第68話 転校生
お久しぶりです!
いつも拝読ありがとうございます!
手の怪我が緩和されてきましたので、投稿することが出来ました。
楽しんで読んでいただけると幸いです。
私たちのクラスに転校生がやってきた。
神田瑞希というとても中性的な顔立ちでかつショートヘアでまるで女の子のように見えるが、男の子のようだ。
名前からして女の子だと勘違いをしていたが、目も大きくてキュルっとしていて、顔のパーツの配置もよく顔が整っていた。
先生と並ぶ彼はそんなに背も高くなかった。彼は背筋を正して丁寧に挨拶をした。
「神田瑞希です。よろしくお願いします」
彼の自己紹介が簡潔すぎたのか、リュウ先生は一呼吸置いてから説明し始めた。
「彼は校長の親戚であり、ウィザードだ。
だがウィザードだからといってミズキのことを一線引くのではなく、みんなと同じように扱って欲しい」
みんなはウィザードだと知った時、一瞬ザワついたが、その後は何事もなかったように話を聞いていた。
「ミズキはヒマリの後ろの席に座りなさい。
そしてヒマリは放課後にミズキを学校案内してあげなさい」
先程まではなかったはずの後ろに席があり、魔法で設置されたようだった。自己紹介が終わり歩いてきた彼はこちらに目礼し、席に着いた。
午前中の授業が終わりランチタイムになり、当たり前だがみんなは彼のことが気になっていた。それはそうだ。なんたって、数少ないウィザードがやってきたのだから。
こういう時に真っ先に行くのがナルミさんで、早速ミズキくんに話しかけていた。
私は2人の会話に耳を傾けた。
「あなたって……ウィザードなんだよね?」
「そうらしいね?」
「そうらしい?」
奇妙なことを言うミズキくんにナルミさんも含めた周りも不思議そうに彼を見た。
「僕がウィザードになったのは、まだ最近だからよく分かっていないんだ」
「そうなんだ」
「そもそも、僕は君たちと馴れ合う気はないよ。みんな人間じゃないんだろ?
ーー僕は人間しか信用出来ない」
ナルミさんは引きつった笑顔をした。
「そんな、つれないこと言わないでよ」
「すまないけど、僕はこれで失礼するよ」
彼はこの場から去るようにどこかへ行ってしまった。
可愛い顔をして意外と気難しいタイプのようだ。
そんな彼が気になりながらも私たちはいつも通り、みんなで食堂でご飯を食べに行った。
先に買い終えていたイブキくんの元へお盆を置いて隣の席に着いた。
「あのさ、ミズキくんのことどう思う?」
「うーん。まだ分からない」
「そりゃそうなんだけどさ、第一印象とかないの?」
「別に。俺、転校生に興味ない」
彼は相変わらず人に興味ないなと呆れつつも彼らしいとも思った。
「そっか。私は気になってるけど」
「え、なんで?」
彼は動揺したのか、心の声がそのまんま出たような声だった。
「なんでって、普通に考えて席も近いし、彼とも仲良くならないとじゃん?」
「ヒマリはミズキと仲良くなる必要はないと思う」
イブキくんは反対的意見しか言わず、おかしいと思った。普段なら私の発言を否定することはあまりしない彼なのに。
「いやいや私、校内の案内も頼まれてるしさ、関わらわずに過ごすなんて無理でしょ」
「だとしても、頼まれたこと以外はしなくていいよ」
「ーーそうですわよ。わざわざ仲良くなる必要なんてありませんわ」
すると、お盆を持ったユアさんが鋭い言葉で私たちの会話に入ってきた。
彼女は私の隣の席に座り、「彼はよく分からない人ですし、ワタクシたちとは仲良くする気なんて微塵も感じませんでしたから、そんな人はほっとくのが1番なんですよ」と私を説得するような言い方をした。
「僕は彼のこと気になるけどな〜。チアキくんと親戚のウィザードなんだしさ」
ヒナタくんも取り終えたのか、席に着いた。後ろからタクトくんも難しい表情をしながら、ヒナタくんの隣に座った。
「いや、俺は彼の態度を見た限り仲良くなるのは難しいと思ったよ」
タクトくんもユアさんやイブキくんと同じ意見のようだ。
最後にシュウヤくんがやってきて、タクトくんの隣に座った。
「何の話をしていたんだ?」
