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第8話 打ち解ける


翌日、珍しく朝早く目覚めたので、イブキくんより早く学校へと行ってみようと思う。

朝ごはんを早めに食べて支度して学校へ到着。



教室の時計を見ると、7時45分。

クラスにはまだ数人程度しか居らず、イブキくんもまだのようだ。


よし!勝った!

イブキくんと勝負していた訳じゃないが、初めてイブキくんより早く来れたのが嬉しい。


早く来てみたものの、特にやることはないので学園のアプリで学園についてを読むことにした。


この学園は種族問わず、人間のことを学びたい生徒を集めた学園である。

1学年2クラスのみで、3年間通うようだ。高校と同じ感じかな。


種族の表はピラミッド型になっており、1番上がウィザード。2番目がヴァンパイア族、そしてゾンビ族、獣族、マミー族は横並びとなる。

クラスの中で偉い種族がヴァンパイア族。そのため学級委員長はヴァンパイア族から選抜されたりするようだ。

実際このクラスの学級委員長はユアさんだ。だが、実質的にクラスをまとめているのはナルミさんなのだが。


まあ基本的にはヴァンパイア族が1番偉いということだ。

ちなみにウィザードはこの学園の校長であるショウ・ナカタと3学年のチアキ・ナカタのみだ。苗字を見れば分かるが、おじさんの息子らしい。

正直チアキくんのことはそんなに知らないが、昔からとても頭が良かったことを覚えている。この学校の生徒会長のようだ。


「ヒマリ、おはよう」


いきなり耳元で囁かれてビクッとする。

彼は私の反応を見て少し笑っていた。


「イブ、ユイトくんおはよう」


そして彼は席につく。

イブキくんに今日は早いなとか言われないかなと思ったが、いつも通り着席後は読書していた。

イブキくんが来る時間は8時過ぎのようだ。


続々とみんなも登校してきて最後にヴァンパイア族の4人が教室に入ってきた。いつもHRが始まる5〜10分前に4人で入ってくるため目立っている。


いつもはユアさんが流れるように皆様ごきげんようと挨拶しながら席に着くのだが、その途中でわざわざ私の席の前に来た。


「ヒマリさんおはようございます」


私に挨拶をしてくれた。

初めてのことにびっくりする。


「お、おはようございます」


テンパった人みたいに挨拶をしてしまった。シュウヤくんはそんな私の様子を見て、彼の口角は上がっていた。

再びシュウヤくんを見ると、口パクでおはよう、ヒマリと言っているように見えた。そして、いつもの朝が私の心を揺さぶるような朝になった。




お昼はいつもならナルミさんが誘ってくれてゾンビ族の子たちと食堂でご飯を食べるのだが、ナルミさんに言われる前に、ユアさんが私のところに来て言う。


「今日の昼食ご一緒にしてもいいかしら?」


尋ねられたので、OKした。ナルミさんにはユアさんに誘われて今日はごめんと謝っておいた。

もちろん、ユアさんだけでなく、シュウヤくん、ヒナタくん、タクトくんもお昼ご飯を一緒に食べるので、お行儀よく食べなければならない。


シュウヤくんが場所取りをしていてくれていたので、私は唐揚げ定食を運んでその場所に座る。


「シュウヤくん、席取ってくれてありがとね」


「大したことはしてない。一々礼は言わなくてもいいぞ」


当たり前だという感じで言っているが、私は毎回感謝しようと心に思う。


その後3人も食事を持ってきてシュウヤくんも取ってきてご飯を食べる。


私はお腹が空いていたので唐揚げ定食を注文した。

周りのみんなの食事を見ると、ユアさんは食が細いのかサラダとハムサンド1つとトマトジュースのみだ。みんなヴァンパイアだからか、トマトジュースを持ってきていた。他の3人は普通に定食を食べている。みんな貴族だからか分からないが食べる所作も美しくて私なんかが一緒に食べてもいいのかと不安になりながらいつもより綺麗に食べようと心がける。こういう時に育ちの良さを感じる、


「ヒマリさん、いつもより元気がないようだけど大丈夫?」


私の不安が顔に出ていたのかユアさんに伝わってしまっていた。


「いえ、そんなことないですよ」


「いつもナルミさんたちと昼食を取っているときはもっと楽しそうに食べているように見えていたのに、今日はワタクシたちとの食事は楽しくありませんか?」


不安そうな顔で私を見つめる。

てか、私の普段食べてる様子見られていたのかと恥ずかしい気持ちと不思議に思う気持ちが混ざる。


「いえ!!絶対にそんなことはなくて!!

ただ皆さんの食べる時の所作が美しくて私も真似しようと頑張っていただけです。

それでユアさんを不安にさせてしまってごめんなさい」


「安心しましたわ。ヒマリさんにはいつもみたいに食事を楽しんで欲しいの。ワタクシは隣でその姿が見たかっただけですわ」


ユアさんがなんか彼氏みたいなことを言う。内心そこにキュンとする。


「そうだったんですね!それならいつも通り食べますね!」


ユアさんにいつも通り食べていいと許可を得て、もぐもぐ食べる。


「ヒマリさんっていつも美味しそうにお食事されますわね」


「そうですか?私は食べることが好きなので食べていると幸せです!」


「食べることが幸せか」


シュウヤくんが独り言のようにぼそっと呟く。


「シュウヤくん、どうしたの?」


「いや、なんでもない」


そう言われると気になるのが人間の性だ。

ユアさんも気になったのか、私に加勢してくれる。


「そうよ、シュウヤ。

何か気になることがあるのなら話しなさい」


観念したようにシュウヤくんは話し始める。


「ただ俺は自分が幸せなことが何か分からないまま生きているから、ヒマリのように素直にこれは好きだから幸せと言えることに感心をしていただけだ」


またしても褒められて思わずニヤけてしまう。


「確かに!ヒマリさんはとても素敵な感性を持っているわよね!

どこでそれを学んだのかしら?」


好奇心に抗えないと言わんばかりのテンションで聞いてこられたので精一杯答える。


「私の祖母が言っていたんです。


好きなこと、幸せなことはみんなと共有したらそれが幸せの連鎖が出来て、他のみんなもにもその連鎖が続いたらもっと幸せになるのって素敵だと言っていたんです。もう既に祖母は亡くなっているんですけど、私はその通りだなと思ったんです。

だから、私は幸せとか好きなことは口に出すようにしています!」


個人的には今まで話した中では1番良い話をして、気持ちよくなる。

みんな私の話に凄く頷いてくれて良い反応をくれるの話す甲斐がある。


「とても素敵な考えを持ったおばあ様ですわね。やはり、人間界に住む人々は私たちとは違う考えを持っているのね。ワタクシも人間的な考え方に近づけるように努力しないといけないわね!」


ユアさんはやる気で溢れていた。


「早く校外学習に行きたいわ!!」


ユアさんはヒナタくんとタクトくんに校外学習の熱意を伝えていた。

シュウヤくんはユアさんの様子を見て呆れる。


「ユアはいつもあんな感じだから気にするな」


そう私に教える。

まるでオタクのような勢いで語っていた。ユアさんは可愛くて美しいご令嬢という感じだが中身は人間オタクという一面もあるのは良いギャップだなと思う。


「ユア、そこまでにしろ。

そろそろ、5時限目始まるから教室に戻らなきゃいけない」


シュウヤくんの言葉を聞いて時計を見たらそんなに時間が経っていたのかと驚き、急いで片付けて教室に戻る。

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