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第9話 校外学習の計画 その1


今日の5、6時限目は2週間後の校外学習に向けて、行く場所を各々考えて発表するようだ。


5時限目は各自のタブレットを使って行きたい場所を調べ、その場所のアピールポイントを考えて近くの席の人というか種族ごとに意見をまとめて、6時限目に発表する流れのようだ。


私は特に行きたい場所は無いので、みんなの意見に賛同したいと思っている。ゾンビ族の会話に混ざろうと、斜め前の席のナルミさんに話しかける。


「ヒマリはヒマリで行きたい所考えておいた方がいいと思うよ。

こっちの会話には混ざらなくて大丈夫だよ」


何故か笑顔で断わられた。最近ヴァンパイア族の人たちと仲良くしているから嫌われてしまったのだろうか。少しショックを受けながらも、隣の席のイブキくんに話しかける。


「イブキくんは人間界で行きたいところとかある?」


イブキくんは間髪を入れずに答える。


「俺は行きたいところなんてない。だからヒマリの行きたいところに賛成する」


「え、本当にないの?」


私は彼の目をまっすぐ見つめて聞いたが、彼はこくりと頷く。

本当はあるんだろうけど、言えないのかな。それとも本当にないのか区別はつかない。私なりに行きたいところを思い浮かべる。


ユアさんが言っていたシブヤにもたまには行きたいし、京都とか大阪、福岡、北海道なんかも食べ物美味しそうで行ってみたいな。でも校外学習じゃ食べ物もそんなに食べられないからどこに行くのが正解かよく分からない。



あっという間に5限目が終わり、6限目となる。

それぞれの発表が終わり、行きたい場所は2択となった。

タブレットの投票画面に映し出されのは……。


1つはシブヤ。もう1つはキョート。


非常に難しい2択である。

どちらも日本っぽいので外せないスポットだ。

最終的に投票の多い方で行き先は決定するようだ。


みんなはサクッと決めて投票していて、リアルタイムで投票率が映し出されておりほぼ半分だ。私とイブキくんの票で行き先が決まってしまう。イブキくんの票は私が決めたものを入れるので実質的には私の選択で決まる。


リュウ先生にも、ヒマリとユイト早く投票しろと名指しされ、余計に焦らされる。みんなの視線が私たちに集まる。


どうしよう。京都もいいけど、ユアさんは渋谷に行きたいことも知っている。それならユアさんの案に乗ればいいのだが、京都を提案したのはナルミさん。私はどちらとも交友関係を築いてしまっている。

どちらかを選べばどちらかを裏切ることになる。一体どうすればいいんだ。


ユイトくんに私の机をトントンと叩いて、ノートの端っこに、『何をそんなに悩んでいるの?』と書いてあった。

それはそうだよね。あなたからすれば私の究極の2択だと思っていないだろう。だが、この選択を間違えれば私はクラスから嫌われるかもしれない。これからぼっち生活になるのは嫌だ。


もう必殺奥義の"どちらにしようかな神様の言う通り"をやるぞ!!これをしたら、最終的には運のせいという逃げ道が用意出来る。


心の声で歌いながら、タブレットの2択画面で指を左右に振る。

みんなは何をやっているんだろう?と不思議な視線を無視し、その結果は渋谷となった。


イブキくんにもシブヤに入れてとノートの端っこに書いて見せた。


そして、この投票は終わる。




結果は校外学習先はシブヤに決まったのである。


放課後になり私は帰ろうとすると、「待ってください」と飴玉のように甘い声が私を呼び、振り向く。

ユアさんはキラキラした表情でこちらを見る。


「ヒマリさん、シブヤに投票して下さってありがとうございます!!


ーーおかげでワタクシの夢が叶いそうですわ!」


そう言って私の手を握ってブンブン振る。


「私だけの力じゃありません。


シュウヤくんを始めとしたクラスのみんながユアさんの意見に賛同したまでです。

ユアさんの気持ちが強かったから決まったのです。だからみんなに感謝してください」


私は彼女の手を静かに解き、クラスの空気に混じる。


彼女は私の言う通りに、みんなに感謝の言葉を述べた。そして、私は彼女の言葉を聞き終えて、ナルミさんの様子を見る。いつもと変わらず、楽しそうに他の子たちと話していて、京都に投票しなかったことを謝れなさそうだ。

とりあえず、寮に戻ろうと教室を後にする。


昇降口を出ようとすると、後ろからまたしても声がする。


「ヒマリ、待ってくれ」


振り向くとイブキくんだった。


「あれ?今日は図書室で会う約束してないよね?」


「そういえば、そうだった」


「それじゃあ、またね」


寮に帰ろうと歩き出すと、腕を掴んできた。

もう一度彼は「待ってくれ」と言った。再び彼を見る。


「ご用件は?」


彼の意図が読めず、少し苛立った言い方をしてしまう。彼は私のムスッとした表情を見て、申し訳なさそうに答える。


「用件と言うほどのものじゃないんだけど、さっきやっていた、謎の動きを知りたいんだ」


「謎の動き?」


その動きに身に覚えはなかった。

彼の言葉を待つ。


「あれだよ、タブレットの上で指を左右に振っていた動きだよ」


「あ〜!!あれね」


なるほど。あれは何て説明した方がいいのだろう。そもそもこの世界に神様って存在するのかな。この世界で1番の権力と考えるとウィザードだよね。だからウィザード様の言う通りに言い換えた方が良さそうだよな。

だが簡単に教えるのもなんだかつまらないので、もったいぶってみる。


「これはおばあちゃんに教えて貰った必殺奥義なの。だから、そう簡単には人には教えられないな」


「そうか、そんな大事なことなのか……」


ノリで言ってみたのだが、何故か重たく捉えられてしまった。


「あ、ごめん!ちょっとからかっただけで、そこまで大事なことじゃないから教えるよ」


「いやいいよ。教えたくなった時に教えてくれればいい」


「いやだから今教え」


「ヒマリ、ありがとう。また明日」


そう言ってどこかに行ってしまった。

何でこの子は最後まで人の話を聞かないんだ、とお母さんみたいに心の中で注意する。

もうまあいいっかと気持ちを切り替えて、寮に戻るため歩き出す。

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