「ミズキ・カンダのことですわ」
「彼か。さっきの発言には驚いたが、彼はまだ俺たちのことを信用していない。だから、彼が心を開いた時に俺は話してみたいとは思った」
この中では1番良い意見を述べるシュウヤくんに私は賛同を示すように頷いた。
「シュウヤくんの意見が1番いい!私は何にも考えてなかったから、危うくミズキくんのパーソナルスペースを踏みにじるところだったかも。
下手に話しかけるのは良くないから、相手のペースを考えられるのは素敵だね」
「そうですわね。まずは彼の行動や発言次第でワタクシたちの動きも変わりますわ。
それと料理が冷める前にいただきましょうか?」
そうしてお昼ご飯を食べ終えて、あっという間に放課後を迎えた。
みんなには先に帰るように言うと、彼と2人きりで大丈夫なのかとみんなに心配されながらも帰っていくのを見届けた。
ミズキくんに話しかけるタイミングを見計らっていると、彼から話しかけてくれた。
「学校内の案内をお願いします」
昼間の発言の人とは思えず驚き、私はなんとか頷いた。
無言の中で淡々と場所を紹介するのは私にとって苦痛であった。
気まずい空気と何か喋らないといけないという気持ちが入り交じっていた。
とりあえず、何か飲み物でも買おうと提案し、休憩スペースで飲み物を片手にベンチに座った。
「タキモトさんって、"人間"なんだよね?」
思わずペットボトルの蓋を落としそうになった。周囲を確認し誰もおらず、一瞬ほっとした。
「カンダくん、そういう発言はこんな場所でしちゃダメだよ。いつ誰が聞いているか分からないんだから」
すると、彼は思い出したように「そうだった」と呟やいた。
「あとね、ここでは下の名前で呼ぶのが主流だから、私の事もヒマリって呼んで。カンダくんのこともミズキくんって呼ぶからさ」
「でもイブキ・ユイトのことはイブキくんって呼んでるけど、それはどうして?」
席が近いせいか、私たちの会話を聞いていたようだ。
「えーっと……それはなんと言うか、癖づいてしまってそう呼んでるの。彼もそれでいいって言ってくれてるし」
「なるほど。君は嘘をつくのが苦手なんだね」
彼は痛いところを突いてきた。私は飲み物を1口飲み、心を落ち着かせる。
「今後は人間という言葉は出さないようにするよ。
それと僕はね、君以外とは仲良くするつもりは無いんだ。理由はお昼に話した通り。
そういう君はよくアンデッドたちと仲良くできるね」
彼は私のことを不思議そうに見つめた。
「まあ、私も最初は彼らのこと怖かったし、ミズキくんの言いたいことは分かる。
でもね、話してみたら良い人たちばかりだから、いずれ分かるよ」
「君はお人好しだね。だから、彼らにつけ込まれるんだよ。
僕は君とチアキさん以外とは仲良くしない。これは僕の中の決まりだから」
彼は自分の意志を曲げないと示すように話した。
「そしたら、私がミズキくんがみんなと仲良くなれるように頑張るから」
売り言葉に買い言葉で言っていた。
「せいぜい頑張るといいよ」
彼の上から目線の発言にイラッとし、手に持っていたボトルを握りしめていた。
「何でそんなことしか言えないの?」
「え、普通に考えて怖いでしょ?特にヴァンパイア族なんて、僕たちの血が嗜好品なんて聞いたら近づきたくもないよ」
彼の言い分も分かるが、そんな決め付けで彼らと仲良くしない理由にはしないで欲しいと思った。
「確かにそうだけど、彼らはそうしないもの」
「ーーいや、分からないよ。君は人間だと知られていないからそう言えるだけだ。
僕は人間であり、ウィザードだ。いつ血が狙われるかなんて分からないよ。その恐怖に怯えながら学生生活すると考えるだけで嫌になるよ。
まあ、まだ君がいてくれるからいいけど」
私が人間である点だけで信頼してくれることに納得は出来ないが、とりあえず受け入れる。
「それはどうも」
「とりあえず僕はこれから君と行動を共にするから、これからよろしく」
彼は手に持っていたボトルをこちらに向けてきた。
「それは友達ってこと?」
「そうだね」
「わかった。よろしく」
私たちはペットボトルで乾杯をして、友達になった。




