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第39話 難しい感情


彼の提案に賛成し、ご飯を食べに向かう。

徒歩1分ほどで着いた。そこは洋食レストランのようで、看板に書いてあるメニューにはハンバーグやオムライス、スパゲッティなど色々あり、美味しそうだ。


「中に入ろう」


2人で中に入ると庭園同様に店内には全くお客さんはおらず、また貸し切り状態のようだ。


「2名様ですね。こちらのお席をどうぞ」


案内されて座り、テーブルの上にメニュー表が置いてあり、それに目を通す。

ハンバーグにしようか、それともオムライスにしようかと悩む。

彼は頼むものが決まったのかメニュー表を置き、こちらに視線を向ける。

私はその視線に気が気になって、メニュー表で彼の視線が入らないようにする。

そして考えた結果、オムライスにすることに決めた。

タイミングよく、お水の入ったグラスを持ってきてくれたので、そこでオーダーをする。

彼もオムライスを頼むようだ。私も偶然だけど、同じものを頼む。

頼み終わると、彼は再びこちらを見る。


「ヒマリもオムライスを食べるんだね」


「うん!オムライスが食べたくなってね!」


「実はここのオムライスが美味しいって聞いていて、食べたいと思っていたんだ!

ヒマリにも伝えようと思っていたんだけど、それを知らずに頼むなんて、やっぱりヒマリの食べ物センサーは鋭いね」


イブキくんから食べ物センサーっていうワードが出てくるのはなんかおもしろいな。


「その食べ物センサーって、なに!?

イブキくんってたまに妙なこと言うよね!」


冗談みたいに言うと、彼にはその冗談が通じてないのか、真面目な顔で話始める。


「ヒマリって食べることが好きだから、そういうことには凄く感が冴え渡っているように見えるから凄いなって思って言ったんだけど、嫌だった?」


この世界の人はジョークが無いのかと不安になる。前にも娯楽が少ないと言っていたが、少なすぎて冗談すら通じないのはいかがなものかとも思う。

それだけ真面目に言葉を捉えるのは素敵だし良いことなんだけど、私もたまには冗談も言いたいし、通じて欲しいとか思う。


「ううん!嫌とかじゃなくて、むしろ面白くていいなって思ったよ!ワードセンス良いなってね!」


彼は私の言葉を聞くと安心したのか、嬉しそうにしている。


「よかった。初めて面白いって言われたよ。

昔から同種族とも関わってこなかったから、あまり距離感とかが分からなくてさ、どうすればいいか分からなくなるんだ。でも、ヒマリと話しているとそういう不安がいなくなって、安心して話せる相手なんだ。

ーーだから、これからも僕とたくさん話して欲しい。ヒマリの話はいつも僕の想像を超えるから、聞いていて楽しいんだ」


こうやってしっかりと褒められると、つい嬉しくてニヤニヤしてしまう。

でも、そんな私って変な話をしているつもりはないけど、まあここが異世界だから私の普通と彼らの普通に違いがあって、面白いと思われていると考えたら確かにそうかもしれない。


「ありがとう!私もイブキくんと話す時間が好きだから、これからもたくさん話そうね!」


彼は顔が少し赤くなり、手で顔を押さえる、


「……ヒマリって、そういうところズルイよね」


「え?」


「前にも言ったと思うけど、好きとかそういう言葉を使ってくれるのは凄く嬉しいけど、僕は君のことが好きだから、そういう言葉を特に重く捉えてしまうんだ。

だから、その、あんまり好きとか言われると僕は間に受けてしまう。君への想いがより深くなって、抜け出せなくなる」


彼は顔を赤らめながらも真剣にそう言った。

これが告白ではないなんて、そんな信じられない。

もはや、告白の定義が何かわからなくなってきた。

こんなに素敵なことを言われてしまったら、どんなに鈍感な私も意識してしまう。


あとイブキくんよ、どんだけ私のこと好きなんだ。本当に好きなんだよね?おそらく。全然信じられないけど。

嬉しいけどさ、私はまだそこまでの気持ちまで達していないのが、申し訳ない。

好きなキャラや推しはすぐに見つけられるけど、そういう推し的な感じでイブキくんやシュウヤくんを見てしまっているがゆえに、どうやって恋愛フィルターで彼らを見ればいいか、分からない。

好きになってくれてとても嬉しいけれど、私には彼らの想いには答えられないし、その気持ちを同じ熱量で返すことは難しい。

色々考えが頭の中で過ぎる。


「お待たせいたしました。オムライスでございます」


ようやくオムライスが届いた。一旦この複雑な気持ちを忘れようと思い、早速スプーンですくい、頬張る。卵がフワフワしていて、チキンライスとの相性が良くて、スプーンは止まらない。

オムライスに夢中になって、あっという間に完食する。

美味しかったと余韻に浸っていると、イブキくんはまだ食べているようだった。食べるスピードが早すぎたかなと少し反省する。

彼はスプーンを一旦置き、お水を飲み、私を見る。


「ヒマリがいつも美味しそうに食べる姿も好きだよ」


「ありがとう」


一言言い終わると、彼は再びスプーンを持ち、残りを食べ始める。

褒めてくれたのはとても嬉しいが、何故急にロマンチックに言ったのかは謎である。

もしや、これで好きになってくれるかもと彼なりのアピールだったのでは。だが私は言葉よりも行動で好きアピールしてもらう方が動揺してしまいがちである。言葉の好きだよはアニメや乙女ゲームで散々言われ慣れている。ここは誇るべきところではないが、一般人よりも聞き慣れた言葉なので、簡単にはときめかないよと謎の反骨心が出る。


彼もオムライスが食べ終わり、レストランを出る。


「イブキくん、ありがとね!オムライスとても美味しかったし、ご飯代も出してくれてありがとう!」


「全然、僕は構わないよ!

