に流れ込み、小石生成スキルの可能性は少しずつ広がっていった。


「明日は成分調整にも挑戦してみよう...」


レイは決意を新たにしながら、次の実験のアイデアをノートに書き留めていった。


━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス】 ━━━━━━━━━━━

【名前】レイ・ストーン 【レベル】3(↑1)

【称号】なし

【種族】人間(転生者) 【年齢】16歳

【職業/クラス】採石場評価係(↑)


【ステータス】

HP: 105/105 (↑5) MP: 15/15 (↑3)

攻撃力: 5 防御力: 6 (↑1)

魔力: 5 (↑1) 素早さ: 7

命中率: 8 (↑1) 運: 4 (↑1)


【スキル】

・小石生成 Lv.2→3: 手のひらに小石(直径1cm以下)を1日3個まで生成できる。硬度調整の精度が向上。

・投擲 Lv.1: 物を投げる基本的な技能

・鉱物知識 Lv.1→2: 基本的な石の特性と種類についての理解が深まった。


【関係性】

・ウィル:下宿先の老人、鉱物学の本を貸してくれた(友好的↑)

・ダンカン:採石場の親方、レイのスキルの価値を認め、昇進させた(尊敬↑)

・トビー:採石場の若い作業員、初めはレイを馬鹿にしていたが、命を救う場面を見て態度が変わり始めた(見直し始めた)


「小石生成」という誰にも見向きもされなかったスキルが、命を救い、人々の心を動かした瞬間──。

評価係への昇進、鉱物学との出会い、そして芽生えた「成分を調整する」という新たな可能性。レイの小さな一歩は、確かな未来への足跡となった。

次回、第4話では、知識を武器にスキルを進化させるレイの新たな挑戦が始まります。果たして、彼は“価値ある石”を自らの手で生み出せるのか──?世界が少しずつ広がり始めます。


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※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

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