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第2話「最弱の石に宿る可能性」

メイプルウッド村の入り口に立ち、レイは深呼吸した。


「ようやく文明らしきものに到着か…」


村は小さいながらも活気があり、朝市が開かれていた。農民たちが野菜や果物を売り、鍛冶屋の音が響き、子供たちが走り回っている。


「まずは情報収集と…仕事だな」


ポケットに手を入れると、前日生成した小石が3つ残っていた。レイはその1つを取り出し、じっと見つめる。


「この小石、本当に俺が"生成"したものなのか。そして…もし硬さを変えられたら?」


彼は小石を握りしめ、「もっと硬く」と念じた。しかし変化はない。


「そうか、単純に念じるだけじゃダメか」


村の広場に向かうと、噴水の周りにはベンチがあった。そこで休んでいた白髪の老人が彼に気づき、手を振った。


「おや、見ない顔だね。旅人かい?」


レイは老人に近づき、会釈した。「はい、昨日この地域に…来たばかりです」


老人はニコリと笑った。「ウィルだ。この村で60年以上暮らしてる。君は?」


「レイ・ストーンです」


「ストーン?珍しい名だね」老人は目を細めた。「石に関わる仕事をしているのかい?」


レイは苦笑した。「いえ、ただの偶然です。実は…仕事を探しているんです」


ウィルは頷いた。「そうか。この村なら幾つか選択肢があるよ。狩人なら猟師のモーガン、作物なら農場主のヘイゼル、鉱物なら採石場のダンカンに話を聞くといい」


「採石場…ですか?」レイの目が輝いた。


「ああ、村の北西に小さな採石場がある。ストーンヘブン都市への石材供給が主な仕事だ」


レイはポケットの小石を握りしめた。「採石場に行ってみます。ありがとうございます」


---


採石場は予想以上に小規模だった。10人ほどの作業員が汗を流し、大きな石を切り出している。


「何の用だ、小僧」太い腕を持つ中年男性が声をかけた。彼の腕には石のような模様の入れ墨があった。


「ダンカンさんですか?仕事を探しています」


男はレイを上から下まで眺め、鼻で笑った。「お前のような細腕で石を切り出せるとでも?」


「力仕事じゃなくても…何か手伝えることがあれば」


ダンカンは首を傾げた。「経験は?」


「…ありません」


「なら帰れ」ダンカンは背を向けた。


レイは諦めかけたが、ふと足元に転がる石くずが目に入った。誰も拾わない小さな欠片。


「この石くずは?」


「捨てるものだ。使い道がない」


レイは小さな石くずを拾い上げた。「これを集めてもいいですか?」


ダンカンは不思議そうな顔をした。「好きにしろ。だが仕事はない」


レイは地面に散らばる石くずを集め始めた。その姿を見たダンカンは鼻で笑ったが、特に止めようとはしなかった。


---


夕方、レイは宿を探していたが、村に宿屋はなかった。


「困ったな…」


再び広場に戻ると、朝会ったウィルがまだベンチに座っていた。


「どうだった?仕事は見つかったかい?」


レイは首を横に振った。「まだです。でも採石場の石くずを集めました」


「石くず?何に使うんだい?」


「実は…」レイはポケットから小さな石を取り出した。「このような小石を作る能力があるんです」

ウィルは目を丸くした。「スキルか!面白い。でも…小石?」

「はい。小さな石しか作れません。しかも1日3個までという制限があります。今日はもう使い切ってしまいました」


ウィルは笑った。「確かに地味だね。でも、どんなスキルにも使い道があるものさ」


レイは石くずと自分の生成した石を見比べた。「石くずと自分の石で何か作れないかと思って」


「創意工夫、大事だね」ウィルは立ち上がった。「宿がないようだから、今夜はうちに泊まりなさい。代わりに明日、裏庭の草取りを手伝ってくれないか」


レイは感謝の気持ちで頭を下げた。


---


ウィルの小さな家で夕食をとりながら、レイは村や世界について質問した。


「この世界には魔法や特殊な能力を持つ人がいると聞きました」


「ああ、『スキル』や『アビリティ』と呼ばれるものだね。生まれつき持つ者もいれば、努力で獲得する者もいる」


レイは小石を見せた。「この能力、何か活用法はないでしょうか?」


ウィルは考え込んだ。「難しいね…普通の石なら拾った方が早い」


レイは落胆したが、ウィルは続けた。


「ただ、もし石の質を変えられるなら話は別だ。純度の高い鉱石や、特殊な硬度の石なら価値がある」


「質を変える…」レイは小石を握りしめた。「試してみます」


---


就寝前、レイは寝室で実験を続けた。小石を手に、集中する。


「硬く…いや、違う。もっと根本から考えないと」


