第28話 女子トーク
チアキくんとユアさんのデートも無事に終わり、今週末には2人の婚約発表パーティーが近づいてきた。
そんなある日の放課後、ユアさんから昨夜、明日の放課後に私と2人で話したいという連絡が来た。もちろんOKをして、いつものユアさんのカフェにやってきた。
ユアさんは先にカフェに行っており、いつもは店員さんが出迎えてくれるのだが、ユアさんが「お待ちしておりましたわ」と言って、中に案内してくれる。
2階のいつもの定位置の席に行き、テーブルの上にはイチゴの乗ったショートケーキが2つとティーカップが2つ並んでいた。
紅茶でまずは乾杯をし、率直に私だけを呼び出したのかを尋ねる。
「ユアさん、なぜ私だけ呼び出したのですか?」
彼女は紅茶を1口すすり、ティーカップを置く。
「ヒマリさんと女子会をしたかったのですよ」
女子会か。確かに、最近は6人でお茶会することが多かったから、2人でお茶することはなかったな。
ユアさんの言葉に納得する。
「ヒマリさんから見て、私とチアキさんはどう見えましたか?」
ユアさんは珍しくもじもじしながら尋ねてきた。
なるほど。周りの反応を知りたいわけか。
「お似合いに見えましたよ」
「もっと具体的に言って欲しいの」
彼女は子供が拗ねるような声で言ってくる。私はその様子が可愛すぎてキュンとする。
「ーーそういえば、この前撮った写真あるんですけど、それがとても素敵だったので、ここで共有しますね!」
私はスカートのポケットからスマホを取り出し、写真を共有する。
先日撮ったメリーゴーランドの馬に乗ったチアキくんとユアさんの2人の写真だ。あの後送る時間が無くてこのタイミングで写真を見せられてよかった。
「とても素敵ですわね」
「そうでしょう!とてもよく撮れました!!」
「ヒマリさんは写真を撮るセンスもあるのですね!」
「それは褒めすぎです!!」
ユアさんは私が撮った写真を嬉しそうに眺めている。そんな彼女の顔が恋する乙女みたいで可愛い。
「この写真はチアキさんにも送っているの?」
「いえ、まだ送っていませんよ!
ーーあ、でも、彼の父親には送りました」
彼女は私の言葉を聞いて、少し落胆しているように見えた。
「そうなの。他にはどんな写真を撮ったの?」
私のスマホの写真フォルダの画面にして彼女に渡す。
彼女は私のスマホを持ち、画面をスクロールする。
「シュウヤとイブキの写真もあるのね?でも、これはヒマリさんが映っていないけど、これはどういうこと?」
私の盗み撮りした写真を見て指摘する。
「これは、私が少し抜けていた時に2人の様子を遠くから見ていた時に撮ったものです!
良い表情でしょう?」
「確かに、この表情は2人の時だから見せる表情が切り取られていて素敵ね」
「はい!でも、この写真は2人には共有していないので、私たちだけの秘密ですよ!」
私は自分の口の前に人差し指を立てる。
「とても素敵な写真なのですけれど、ヒマリさんがそういうなら。でも、私には共有してくださらない?」
何故ユアさんがこのイブキくんとシュウヤくんの写真が欲しいのか分からないが、とりあえず共有しておく。
「ありがとう。
これからも、チアキさんとデートすることになったら、ヒマリさんには撮影係としてお願いしたいわ」
「ええ!?ありがたいお話ですけど、お邪魔になりませんか?」
前回の尾行も申し訳なかったのに、今後も付き添いは流石にまずいし、断ってほしい。
だが私の思いとは裏腹に、彼女は全然嫌な顔をしていない。
「いいえ、むしろヒマリさんなら大歓迎よ!
