第45話 ユアさんの別荘 パート1
凛ちゃんのアドバイスから色々考えていたり、好きな作品を見ていたらあっという間に、別荘に行く日になっていた。
学校の正門に11時頃迎えに来るということだが、私は一体どうやって学校の校門に向かうかというと、おじさんに転移魔法をかけた紙をもらい、その紙を壁に貼って呪文をかけると一度だけその設定した場所に移動できるというものである。
そんな便利なものを作ってしまうおじさんはやっぱりすごいと感心しながら、説明された通りに玄関のドアにテープで魔法の紙を貼る。
靴を履いて、荷物を持って、呪文を唱える。
すると、ドアにブラックホールができた。いつものやつと言ってはいけないが、いつものように通り抜ける。
すると、学校の正門に着いた。約1ヵ月ぶりに戻ってきたこの世界。空気が違って、戻ってきたなと感じる。
集合時間の8分前に来たので、まだ車は来ていないようだ。
少し早く来すぎてしまった。何もすることもなく、ただ日差しが降り注ぐ。
ぼんやりとしていると、黒い高級車が目の前にやってきて、停車する。
後部座席の窓が下がると、ユアさんが乗っていた。
「お久しぶりね、ヒマリさん」
久しぶりに見た彼女は、太陽に照らされてより真っ白に輝く肌とより艶やかなシルバーの髪の毛に、美しい赤色の瞳の子が目の前に現れて私は現実味がなく、思わずふとももをつまみ、現実だと確認する。
「大丈夫ですか?暑いから早く入ってください」
彼女は私が暑さでバテたと勘違いしてしまったので、違うことを伝える。
「いえ、まだ大丈夫です!でも、お言葉に甘えますね」
いつの間にか目の前に登場していた運転手の方がドアを開けてくれる。
「失礼します」
「どうぞ」
ユアさんの隣の席に腰をかける。
すると、私の目の前の席にチアキくんが乗っていた。
「え、チアキくん!?」
「久しぶり、ヒマリ」
「うん、久しぶり、どうしてここに?」
「ユアに誘われて、俺も行くことにしたんだ」
「なるほど」
これは2人の空間を邪魔してしまうんじゃないかと不安になる。
すると、隣のユアさんから耳打ちされる。
「2人っきりの空間はまだ緊張してしまうので、ヒマリさんが隣にいてくださるのは嬉しいですわ」
私はお邪魔ではないようだ。その言葉を聞いて、安堵する。
するとゆっくりと車は動き出し、別荘に向かって走り始めた。
「ヒマリは夏休みはどう過ごしていたの?」
チアキくんから質問をされて、私も答えてから聞いてみようと思う。
「家でまったりしていたよ!チアキくんはどうしてた?」
「僕はね、ユアと一緒に過ごしていたんだ」
気になる言葉に私の好奇心が動き出す。
「ユアさんと何をしていたの?」
「前にシブヤで会ったけど、色々なところでデートしたり、食事をしたり、お互いの家に遊びに行ったりしてたよ」
なるほど。それで、今回の別荘でのお泊まり。これはかなり2人の仲は縮まっているはずなのに、何故ユアさんは恥ずかしがっていたのかと疑問に思うが、それは後で2人のときに話そう。
「たくさん2人で過ごしていたんだね!」
「ああ。僕は夏休みがこんなに充実していたのは久しぶりだったから、すごく楽しかったよ」
「ワタクシもチアキさんと過ごせて楽しかったですわ。今日から3日間もみんなと一緒に過ごせて嬉しいですわ」
楽しそうに語る彼女に私も嬉しくなる。これは良い感じそうだ。人の恋愛を見るのはとても楽しい。
私もしっかりと2人と向き合わないといけないなと気を引き締める。
「ヒマリさんは家でまったりとされていたと話していたけど、具体的には何をされていましたの?」
クーラーの効いた部屋でダラダラと漫画や作品を楽しんでいたなんて言えない。
「作品鑑賞をしていました」
「どんな作品を観ていたの?」
「恋愛作品です」
「いいですわね!ワタクシは普段読書するのですが、我が家でも映像を映し出す機械はないので、映像が見られる環境なのはすごく素敵なことね!」
まずい。私がユアさんの家よりもすごい家に住んでいることになってしまうのでは、これは。
私の世界では当たり前のことでも、こちらの世界では当たり前ではないということを忘れていた。訂正しないと。
「いやいや、あっちの世界ではそれが当たり前のことらしくて、凄いですよね」
「そうなのですね!ワタクシもヒマリさんのお祖母様のお家に行ってみたいですわ」
「それはダメです!!流石にユアさんの別荘より絶対狭いですし、ユアさんが満足するようなものはないですよ」
「そんなことはないと思いますけれど、いつか伺わせて欲しいですわ」
「私が許可できることではないので、何とも言えませんが、いつかご招待できたらいいですよね」
この後も色々な話をしていたら車が止まり、ドアを開けてもらって、外に出る。
目の前にオシャレで開放的な家が現れた。やっぱりスケールが違う。
右側を見るとビーチがあり、誰もいないので、もしかしたらプライベートビーチというやつなのかもしれない。
左側を見ると、バーベキューができそうな広い庭と森のようなところがある。
これが別荘ということは、本邸はどれだけ豪華なのかと想像するだけで震える。
「ーーさあ、行きましょう!」
「荷物を持たないと!」
私は車のトランクの方に向かおうとすると、ユアさんに止められる。
「彼が荷物を出して、家の中に入れてくれたわ」
運転手の方がもう既に入れてくれたようだ。
仕事が早い。
私はその人に感謝を述べて、3人で別荘の中に入っていく。




