第69話 ハロウィンパーティーの提案
転校生がやってきて2日目だが、今日からハロウィンパーティーについて考えるようだ。
ハロパまで1ヶ月をきっており、クラスの出し物を考えて準備しないとならないため、全ての授業の時間がハロパのためのものとなるようだ。それだけハロパはこの学校にとってメインイベントといっても過言では無い。
リュウ先生は教卓の隣にあるデスクに腰を掛けて、学級委員であるユアさんが今回のハロパも仕切ってくれる。
「ハロウィンパーティーでやりたいことがある方は挙手をお願いします」
するとみんなはハロパにノリノリなのか、次から次へと意見が出てくるが、どの意見もどこかパンチに欠けるものばかりだった。
劇をやるにしても題材が何をやるかで決まるし、売店をやるにしてもただ売るだけじゃダメである。
それも仕方ないの話である。この世界には娯楽が少ないため、インパクトのある意見が出てこないものわかるので、私がやりたいことを提案してみようと思う。
ある程度みんなの意見が出尽くしたところで、ユアさんと目が合った。
「ヒマリさんは意見などありますか?」
「私は男女逆転のメイド喫茶や執事喫茶、劇をするなら王道の灰かぶり姫や白雪姫、現代的にだとアイドルものをやりたいと思いました」
自分がやりたいことを言えてスッキリして座った。
いつの間にかみんなの視線が私の方に向いており、流石に私利私欲にまみれすぎていたかと思ったが、拍手された。
「流石はヒマリさんですわ。ワタクシたちじゃ想像もつかないような意見が出てきました。
今回はスポーツデイでワタクシたちのクラスが優勝をし、校長先生からの協力も受けられるので何か大々的なものをやりたいと考えておりましたが、ヒマリさんが先程言っていたものの中から、候補を絞るのはいかがでしょうか?」
みんなも賛同してるのか、拍手が鳴り止まない。
「ヒマリさん前に出てきて先程の内容の説明をしていただけますか?」
この空気とユアさんに呼ばれたら断れないので、みんなの前でプレゼンするのは苦手だが、私以外知らなさそうなのでしょうがなく前に出る。
隣にいるユアさんに小声で「アイドルとは何ですか?」と尋ねられて、衝撃が走った。
この世界にはアイドル文化がなく、そこから説明が必要なようだ。
「まず、メイド喫茶や執事喫茶はみなさんも知っての通り、メイドや燕尾服を着用してお客様に御奉仕する喫茶店です。普通にサービスするものいいのですが、パンチが足りないと思い、あえて男女逆転するのはありかなと思いました。
そして、劇に関しても王道をやるのもありですし、
男女逆転で行うのもありです。
最後にアイドルものの劇に関してですが、アイドルとは歌やダンスなどのパフォーマンスで観客を沸かせる神の所業です。
アイドルをやるには歌とダンスが出来ないといけませんが、もう1つ大事なのはビジュアルです。このクラスで1番のイケメンをセンターにし、グループを組んでライブのようなものをやってもらいます。
もちろんライブと言っても、2曲だけ覚えて貰えば大丈夫です!またファンサービスと呼ばれる、見てる人というかファンに向けて愛嬌に応えることもやってくれるとよりアイドル性が高いです。その辺は私が後で教えます。
アイドル役をやる人以外は彼らのファンをやるのもありですし、普通に裏方の仕事も必要なので、音響や照明、台本を考えるなど色々やることは多いです。
個人的には校長先生の力も貸して貰えるのでアイドルを1番やりたいです!よろしくお願いします」
説明を終えると、みんなから拍手を貰いながら席に着く。
「ヒマリさんの提案とても面白いものでしたね!
ワタクシたちが知らない世界を表現するのは挑戦的だと思いました。
ーー他に意見がある方はいますか?」
すると、ナルミさんが挙手をした。
「ヒマリちゃんに質問なんだけど、そのアイドルってものは男の子だけしかなれないの?」
「いいえ!女の子のアイドルももちろんいます!
ただ制作のコスト的に2つのアイドルグループを作るとなると時間もかかるので難しいかなと……」
「そういうときの校長先生なんじゃない?試しに聞いてみてダメだったらまた考え直せばいいし、物は試しだと思う」
「そうですわ!まずは聞いてみましょう!
