第67話 プチ打ち上げ
自販機コーナーにつき、並んでいる自販機の中身を確認しながら考える。
「ヨルくんは何飲む?」
「俺はね、疲れたから甘いの飲みたいかもな」
「確かに!私も甘いの飲みたいな!」
彼はアイスカフェオレのボタンを押した。私は支払いのところにスマホをあてて、彼の分を支払った。
「ありがとう」
彼に続いて私はジュースのボタンを押し、買おうとスマホをかざそうとすると、ヨルくんがスマホをかざして、ボトルが落ちる音がした。
彼はジュースを渡してくれた。
「これでおあいこだね」
「ありがとう。でも、奢らなくてよかったのに」
「俺が奢られたままでいるのは落ち着かないし、ヒマちゃんも頑張っていたからね」
「そうだね!ありがとう」
近くのちょっとした休憩スペースに横並びに座り、乾杯をした。
「そういえば、ヒマちゃんのクラスで打ち上げしないの?俺のクラスは夜に開催するって連絡入っていたけど」
「優勝した喜びで忘れていたけど、やるって話になっていなかったよ」
「そっか!それならこの後、俺と2人で打ち上げする?」
彼はナチュラルに誘ってきたが、私は一旦断る。
「いいえ、貢献者であるヨルくんはクラスの会に参加するべきだと思うよ!」
「それも一理あるけど、打ち上げまでまだ時間はあるし、俺はヒマちゃんともっといたいな」
彼氏としては100点満点をあげたいぐらい素晴らしいことを言っているが、今日は疲れたから早く部屋で休みたいと思っていた。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、クラスメイトとの親睦を深めることも大事なのでは?」
「そうだけど、僕は婚約者との親睦をもっと深めたいんだ」
彼は息がふきかかりそうなぐらいの距離まで顔を近づけてきた。美の暴力である。顔が綺麗すぎるし、私はその顔面と見つめ合えるほどのメンタルはないので、顔を逸らそうとすると両手で頬をロックされてしまう。
「君もまだ俺といたいよね?」
拒否権がなく、頷くことしか出来なかった。
その様子を見て満足したのか、彼は頬から手を離してくれた。
「よかった。歩きながらどこへ行くか考えようか?」
すると私のスマホの通知音が鳴って画面を確認すると、校長先生から至急校長室へ来るようにと連絡が来た。
「ごめん。校長先生から呼び出されちゃって今すぐ行かなきゃ!」
「え、どうして?」
「分からないけど、至急来るようにって書かれているから、何か大事なことかもしれないから行くね」
「わかった。適当に校内にいるから、終わったら連絡ちょうだい」
私は急いで校長室に向かった。
◇◆◇
校長室に入ると、普段は優しい顔をしているおじさんこと校長が神妙な面持ちでこちらを見ていた。
「よく来たね。とりあえず、そこに腰をかけてくれ」
言われるままにソファーに座った。
「さて、今日君を呼び出した理由は君が使った魔法についてである」
(そういえば、絆創膏取りに行くのが面倒で使っていたな)
「以前にも言ったが、魔法を使える人物は非常少ないという話は覚えているよね?
ウチの学校でも魔法が使える者、ウィザードとして登録されているのは僕とチアキだけなんだ。それ以外の者が使うと、魔法の使用後の微粒子が反応し、魔法協会に報告されてしまうんだ。
君は以前にも何度か魔法を使っていたことがあったよね?
でもその時は、君自身が魔法が使えることを知らなかったり、誰かを助けるために使用していたことがわかったから見逃していたのだが、今回は自分が楽しようとして魔法を使ったよね?」
(何故そんなことがわかるの!?)
「魔法を使った後の微粒子には感情が残っており、魔法を使った空間に行くと、ウィザードだけは使用時の感情を読み取ることが出来るんだ」
(なるほど)
「そこで、今回は君が絆創膏を取りに行くのが面倒だと思い、魔法を使用したことがわかったという訳だ。
ーー今後はそのような理由で魔法を使ってはいけないよ」
「はい、すみませんでした」
「魔法協会に僕たち以外にも1年生でウィザードがいるかもしれないという疑いを持たれているから、君たちのクラスにチアキのはとこをこの世界に呼び出したので、お世話係を君に頼みたいと思っている」
(転校生が来るということか。自分が振りまいたタネとはいえ、いきなりすぎないか)
「君と同じように人間界にいたのだが、この前突然魔法が使えるようになったと連絡があり、明日こちらの世界に招く予定だ。
月曜日から登校予定なので、よろしく頼むよ」
「分かりました。それでその人の名前を教えて貰えますか?」
「神田瑞希という子だ。僕も最近は会っていないから、どんな風になっているかはわかっていない」
「ありがとうございます!」
「今日の話は以上だ。今日はお疲れなところ、いきなり呼び出して悪かったね」
「いえ、私の方こそ勝手に魔法を使ってしまいすみませんでした。以後気をつけます」
そうして校長室を後にした。
ヨルくんに話が終わったことを連絡すると、昇降口で待ち合わせることになり、早足で向かった。
そういえば、転校生は男の子か女の子どちらなんだろうと考えながら靴を履いて出ていくと、彼は先に待っていた。
「お待たせ」
「さっき俺も来たところ!校長先生との話はどうだった?」
(流石に怒られた内容は話せないので、誤魔化そう)
「そんなに問題はなかったよ!」
「そっか、それならよかった!
それじゃあ、2人でプチ打ち上げをしようか?」
彼の誘いに乗ると、何故か彼の自宅の秘密の部屋に案内された。
用意しておいてくれていたのか、色々なお菓子や飲み物を持ってきてくれてその部屋でプチパーティーを2人で行った。
あっという間に時間が過ぎ、夕焼けが沈む前にお開きとなり、寮へと送ってもらった。
思ったよりも早く帰れたのでヨルくんはクラスの打ち上げに行くのかもと嬉しい気持ちになりつつ、疲れたので早めにシャワーを浴びて、ベッドで休んだ。
そうして転校生がやってくる月曜日となった。
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