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第25話 入園前の準備


なんだかんだあっという間に土曜日を迎える。

あの後、チアキくんと連絡先を交換して、色々と話し合いをした結果、私はユアさんに見つからないように変装道具を買ってから遊園地に行きたいと思い、2人が人間界に行く時間の1時間前に人間界に向かうことにした。


ユアさん以外の4人にも、ユアさんとチアキくんのデートについて行くようにお願いされたことを伝えると、何故かイブキくんとシュウヤくんも行きたいと言った。

イブキくんは私が何をしでかすか分からないから心配だと言った。一方のシュウヤくんはユアさんのことが心配だと言って、2人とも各々で校長に話をしにいったそうだ。友達としての気遣いは嬉しいが、ここまでする必要があるのかと思う。


そんな疑問を抱えながら朝の支度をし、女子寮を出て少し歩くと、中庭にはイブキくんとシュウヤくんがベンチに座っていた。

私は2人に駆け寄り、「本当に着いてくるの?」と聞いた。


「ヒマリを1人で人間界に行かせるわけにはいかないよ」


イブキくんがそういう。隣にいるシュウヤくんも強く頷く。


「そうだ。前回の校外学習だって、迷子になってただろう?

俺たちがいないとまた迷子になって、2人の後を追えないだろうし、帰れなくなるかもしれないだろう?」


シュウヤくんに指摘されて、ぐうの音も出ないが、まだ諦めない。


「確かに。その可能性もあるかもだけどさ、だとしても、やっぱり2人とも付いてくる必要ある?」


私は2人の顔を見て聞くが引く気はないのか、2人とも表情を変えない。


「今、ここでこの話をしても(らち)が明かないから、まずは校長室に向かおう」


そうシュウヤくんに言われて、3人で校長室に行く。

校長室の扉をノックし、おじさんの返事が聞こえて、中に入る。


「おはよう」


「おはようございます」


挨拶をし、校長の言葉を待つ。


「今日はうちの息子のチアキとユアさんをよろしく頼むね」


おじさんはみんなの顔をそれぞれ見て言った。

私たちは返事をする。


「あの1つ質問なのですが、本当にこの2人も一緒に着いてきてもいいのでしょうか?」


私はおじさんにまで確認する。


「ああ、もちろん!

2人とも着いてきても問題ないよ」


おじさんは楽しそうにこちらを見る。

私はため息を吐く。

おじさんからも許可は得ているが、もう一度、私と一緒について行くのか尋ねる。


「2人とも一緒に行くんだね?」


「本当は2人で行きたいけど、今回はしょうがなく、3人で行くよ」


イブキくんが不満そうに言う。


「そっちこそ何でヒマリについて行くんだ?

俺にはユアを見守るっていう任務がある」


胸を張ってシュウヤくんは言った。シュウヤくんは相変わらずユアちゃんのお父さんだな。


「任務って大袈裟だろ。ただのお節介なだけだろ?でも何でシュウヤは、ヒマリと2人きりになるのはいいのかよ?」


「俺たちは友達だからいいんだよ。友達が友達の付き添いをすることは悪いことか?」


おじさんはこの2人の言い合いをニコニコしながら見ている。

おじさんに小声でレスキューを頼む。


「おじさん2人を止めてよ」


そう助けを求めると、おじさんはニヤッと笑って口を開く。


「2人はヒマリちゃんのことが好きなんだな」


おじさんは2人に聞こえるような大きな声で言った。

彼らの耳にも入ったのか、言い合いが止まる。


「そんな訳ないない!私がいつも迷惑かけるから、チアキくんにもそうしないか不安で来てくれたんだよ!娘を心配する父親ポジションとしてね!」


そんな少女漫画のヒロインポジに自分がいる訳ないとおじさんの言ったことを全力で否定する。

2人はおじさんの言った言葉を正直に受け取ったのか、真顔だった。


「俺はヒマリのことが好きだが、友達としての好きだ。それ以上のことはないから安心してくれ」


そう言ってくれたシュウヤくんに安心する。

そうだよね!君にはユアちゃんがいるものね!!私はユアちゃんへの片想いを陰ながら応援しているよ!

シュウヤ応援委員会より。


「ぼ、俺が、ヒマリを好きかはまだ分からない。でもほっとけないから、迷子になるなよ」


なんかイブキくん可愛い。

もはやイブキきゅんと呼びたいぐらい可愛んだけど。キモイことはわかっているので、絶対に心の中でしか呼べない。


「君たちの気持ちはわかったよ!

それじゃあ、3人で先に人間界へいってらっしゃい」


おじさんに遊園地付近のショッピングモール付近に転移してもらい、変装用の小物を買う。

ショッピングモールに入ると、土曜日の朝だからか、まだ人の流れはゆっくりのように見える。

変装といえば、帽子と伊達メガネだ。

そう思い、アクセサリーショップに入る。


「2人は変装しないの?」


私は自分に似合うメガネを探しながら聞く。


「俺はわざわざ変装する必要はないと思うのだが」


「俺も!何で変装しなきゃいけないんだ?そのままでもいいだろ?」


2人の言い分も少し分かるが、分かっていないな。


「チッチッチ。(舌で鳴らす)


君たち2人は分かっていないね。もしもユアさんが私たちが尾行していると気が付いたらどうなると思う??」


「驚く」 「何でここにいると疑問に思う」


「その通り。だが、それだけじゃない。


本来いてはならない私たちが見つかると、ユアさんは婚約者であるチアキくんと仲を深めるためにデートをしているのに、5人で遊ぶことになって本来の目的が遂行されない恐れがある。そしたら、今回計画した意味が無くなってしまう。だから、私たちは絶対に見つからないようにしないといけないの!!だから変装をするというわけ!!


まあ、2人は無理して変装しなくていいけど、私は変装するよ」


そう言って、また気になったメガネを手に取り、鏡の前で似合っている確認。


すると、一歩後ろにいた2人も隣でメガネを手に取り出し、鏡で確認していた。

私の熱弁を聞いて、変装する気になったようだ。


イブキくんは腕にブレスレットをして、首周りにヘッドホンをするというなんか流行りっぽいスタイルに決まり、シュウヤくんはシルバーのネックレスに黒いバケットハットを被るというちょっと芸能人風スタイルとなった。

2人ともカッコイイのでむしろ目立ちそうだが、まあいいや。

私は丸メガネにキャップというシンプルな感じでちょっと雰囲気を変えて、いざ遊園地へ。


2人は遊園地前に鏡を繋いで貰っているので、入場口付近に向かう。

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