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第33話 喧嘩勃発、SOS


自販機コーナーは2階にあるので、階段を降りて買いに行く。

すると、脳内に誰かの声が聞こえてきた。


「やめて下さい。私はあなたのこと好きじゃありませんの」


ユアさんの声だ。迷惑そうに話している。


「俺はユアのことが好きなんだ。

ーーいや、愛してる」


ストレートな告白だ。凄く熱い。長年の片想いはやっぱり温度が違うな。

そう感心している場合じゃない。


「すみませんが、ワタクシはあなたの気持ちには応えられませんわ。

教室に戻ります」


「待ってくれ、ユア」


「痛いですわ!!離してください!」


「嫌だ。俺はまだ諦められない!」


なんだか嫌な予感がすると思い、2人がいる場所に向かう。確か、お昼の時に言っていた。B棟の図書室に呼び出されたと。

緊急事態かもしれないため、廊下を全力疾走する。




◇◆◇




走って呼吸を荒げていたが、しずめるために深呼吸をする。図書室に着き、ゆっくりと中に入ると、ユアさんが拒絶しているような声が聞こえた。

本棚に隠れて、様子を伺う。


「フータ、あなたは最低なヴァンパイアね」


「お前だって、勝手に婚約を決めただろ。

シュウヤたちには事前に話しておいて、なんで俺には話してくれなかったんだ」


「それは......確かに、ワタクシにも落ち度はありましたわ。それはすみませんでした。

ーーしかし、あなたのその態度もよくありませんわ」


「なんだと?」


彼はユアさんの手首を強く握り、壁に押し当てる。これはまずい。どうやって止めよう。近くになにか、ほうきみたいな棒が欲しい。探す時間もないし、どうしよう。迷っている内に彼の怒りはエスカレートしている。


「俺に指図するな!!

その厄介な口をふさいでやる」


彼はユアさんにキスしようと顔を近づける。彼女は全力で抵抗している。

すると、いきなり私の身長と同じぐらいのほうきが出てきて、それを掴み、フータの頭にめがけてふりかざす。

彼の頭にクリティカルヒットし、彼は倒れる。

私はほうきを投げ捨て、ユアさんに駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


「ええ、なんとか」


「よかったです。早くここから......」


すると、倒れたはずのフータは頭に手を当てながらこちらを睨みつけ、目の前に来た。


「よくもやってくれたな??」


ほうきを探すが、少し離れたところにいってしまい、取れない。


「そちらこそ!よくもユアさんにこんなひどいことをしようとしましたね?」


売り言葉に買い言葉だ。正直、殴られそうでめちゃくちゃ怖い。だが、彼女を守るためなら、やるしかない。

私は防御するためにファイティングポーズを取る。彼は私の軟弱なポーズを見て、鼻で笑う。


「やる気か?」


私を煽りながらも、彼も私と同じようにポーズを取る。

これは本当にまずい。殴られるやつだ。でも、ここで1歩でも引くと、もっと痛い目に合う。どうしよう。

焦っていると、何人かの足音が聞こえてくる。誰か来てくれたのかもしれない。

早く誰か来てくれと心の中で願っていると、チアキくんを筆頭にイブキくんとヒナタくんが駆けつけてくれる。


「フータ!何をしている?」


チアキくんは物凄くお怒りのようで、普段の優しい顔から想像も出来ないぐらい険しい顔をしている。


「おっと、これはこれは。生徒会長さんじゃないですか。いや、ユアの婚約者様と呼ぶべきかな。

こちらまで御足労いただき、ありがとうございます」


本当にフータは煽りスキルが高い。あんなにキレていたのに、よくそんな丁寧な言葉が出てくるんだよと心の中でツッコミする。


「2人から離れろ」


「それは難しいお願いですね。それにユアはまだ許せるが、この女は気に食わない。1発でも殴らないと、俺の気が晴れない」


やっぱり殴られるんだと怯える。フータの視線は鋭く、刺されている気分になる。


「話し合いじゃ、解決出来なさそうだ」


「そうですね」


ピリッとした空気が流れる。これは警戒しないと思い、フータを見る。

フータは一歩前に出て、チアキくんを殴ろうと襲いかかる。

チアキくんはフータくんの動きを読んでいたのか、パンチをかわして、フータくんの腕を掴み、背中に回して、壁に押し当てる。そして魔法で縄を出して、フータが身動きを取れないように腕と足を拘束する。

