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第60.5話 目撃 〜ヨル視点〜


昨日の放課後、校長先生から呼び出された後に車で帰っていた途中、僕の学内ファンクラブのリーダーであるアカリたちがヒマちゃんに話しかけているところを目撃した。


車を停めてもらい、降りると彼女たちは場所を移動するために路地裏に入っていったのを見て、僕もその様子が見れるところに移動し、彼女たちの様子を見る。


アカリはヒマリにビンタをした。

静かな路地のため、頬のパチンという音は響いた。僕は咄嗟に足が出るが、彼女の顔を見ると、助けはいらないような強い眼差しでアカリたちを見て、謝罪をしていた。

普通だったら、ビンタなんてされたら怒って喧嘩になるか、泣いて誰かの助けを求めるはずなのに、彼女は静かに謝るということを選択した。


やはり、僕の婚約者にして正解だった。


この行動ができる子はなかなかいない。

彼女の真摯な行動に納得してくれたのか、アカリたちは引いてきて、こちらに来そうだったので、僕は隠れて、ヒマちゃんが出てくるのを待った。


彼女は何故か急ぎ足で出てきたため、ぶつかってしまったが、思わずキャッチするように抱きしめた。すぐに彼女はなかったように離れたけど。

そして、なんとなく事情は分かっているが心配なので尋ねる。


「ヒマちゃん、その顔どうしたの?」


「何でもないよ!蚊に刺されてかいたらこんなに赤くなっちゃっただけ」


彼女は慌てて考えたであろう言葉を放った。僕は彼女を可愛いなと思いつつ、忠告をする。


「この世界には蚊はいないよ。その言い訳の仕方は他の人には言わない方がいいね!


ーーそれで、誰にやられたの?」


すると、彼女は先程までの反省の色が見えていたのに、急に唇を噛んで、言いたくないような重い空気を出した。


「それは……言えません。私の行動も良くなかったから、仕方なかったんです」


彼女はアカリたちが悪いとは言わず、むしろ自分の行動が甘かったと発言していた。何でここまで考えられるんだろうと不思議に思いつつ、彼女の真面目さが少し危ないと思った。


「そっか。でも、まずはその愛らしいほっぺを早く冷やさないとね」


僕は車をこちらに寄せるように手をあげて合図をした。


昨日はこんな感じで彼女を手当するために家に呼んでしまったが、少し軽率な行動だったと反省しつつ、ランチタイムにアカリたちを中庭へ呼んだ。


僕は中庭のベンチで本を読みながら待っていると、アカリたちはやってきた。

彼女たちは何故呼ばれたのか分かっていなさそうだった。


「来てくれてありがとう。


早速だけど、君たち、昨日の件はどうも」


僕は少し怒りの混じった声色で話していた。

彼女たちは僕の言葉で一瞬にして青ざめた表情になった。


「ヨル様お許しください」


3人は僕に頭を下げた。


「1度頭を上げて。僕は謝って欲しい訳じゃない。何でヒマリにこんなことをしたのか、聞きたかった」


「それは……嫉妬ですわ。ヨル様を深く愛していいます。しかし、急にヨル様の婚約者が他の男と歩いているのを見て、私たちは酷く動揺と怒りが沸いてきて、つい彼女に強く当たってしまいました」


「なるほど」


彼女の言い分を理解は出来た。彼女にも非はあったから、あんな風に自分が悪いと責めていたのか。


「わかった。


ーー今回の件は怒らないけど、次ヒマリに何かあったら、今度は許さないよ」


「分かりました。寛大な処置をありがとうございます」


彼女たちは去っていった。少し気を抜いていると、後ろから足音がして振り向いた。


「ヨルさんって人気者なんですね」


ユイト・イブキがいた。彼は確か、ヒマリの友人の1人で、おそらくヒマリのことが好きだと思われる。


「そんなことないよ。でも、昔から愛されてはいるかもね」


「……俺はそんなことを聞きに来た訳じゃないです」


「それで本題は何かな?」


「さっきの人たち、ヒマリに何かしたんですか?

少し様子がおかしかったので」


ここで正直に答えてしまうと、ヒマリが可哀想だと思い、誤魔化すことにする。


「いいや。僕の問題だから、ヒマリは関係ないよ」


彼の疑いの目は消えなかった。


「……ヒマリはあなたのせいでとても目立っているので、休まる時間も無さそうに見えます」


「それは悪いと思っているよ。でも、僕の婚約者になったからにはそれは仕方の無いことなんだ」


「彼女はそれを理解して婚約したのですか?」


痛いところをついてくる。彼は本当にヒマリのことを心から心配しているのだろう。


「それは……そうだね。


ーーでも、君たちと帰ったから変な誤解をされてしまったようだよ?」


「え」


「だから、今後は僕以外の人とは帰らないようにと約束してるんだ。変な噂が立たないように」


「……」


彼は動揺してるのか、言い返して来なかった。


「話はこれだけだから、僕は戻るよ」


「待ってください。

最後に、ヒマリのこと大切にしてください」


「もちろん」


僕は彼に背中を向けて、教室へと向かった。

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