54話 クッキング
私も部屋に戻り、少し汗をかいたのでシャワーを浴びて、休もうと思い椅子に座った。
そして、罰ゲームの夕食を何か1品作るものを考える。
この世界の食べ物も案外私の世界と同じものも多いので、それだと面白みがないので和食で何か作れるものがないかと思うが、調味料があるのかも分からないので、何とも言えないが、味噌があればみそ汁を作りたいと思った。まずこの世界にあるのだろうか。
ユアさんの執事さんなら食材のことも知っていそうだと思い、聞きに行こうと部屋を出て、とりあえずキッチンに向かってみる。
リビングにはヒナタくんとタクトくんがいて、何か話しているようだったが、私はまず話を聞きに行きたかったので、2人に軽く挨拶して、キッチンに向かう。
キッチンには執事さんとシェフの方が何かを話していた。話しかけずらいなと思い、話が終わるのを待っていると、執事さんが私の存在に気が付き、輪の中に入れてくれた。
「ヒマリ様、いかがなさいましたか?」
「少し聞きたいことがあって来ました」
すると、2人は何だろうという感じでこちらを見る。
「今日ビーチバレーで負けたチームが1品作るという罰ゲームがあって、それでまだ作りたいものを3人で決めた訳ではないですが、調味料でここに味噌はありますか?」
すると、2人は驚いた表情で再びこちらを見る。
「ヒマリ様は味噌をご存知なんですか!?」
「まあ?はい」
「先程、私たちはチアキ様が味噌を使った料理が好きだと事前にユア様から聞きまして、その料理をどうすれば提供できるかと考えておりました。
味噌というものをチアキ様のお父様から頂いたもののどのように使えばいいか、どんな料理に使うのかを聞くのを忘れてしまい、2人で知恵を絞っていたところでした」
なるほど。そんなグッドタイミングで私が来たから驚いた訳だ。
「ヒマリ様は味噌を使って何を作りたいのですか?」
「みそ汁です!」
「みそ汁!?」
執事さんたちはまた驚きの声を上げた。
「それはチアキ様が好きな料理です。私たちも作りたかったものです。
ーーですが、私たちはみそ汁というものを見たこともなければ食べたこともなく、どのように作ればいいのか聞き忘れていて、ヒマリ様もし宜しければそのみそ汁を私たちにも振る舞っていただけませんか?」
真剣に頼む執事さんに私はそんな大層な料理ではないのにと思いつつ、その熱意に答える。
「分かりました!皆さんのお口に合うかどうかは分かりませんが、精一杯作らせていただきます!」
「心より感謝いたします」
話はまとまりリビングに行こうとすると、ヒナタくんとタクトくんがソファーに座りながら、こちらの様子を見ていた。
2人の急ぎ足で向かう。
「執事さんたちと何を話していたの?」
ヒナタくんはダイレクトに聞いてきた。
「夕食に作る料理について聞いていたの!」
「ちょうど僕たちも考えていたところだよ!でも、全然思い浮かばなくてヒマリちゃんがこっちに来るのを待っていたんだよ!
ーーねえ、タクト?」
彼は隣に座っているタクトくんに話を振った。
「そういうことだ。俺たちは普段料理をすることが無いから、まずレパートリーさえも無くて、困っていたんだ。
だから、君の意見を聞きたくて待っていたんだ」
なるほどな。みんなはヴァンパイア族だから、基本的には誰かが作ってくれて当たり前の環境でいるが故にこういう料理系は手をつけてこなかったものなのか。だから罰ゲームになったのかと理解した。私からしたら全然罰ゲームではないし、おそらくイブキくんも罰ゲームとは思ってなさそうだなと想像した。
「そういう訳で、ヒマリちゃんの考えた料理を教えて欲しいな?」
「おっけー!私が作りたいと思った料理はみそ汁だよ」
すると、2人は聞いたことない言葉なのか、不思議そうにこちらを見た。
「そのみそ汁って、どんな料理?」
「スープみたいなもので、色々な具材とか入れて作るまだ簡単な方の料理だよ」
「なるほど、そんな料理があるんだな。それはおばあ様から教えてもらったものなのか?」
「そうそう!昔からある一般的な和食だね!」
「へぇー!それ絶対みんなも食べたいと思うから凄く良いと思う!!