チアキくんが慣れた動きで対処し、あっという間に収束する。


私は安心して腰が抜けて、その場にしゃがみ込む。

みんなは心配そうに駆け寄ってきた。


「大丈夫か?ヒマリ」


イブキくんはとても泣きそうな目でこちらを見る。

私は空元気で「大丈夫!」とグッドポーズをする。

チアキくんはユアさんに駆け寄る。


「ユアも大丈夫か?」


「ええ、大丈夫ですわ!」


「とりあえず、2人とも椅子に座ろうか」


チアキくんの提案で、みんなは近くの椅子に座り、神妙な面持ちでユアさんを見て、チアキくんは口を開く。


「ーーそれで何があったのかな?」


「チアキさんもご存知かもしれないのですが、ワタクシ、フータに呼び出されましたの。

そして、フータの告白をお断りしていたら、揉めてしまいまして、あんなことになりましたわ」


ユアさんは呆れて話していた。

今度は私を見る。


「ヒマリは何でユアが危険だって、分かったの?」


確かに、普通じゃそんなのは分からない。正直に、脳内に2人の声が聞こえてきたから、それで助けに行ったなんて言ったら、笑われるだろう。


「女の勘です!」


みんなはポカンとした顔でこちらを見る。


「なんとなく、ユアさんが危ないような気がしたんです。

だって、フータくんは長年ユアさんのことが好きだった。それを断られた場合、癇癪を起こし、暴力に走るかもと思い、向かってみたら本当にそうだっただけです」


ヒナタくんは納得したのか、こちらを感心するように見てきた。


「だからあの変なタイミングで、飲み物を買いに行くって教室を出ていったんだ!」


良い感じに勘違いをしてくれたので助かる。


「そう!!その通り!」


「でも。なんで、俺たちに話してくれなかったの?」


ヒナタくんは不思議そうに話す。


「だって、ただの憶測に付き合わせるのは申し訳ないって思ったから」


「もう少し、俺たちのこと信用してくれてもよくない?ねえ、ユイト?」


不満そうに話すヒナタくん。イブキくんもそうだと言わんばかりの強い頷きをする。


「それはごめんなさい!今度からはみんなにも言うよ!」


「それでよろしい!」


ヒナタくんは私の言葉に満足し、チアキくんに話を振るように目で合図する。


「ーーそれで、ヒマリはユアの元へ行き、ユアを助けようと1人でフータに立ち向かったということでいいかな?」


「はい、その通りです」


「ヒマリは無茶をしすぎだよ。女の子が1人で、仲裁しようとするなんて無謀すぎるよ。

今回は俺たちが間に合ったからよかったけど、本当に殴られていたら?君は怪我をしていたかもしれないんだよ。

本当にヒマリは無鉄砲すぎるよ」


チアキくんは私を叱る。彼のいうことは正しいので、反論もできない。


「はい。ご指摘の通り、無謀でした。

本当にごめんなさい。今後は気をつけます」


「反省はしているみたいだから、今回はこれで終わりにするけど、今度また無茶をしたら、わかってるよね?」


「はい」


「これで説教は終わり。とりあえず、フータをどう処罰するか考えないと」


すると、遠くから足音がし、図書室に誰か入ってきた。

音のする方を見ると、校長先生が入ってきた。校長を見ると、みんな一気に立ち上がり、彼の方を向く。


「これはどういうことかね?」


「そこに拘束している1年Aクラスのフータ・タマキがユア・ミズホとヒマリ・タキモトに暴力を振るおうとしたため、僕たちが止めました」


チアキくんは簡潔に報告をする。

すると、フータが口を開く。


「俺は正当防衛だ。そこにいるヒマリってやつが先に殴りかかってきた」