リュウ先生、校長先生にお会いすることは可能でしょうか?」
「可能だ。ユアと提案者のヒマリで校長室へ向かいなさい」
「ありがとうございます。行きましょう、ヒマリさん」
そんなこんなの流れで校長室へたどり着いた。
私たちを招いているかのごとくドアが開かれて、校長先生は部屋の中心に立っていた。
「よく来たね。早速、座って話を聞こうじゃないか?」
私たちは革のソファーに腰を掛けて、校長先生に意見を伝える。
「やりたいことは決まったかい?」
「はい。アイドルものをやりたいです!」
「アイドルか……。なかなか面白いね。
何故やりたいの?」
「今までやっていないことに挑戦したいのと、これなら学年で1番の盛り上がりを作れると思ったからです!」
「なるほど。確かに、他のクラスや学年ではこの発想は出てこないだろうし、僕の力を借りれる君たちだからというのもあるのだろう。
ーーアイドルものを一緒にやろうか!」
ユアさんと顔を見合せて喜んだ。
「ありがとうございます!」
「次の授業までにコンセプトや必要なものをまとめてくれると助かるよ」
「分かりました」
「君たちのアイドルを楽しみにしてるよ」
教室に戻り、校長先生からの許可が下りたことを伝えて、無事にアイドルものをやることが正式に決定した。
クラスに戻り、再び話し合いが始まる。
「アイドルのことを知っているのはヒマリさんしかいないのでヒマリさんを中心に考えていきましょうか」
「まずアイドル役をやるメンバーですが、シュウヤくん、ユイトくん、カナタくん、タクトくん、ミズキくんの5人にやってもらいたいです」
「僕は反対だ」
ミズキくんは間髪を入れずに言った。
「気持ちは分かるけど、あなたが必要なの」
「僕はやらないよ」
彼は意地を張っていた。とりあえず、彼以外の4人は快諾してくれた。クラスの意見もその4人でいいと納得してもらえて、メンバーは決まった。
「女の子のアイドルを作るまでは時間が厳しいので、ファンの子役で可愛くしてもらいましょう!
ファン役はアイドルのグッズを持ったり、彼らの応援をしてもらいます!うちわやペンライトでライブ中は応援して、それ以外の時は写真やグッズを持ってモチベーションとして楽しむという感じです!」
すると、誰かが「それって楽しいの?」と言っている声が聞こえて思わず拾う。
「それって楽しいの?という意見が出ましたが、私は楽しいと思います。好きな人の写真を持って見る度に幸せを貰い、ライブ中にファンサービスなんて貰ったら、心が頂点まで羽ばたいてしまう、そんな快楽が味わえます。
私もプロデューサー兼ファンとしてアイドルを支えたいと思っています。せっかくなや一生にやりませんか」
私の熱い語りを聞いてクラスの女子ほとんどがファン役を希望した。
「男でもファンになってもいいの?」という意見も出てきた。
「もちろんです!ファンに性別、年齢は関係ありません!むしろ、男性ファンも大歓迎です!」
数人の男子もファン役を希望しており、どんどん楽しくなってきた。
「あとは曲やダンスを考えたり、ステージ構成やライブの内容等、音響や照明の演出など考えるべきことはたくさんあります。私はアイドルとファンのことに集中しますので、残りはユアさん頼めますか?」
「はい。任せてください。ワタクシはアイドルは知りませんが、お芝居などは観に行く機会はありますので、演出の方は力になれそうですわ」
「他にも意見があったら、私たちに言ってください!」
そうして、アイドルチームと演出チームに分かれて話し合いが始まった。
ファンチームは一旦私がファンとしてアイドルを盛り上げる方法をみんなにも考えて欲しいと伝えて、それについて話し合いをしてもらっている。
アイドル役の5人を集めたが、ミズキくんだけ机に肘をついてそっぽを向いている。
「まず、グループ名を考えよう。単語でもいいから、何か良いのが浮かんだら言ってね。
例えば、ビジュアルが良いからVishとか?」
「普通にそれでよくない?」
ヒナタくんはそう言った。
「流石に安直すぎない?」
「え〜そうかな?Wishにも響きが似てるし、良いと思ったよ」
「そうだな、Vish良いと思う」
シュウヤくんもヒナタくんの意見に賛同していた。タクトくんもイブキくんも頷き、もうグループ名は決まってしまう。
「ミズキくんはどう思う?」
「僕はなんでもいいよ」
「それじゃあ、『Vish』に決定!
次に歌だけど、新曲を1曲とみんなが知ってる校歌をアイドル曲風にアレンジして用意してもらうのはどう?」
「いいと思うが、誰に作曲を頼むんだ?」
シュウヤくんに聞かれて、私は「もちろん校長先生に」と答えた。
「校長先生はそこまでやってくれるのだろうか?」
「むしろやって貰わないと困るよ。衣装も考えないとだし、グッズも作らないとだもの。やることはいっぱいだよ?」
そうして色々と話し合いを重ねて、グループのリーダーになったシュウヤくんと共に校長先生に提案しに行くことになった。