むしろ、ヒマリが美味しそうに食べる姿が見れて、僕は満足だった」


「それはよかった!」


フラワーズパークを出て、寮に戻ろうと歩き出したが寄り道することになった。私たちといえばの、いつもの芝生の公園に着いた。いつも座るベンチに腰をかける。


「明日からは一旦ここを離れるんだよね。なんか実感ないな」


「僕はシュウヤがいるから、普段とあまり変わらない気がするけど、ヒマリの実家って遠いんだよね。僕も寂しいよ」


彼は少し曇った表情をしていた。


「まあ1ヶ月ぐらいだから、あっという間に会えるよ!ユアさんの別荘でも3日間みんなで遊べるから楽しみだよね!

イブキくんは別荘で何をやるとか聞いてたりする?」


「何にも知らないよ。まだ決まってないんじゃないかな」


「そうだよね!まだ時間はあるし、ユアさんのことだから何か考えてきそうだから、楽しみだな!」


「そうだね」


彼は先程から寂しそうな顔をしている。


「イブキくん、体調でも悪い?」


彼は違うと否定するように首を横に振る。


「ただ、もうヒマリと1ヶ月近く会えなくなるんだなって思ったら、寂しいなって思ってさ。


だって、今までほぼ毎日一緒に過ごしてたのに、急にパッタリといなくなるのって怖いなって思っただけだよ。男なのに、情けないよね。

これが別に最後の別れとかではないし、また会えるのに……。

それでも……僕はやっぱり好きな人と離れるのは寂しいな」


イブキくんは寂しがり屋さんだなと思いながら、彼を励ます。


「大丈夫だよ!離れていても、スマホがあるから何かあったら連絡すればいいよ!!

私以外にもヒナタくんやタクトくん、ユアさんもいるし、シュウヤくんもいるんだから1人じゃないよ!大丈夫!」


「ありがとう。不安になったら連絡してもいいかな?」


「もちろん!でも私、返信遅いで有名だから、文句は言わないでね!」


「わかった。返信が遅くても絶対に怒らないよ」


「よし、そろそろ帰ろう!!」


2人で寮に戻る帰り道、シュウヤくんと遭遇する。


「2人とも、おかえり」


「シュウヤくんはどこかに行くの?」


「今日は荷造りをしていて1日が終わったから、少し外の空気を吸いたいと思って、ちょうどランニングをしようと思っていたところだ。

ユイトもランニングするか?」


「俺はいいよ。まだ荷造り終わってないし、今夜、行くんだろ?

だから部屋に戻って準備しないと」


「わかった。1人でランニングしてくるよ。

帰省する前にヒマリに会えてよかった」


「私も!ここでシュウヤくんにも会えてよかった!次はユアさんの別荘で、だね!」


「ああ。楽しみにしている。


ーーそれじゃあ、俺は少し走りに行ってくる」


私はシュウヤくんに手を振り、彼は公園方向に向かって走っていった。

そして女子寮前に着き、イブキくんとも分かれる。


「じゃあ、またね!」


「うん、また」


「夏休み楽しもうね!」


「うん」


「またねー!!」


私は彼に手を振って、寮の中に入る。

女子寮には私以外いないのかとても静かで、歩く度に足音がフロア全体に響きそうなくらいだ。

足音を立てないようにゆっくりと歩きながら部屋に戻り、あまりない荷物をまとめて、帰り支度はバッチリとなった。 


暇なので、今日撮った写真を見ようとフォルダを開く。

バラの咲いていたエリアが綺麗だったな。

イブキくんとバラの相性が良すぎてそういうスチルに見えたな。

そういえば、今日撮った写真を送るって話していたのに、まだだった。イブキくんのチャット画面を開き、良く撮れた写真を送信する。

彼もスマホを見ていたのか、すぐに返信が来た。



ユイト:写真ありがとう。


ヒマリ:こちらこそ、今日は誘ってくれてありがとう!!凄く楽しかったよ!!


ユイト:楽しんでもらえてよかった。

また行こう。


ヒマリ:うん!今日はありがとう!



ここでチャットは終わり、ベッドに横になる。


そういえば今日は告白予約をされてしまった。いやいや、ほぼ告白されていたけれど。昨日も告白されて、今日も告白予約されるのは予想外すぎたし、夢なんじゃないかと本気で思ってしまう。

こんなこと現実ではありえないもの。自分みたいなモブキャラの人間がヒロインになれるのは、作品の世界だけの話なのだから。

自惚れるなと自分に野次を飛ばす。

これは異世界マジックだ。私が異世界人だから、物珍しくて気になってくれただけのはず。この夏休みで2人とも私を好きな気持ちが少しでも薄れてくれればいいなと思いつつ、それは少し悲しいなと思うのは虫のいい話だ。

ここで1ヶ月ぐらい会わずにすむのはいいのだが、次に別荘で2人に会ったとき、どんな顔をして話せばいいか分からない。

これは1人では解決できないから、まずは凛ちゃんに相談しようと思う。あっちの世界に戻ったら、遊びに行く約束をしよう。

一旦、気持ちをリセットさせるためにシャワーを浴び、その後眠りについた。

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