みんな私を見る。それも事実だが、先にユアさんを傷つけていたのはフータである。


「いえ、彼の言ってることは違いますわ。

先に手を上げてきたのは彼です。ヒマリさんは私を助けようとしてくれただけです」


彼女はみんなに見えるように手の跡がついた赤くなっている手首を見せる。

私が無実であることを証明してくれる。


「確かに。これはフータくんが言ってることが少々違うように思える。

フータ・タマキくん、君は本当に何にもやってないと言えるかな?」


フータは下唇を噛みながら、悔しそうな表情をする。


「すみませんでした。俺が悪いです」


「君には処罰を与えなくてはいけない。直ちに校長室に来るように。

チアキ、彼の拘束は解いてあげなさい。そして、彼を連れてくるように」


「はい」


校長先生はパチンと指を鳴らすと、姿を消していた。

チアキくんは言う通りにフータを解放し、校長室に一緒に向かう。


「みんなまたね」


一言そう残して、図書室を出ていった。


「ユアさん、保健室に行きましょう?

手首を早く冷やさないと」


「そうね、ヒマリさんの言う通りだわ。ヒナタ一緒に着いてきて欲しいわ」


「わかった!それじゃあ、俺たちはこれで」


2人も図書室を出ていく。図書室には私とイブキくん2人だけとなった。


「ヒマリ」


イブキくんは悲しく私の名前を呼ぶ。

そして近づき、抱きしめられる。


「ヒマリ、本当に君は困った子だよ」


イブキくんは泣きそうなか細い声でそう言う。


「心配かけてごめんなさい。

でも、これは距離が近すぎるので、離してもらってもいい?」


「......」


彼は離そうとしない。


「あれ、聞こえてなかった?離してもらってもいい?」


「わかった」


やっと彼と距離が離れて安心する。心臓の音まで聞こえたら困る。


「ヒマリって本当に勇敢だよね」


意外な言葉が出てきて驚く。


「え?そう?」


「うん。僕が君と同じ立場だったら、足がすくんで助けられないと思う」


「褒めてくれてありがとう!」


「でも、無茶なことはしないでね。君がもし彼に殴られていたらと考えると僕は彼のことを許せそうになかったから、チアキくんが助けてくれてよかったよ」


「そうだね。チアキくんには本当に感謝しないと」


「ーーそろそろ寮に戻ろうか」


教室に戻ると、もう17時30分。まだ夕日は沈みきっていないから分からなかったが、かなり時間は経っていた。

その後、2人で女子寮まで行き、送って貰う。


「またね」


「うん、また明日」


私は寮に向かって歩き出し、部屋に戻る。

部屋着に着替えて、チアキくんにお礼のメッセージを送ろうと思い、スマホをポケットかや出す。



ヒマリ:チアキくん、今日は本当にありがとう。チアキくんがいなかったら、私たちはどうなっていたか分かりませんでした。

助けてくれてありがとう。



彼に感謝を伝えて満足する。

本当に怖かったな。人に殴られるって、あんなに恐ろしいことだと、身をもって実感する。殴られてはいないけど、想像するだけで寒気がする。

嫌なことは忘れてご飯を食べようと寮の食堂に足を運ぶ。




後日、フータ・タマキは一ヶ月の出席停止と三ヶ月分のポイントを減給すると言い渡される。

退学でないだけ優しい処罰だが、クラスや学年の彼への印象は最悪だろう。

普段はそんなことをする人ではないらしいので、好きな人への想いが強すぎてこんなことになってしまった彼に少しだけ同情する。

そんな複雑な想いを感じながら、今日も授業を受ける。

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