もし次にデートに行くことが決まったら、写真を撮って貰えると助かるわ!」
「わかりました。
その時は精一杯、撮らせてもらいます!」
「ありがとう。
ーーそれで、ヒマリさんの方はどうなの?」
不敵な笑みでこちらを見る。
「私の方はどう、とは?」
彼女の真意が読めず、質問返しする。
「ヒマリさんって、イブキとシュウヤととても仲が良いじゃない?この前の遊園地でもとても良い雰囲気だったから、恋してるのかなと思ったの」
なるほど。私が2人に気があるように見えたわけか。でも、2人とはそんな恋愛関係になりたいとは思わない。
そもそも私はまだ友達以上で見てないし、この世界にもずっといる訳じゃないので、恋にうつつを抜かしている場合じゃない。
ユアさんには申し訳ないが、否定させてもらう。
「あ〜、あれはただの"友達"としての対応です!!2人は確かに距離感は近いですが、恋愛的な要素は無いと思います」
彼女は私の言葉を聞いて、先程のワクワクした顔がすんっという顔になった。
「そうなのですね。ヒマリさんはイブキのこともシュウヤのことも"友達"としか見ていないということなのですね?」
「はい」
「そうですか、もし何か発展があったらまた教えてくださいね」
発展があるわけないと思いながらも、返事をする。
今度は私のターンだ。
「ユアさんこそ、チアキくんのこと、恋愛的な目で見ているんですか?」
この質問をすると、彼女は顔を赤らめてそむけた。
「その表情はもしや?」
彼女はそむけた顔を私の方に戻したが、まだ顔が赤い。
「ええ、この前チアキさんと2人きりの観覧車に乗ったとき、あんなに鼓動が早くなったのは初めてよ」
私はユアさんの言葉に頷き、続きを聞きたいので余計な言葉は言わない。
「観覧車から降りる時に、さりげなく手を取ってエスコートしてくれたのだけど、その時のチアキさんの手がとても温かくて男性の手はゴツゴツしているのだと知ったの。シュウヤの手もそんな感じなのかもしれないけれど、ワタクシは手を少し握っただけでこんなことを考えてしまったのは初めてでこれが恋と言ってもいいのか、分からないのだけど、ヒマリさんはどう思うかしら?」
真っ直ぐに紅い瞳でこちらを見るユアさんがとても純粋で綺麗だと思った。
「それは恋の始まりかもしれないませんね」
「恋の始まり......」
「そうです!これからチアキくんとまた婚約パーティーで会いますよね?その時にその気持ちが恋なのか、確かめてみるといいと思いますよ!」
「どうやって確かめるのかしら!?」
やばい。確かめ方を考えていなかった。
「例えば、チアキくんを見てドキドキするとか、隣に並んだ時に前よりも輝いて見えるとかですかね?」
すごく抽象的なことを言ってしまった。だが、彼女は私の言葉を真剣に聞いていた。
「なるほど。婚約パーティーの時に試してみるわ!」
ユアさんが恋愛マスターじゃなくてよかった。私のアドバイスは乙女ゲームや少女漫画の主人公の様子をそのまま伝えただけなので、参考にはならなさそうだが、ユアさんがそれで納得してくれて助かった。
「ヒマリさん、ありがとう」
彼女は私の手を握り、ぶんぶんと上下に振る。
「そんな大したことしていないですよ」
「いいえ、こんなことシュウヤたちには話せなかったし、素敵なアドバイスも貰えなかったと思うの。
ヒマリさんが友達でよかったわ!!」
ニコッと笑う顔が可愛すぎて、私の心にぶっ刺さる。反則レベルの可愛さだ。私だけがこの笑顔を独占してもいいのかと思ってしまう。チアキくんにもこの笑顔が見せられたらいいなとも思う。
「もうこんな時間なのですね。そろそろお開きにしましょうか?」
壁に掛けてある時計を見ると、18時手前だった。2時間弱話していたことに驚く。
「そうですね。ユアさんと話す時間が楽しすぎてあっという間でした!!」
「ワタクシもよ!また女子会やりましょうね?」
「もちろんです!」
2人で階段を下り、カフェから出ると、ユアさんの迎えの車が停めてあり、ここで分かれる。
「ごきげんよう!」
「はい!また明日!」
ユアさんと分かれて夜道を歩くが、いつもより心がホクホクと温かい気持ちで寮へと帰る。




