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第5話 偶然


親睦会から一夜明けて、昨日は何にもせずダラっと過ごし、今日は謎に早起きしたので、学園の外に出てみることにする。


日曜日の朝9時、ここは学生寮であるはずなのに、部屋を出ている人とはすれ違わず、みんな寝ているのかとても静かであった。

足音を立てるのが憚る(はばかれ)ぐらい静かなので、ゆっくり歩いて学園の外の学園通りに向かう。


朝の学園通りは金曜の夜のようなキラキラで賑やかな様子はなく、静かで穏やかな風景だ。この雰囲気はなんだか落ち着く。

日曜日の朝だというのに、営業しているお店がほぼ無いようだ。私の世界より労働時間は短めそうだ。この世界でバイト先を探すのも苦労しそうだなとも思った。


とりあえず、通りを歩くが私以外歩いている人はあまり居らず、たまにこの通りの近くに住んでいそうな人がジョギングしていたりする程度だった。

朝ご飯も食べずに出てきたのでお腹が空いてきた。コンビニとかないかと探してはみるもののないようだ。

食べ物は諦めて、ただなんとなく歩き続けると木々や芝生が現れ出て、公園に来たようだ。なんとなく近くのベンチに腰掛ける。


そして空を見る。

太陽は眩しいが暖かい。風は程よく吹いて、気持ちが良い。

しばらくぼうっと景色を見ていると、公園を走っている人がいた。朝から偉いなと見ていると目を凝らして見たら、おそらくクラスメイトのイブキくんだと思われる。

特別仲が良い訳でも無いので、なんだか気まずい。だが、とりあえず会釈しておく。

彼は私に気が付いていないのか、無視して走り去ってしまった。

まあまあ距離があったし、しょうがないと思い、もう少し公園のベンチでまったり過ごす。




日差しがまぶしいと思い、目を開けると公園だった。私はいつのまにか寝ていたようだ。

動こうとすると人の気配を感じ、隣を見ると寝ている美少年のイブキくんがいる。

黒い髪の毛が太陽に当てられているからかツヤが出ていて、綺麗だった。


そんなことを言っている場合ではない。

今はどういう状況だ。

客観的に見たいが、今立ち上がると彼を起こしてしまいそうだから、変に動くこともできない。


何故彼が隣にいるのか理解出来ず、ふと彼の寝顔を見ているとその視線に気がついたのか、彼はうーんと唸りながら起きた。


「おはよう?」


彼は寝ぼけているのか、この前の冷たい声とは全然違う柔らかい声で挨拶をした。


「ーーいやいや、おはよう?じゃないでしょ!


何で隣で寝てたの?」


ド直球に聞く。彼はクスッと笑いながら言う。


「ああ、それはね?


君のことを見かけて、近づいてみたら気持ちよさそうに寝ていたからいいなって思ってついね」


なんとなく理由がわかったが、もう1つ奇妙なことに気がつく。

イブキくんの話し方は教室にいる時の雰囲気とは真逆で優しくて物腰が柔らかい人の話し方だ。隣の席の時は話しかけんなオーラが全開だったのに、どういうことなんだろう。


「どうしたの?」


私が黙って考え込んでいたので、彼は心配そうに見つめる。


「え、いや、なんと言うか……。

イブキくんって、クラスにいる時とは全然印象が違うなって思って……」


正直に聞いてみる。


「あ、あー!あれは、僕なりの守備だよ」


「守備ってどういうこと?」


「それぞれの種族が同じクラスに集まるなんて普通なら有り得ないから普段から警戒しているんだ。

種族が違うと考え方や価値観だって全く違う。だから俺は常にクラスメイトを疑って見ている。


だけど、ヒマリは特別そんな雰囲気もないし、昨日話していたじゃないか。

自分は人間のクォーターだって。

俺もそんな感じだからちょっと親近感を感じて、ヒマリとは仲良くしたいなって思ったんだ」


確かに。彼の言うことも一理ある。私も警戒心を持って行動しないといけないなことに気づかされた。

彼とは仲良くしておいた方が今後助けて貰えるかもしれない。


「もちろん!むしろ、私と友達になってくれるなんて嬉しいよ」


「よかった。昨日は素っ気ない態度取ってごめん」


「全然!せっかくだし、連絡先交換しておこう!」


そういって、スマホを出してQRコードを読み取り、彼の連絡先をゲットした。


時計を見ると11時過ぎ。少し早めだがお昼ご飯が食べたくなってきた。


「私、そろそろ寮に戻るね」


「俺も一緒に戻っていい?

帰り道はほぼ一緒だし」


「いいよ」


彼と一緒に帰ることになった。何を喋ったらいいかよく分からないが歩き出す。

黙っているのも落ち着かないので、先程の会話で気になったことを聞いてみる。


「ねえ、イブキくんも私と似てるって言ってたけど、どういうことなの?」


彼は少し困惑気味話す。


「いきなり直球だね。僕もヒマリみたいに素直に話せたらいいんだけど、もう少し仲良くなったらまた質問して」


まだ聞いてはいけない質問だったようだ。後々聞き出すしかないな。何を話そうと考えていると、お腹がぐぅーとなってしまう。

彼の方まで私のお腹の音が聞こえていたようで、クスッと笑っていた。とても恥ずかしい。


「ヒマリはお昼何食べるの?」


「寮のご飯だよ」


そういうと彼はまた笑う。


「それは知ってるよ、寮のご飯で何が食べたいの?」


「うーん、お腹空いたからラーメンかな!」


「なかなか高カロリーなもの食べるんだね」


「失礼な!今日は散歩したからいいの!」


私は彼の言葉にムキになってしまう。


「ごめん、女の子に失礼なこと言ってしまった」


彼は詫びる。まあ許してあげよう。


「いいよ!許す!!


ーーそれで、イブキくんは何を食べるの?」


「ありがとう。

僕もラーメン食べたいかも。この間食堂でラーメンを初めて食べたんだけど、とても美味しかったからまた食べたいなって思ってた」


「そうなんだ〜!私もまだ食べたことないから、この後食べるの楽しみになってきた〜!」


そんなこんなで分かれ道となった。


「じゃあ、また月曜日ね!」


「ああ、またね」


そういって女子寮へ帰る。

そして食券でしょうゆラーメンを買い、食事を楽しんで、また部屋でまったり過ごした。


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