彼は石の構造を思い浮かべた。高校の地学で習った鉱物の結晶構造。現代の知識を思い出しながら、石の分子構造を想像する。


「結晶格子をもっと緻密に…」


手のひらで石を握りしめ、全神経を集中させた。すると微かな温かさを感じた。


「これは…」


石を見ると、わずかに色が変わっていた。指でこすると、普通の石よりも表面が滑らかだ。


「硬さを検証しないと」


彼は採石場で拾った普通の石くずと、自分の小石を壁にぶつけてみた。普通の石くずは小さく欠けたが、自分の小石は傷一つつかなかった。


「成功した…!」


レイは興奮で飛び上がりそうになった。小石に硬度の変化を加えられたのだ。まだ微小な変化だが、可能性は広がった。


「明日、もっと試してみよう」


彼は明日の計画を立てながら、希望を胸に眠りについた。


---


翌朝、約束通りウィルの庭の草取りを手伝った後、レイは再び採石場に向かった。


ダンカンは彼を見て驚いた顔をした。「また来たのか」


「はい。もう少し石くずを集めさせてください」


作業中、レイは石くずの特性を観察した。中には半透明の水晶のような欠片もある。


昼食時、作業員の一人が話しかけてきた。


「毎日石くず集めて何するんだ?」


「実験です」レイは正直に答えた。


「実験?」


レイは自分の小石と、ポケットに入れておいた昨日強化した小石を見せた。「比べてみてください」


作業員は両方の石を手にとって眺めた。「こっちの方が明らかに堅いな。何か加工したのか?」


「そういうことです」レイは曖昧に答えた。


この会話を横で聞いていたダンカンが近づいてきた。


「それを見せてみろ」


レイは強化した小石をダンカンに渡した。ダンカンは石を専門家の目で観察し、驚いた表情を見せた。


「純度が高いな。どうやって加工した?」


「それは…秘密です」レイは申し訳なさそうに答えた。


ダンカンは思案した後、「明日から来るなら、日当3銅貨で雑用係として雇ってやる」と言った。


レイの顔が明るくなった。「本当ですか?ありがとうございます!」


---


その夜、ウィルの家で晩餐をとりながら、レイは採石場での雇用が決まったことを報告した。


「それは良かった!」ウィルは喜んだ。「しばらくはうちに居てもいいぞ。家賃は1週間で銀貨1枚でどうだ?」


「ありがとうございます!」


ウィルはワインを注ぎながら言った。「石の加工ができるなら、将来性があるよ。ストーンヘブン都市には宝石商や魔術師がたくさんいて、質の良い石材を求めている」


レイは考え込んだ。「将来はそっちも視野に入れてみます」


窓の外を見ると、星空が広がっていた。地球とは違う星座。


「小さな一歩だけど、これが俺の新しい人生の始まりだ」


レイは胸の内で誓った。この世界で最弱と笑われた能力を、最強の武器に変えてみせる。


━━━━━━━━━━━ 【キャラクターステータス】 ━━━━━━━━━━━

【名前】レイ・ストーン 【レベル】2(↑1)

【称号】なし

【種族】人間(転生者) 【年齢】16歳

【職業/クラス】採石場雑用係(New!)


【ステータス】

HP: 100/100 MP: 12/12 (↑2)

攻撃力: 5 防御力: 5

魔力: 4 (↑1) 素早さ: 7

命中率: 7 (↑1) 運: 3 (↑1)


【スキル】

・小石生成 Lv.1→2: 手のひらに小石(直径1cm以下)を1日3個まで生成できる。硬度を微調整可能になった。

・投擲 Lv.1: 物を投げる基本的な技能

・鉱物知識 Lv.1: 基本的な石の特性についての知識(New!)


【関係性】

・ウィル:下宿先の老人、レイに親切にしてくれる(友好的)

・ダンカン:採石場の親方、レイの石加工能力に興味を示す(雇用関係)




最後まで読んでいただきありがとうございます!


「小石生成」なんて誰が見てもハズレスキル。でも、レイは決して腐らず、行動し、工夫を重ねていきます。

第2話では“硬度調整”という進展があり、彼にとっても読者にとっても初めての「成果」を感じられる回だったのではないでしょうか。


また、ウィルやダンカンといった脇役も、今後の物語に重要な役割を果たしていく予定です。

小さな村、小さなスキル、小さな進歩。

けれど、それこそがレイの冒険の第一歩。


次回、第3話では「さらなる発見」と「ちょっとした事件」が待っています。お楽しみに!


感想・コメント、励みになります。お気軽にお寄せください!


※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

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