僕たちも知らないからどうやって手伝えばいいかな?」
「うーん、2人にやって欲しいことは野菜を洗って切って欲しいぐらいかな?」
「分かった!」
「了解した」
3人でキッチンに行き、執事さんとシェフにキッチンを使っていいか尋ねて、無事に許可を得た。
「私どももヒマリ様のお手伝いいたしますので、何なりとお申し付けください」
「ありがとうございます!」
まずは冷蔵庫の中を確認し、みそ汁に入れられそうなものを探す。一般家庭には入っていないような高級そうなお肉や新鮮な海鮮、色鮮やかな野菜たちがたっぷりと入っており、これが貴族かと冷蔵庫の中身でも感じてしまった。
豪華なみそ汁を作るなら海鮮系を入れたりもありだけど、みそ汁って素朴でシンプルなものが良い気がすると思いつつ、ホタテを1つだけもらいダシに使おうと思った。
他に入れられそうな具材を探すも豆腐はないので、とりあえずにんじんと大根、わかめを入れて作ることにする。
みんなは私の選んだ食材を見て、不思議そうにしていた。
「ヒナタくんとタクトくんは大根とにんじんをいちょう切りに切ってください!」
2人は元気よく返事をしたので、私はお鍋に水と少々の塩を入れて、ホタテをみじん切りにして、ダシとして使うため少々煮る。
お鍋の準備が終わり、切り終わったかなと2人に目線を動かすと、2人は野菜を切ったことがなかったのか、皮も切らずに何となくで切っていた。
執事さんとシェフの方も2人の様子を恐る恐る見ていた。
「ごめん。2人は普段料理しないんだよね。執事さんとシェフに切り方を教わろう!」
2人はちょっと落ち込みつつも、私の提案を呑み込んだ。
「お二方、大根とにんじんをいちょう切りのやり方教えてください」
2人はもちろんと言わんばかりに強い頷きをし、2人に見本を見せたり、丁寧に教えていた。私もそれを盗み見しつつ、お出汁が完成した。ホタテの香りが鼻の奥まで喜ばせる。これだけでとても美味しそうだ。
2人とも無事に切り終えたのか、満足そうだった。
切ってもらった野菜をダシの入った鍋に入れて、再び煮る。大根とにんじんがつまようじで刺して程よく刺さったらわかめを入れて、少し煮て、最後に味噌をときながら入れて、味見をして完成した。
4人にも一応味の確認をしてもらおうと小皿にみそ汁を入れて、飲んでもらう。
みんなはこれがみそ汁なのかと物珍しそうに眺めながら飲んだ。
すると、シェフの方は驚きの声をあげた。
「こ、これは」
私はその後の言葉が気になり、シェフを見つめる。
「美味しい!味噌とはこんな深い味わいがあるのだな。少ない具材なのに、こんなに美味しいスープがあるなんて、凄く面白い。
ーー失礼しました。ヒマリさん、とても美味しいものをありがとうございます。私は初めての味を知り、まだまだ探求出来ることがあって、つい気持ちが昂ってしまいました」
「いえいえ!喜んで貰えてよかったです!たくさん作ったので、もう少し飲んで大丈夫ですよ!」
「お言葉に甘えてもう少しいただきます」
シェフは小皿では足りないのか、スープ用のお皿を棚から持ってきて、掬って入れていた。
「私も感銘を受けました。皆さまよりも長く生きて参りましたが、このような料理を食べたのは初めてです。みそ汁とはこんなにも美味しいものなのですね」
執事さんは感動してくれていて、私はそんな凄いものではないのに、と心の中で謙遜していた。
「お口に合ってよかったです!執事さんももう少し食べて頂いて大丈夫ですよ!」
「ありがとうございます。私はこれだけで十分です。お心遣いに感謝いたします。それでは失礼します」
執事さんは何かやることがあるのか、どこか行ってしまった。
ヒナタくんとタクトくんはみそ汁を見ていた。
「2人はみそ汁どうだった?」
2人の様子がいつも違うので不安になった。
「こんなスープ初めて飲んだよ」
ヒナタくんはそう口にした。
「俺もだ」
タクトくんも神妙な面持ちで相槌した。
「凄く不思議だけど、優しい味がして美味しい」
「ああ、スープなのにこんなに温まる味は出会ったことがなかった。ありがとう」
2人もみそ汁に感動をしていたようだ。ここまで来るとみそ汁って神の料理だったのかと疑いそうになる。
「2人からそんなに褒められるとは思ってもなかったから嬉しいよ!ありがとう!」
「これはみんなにもあっと思わせる料理だよ!さすがヒマリちゃんだね!」
「ヒナタくん褒めすぎだよ」
「いいや、ヒナタの言う通りだ!それぐらい凄いものを作ってるんだから、もっと誇っていいぐらいだ」
「そ、そうかな?」
「ああ」
そう言って優しく微笑むタクトくん。私は思わず天狗になりそうだ。
「とりあえず料理が完成してよかった!
夕食までまだ少し時間があるから、リビングで休んでよう!」
3人でリビングで談話しながら、夕食の時間が近づくと次々とリビングに集まってきて、ついにドキドキな夕食タイムがやってくる。




