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第23話 ユアさんの婚約者


今日の放課後、私たちはユアさんのカフェへとやってきていた。いつメンである、私、ユアさん、イブキくん、シュウヤくん、ヒナタくん、タクトくんの6人である。

いつものようにテーブルの上には、紅茶の入ったティーカップが6つとたくさんのお菓子が並んでいる。

まずは紅茶で乾杯してから、ユアさんはコホンと咳をし、彼女に注目をする。


「今日、会わせたい人がいますの」


ユアさんは真剣な声で突然言った。みんなは何なんだろう?と不思議に思いながら、顔を見合わせる。

階段から足音がして奇妙だと思い、音のする方を向くと上ってきたのは、チアキ・ナカタだった。


「チアキ・ナカタ?」


みんなも何故彼がここにいるのか分からなかった。

チアキ・ナカタは校長の息子である。

そして、ウィザードだ。17歳という若さである程度の魔法は使えて、この学園1の頭脳を持ち、この学園の生徒会長を任されている。

いずれはこの世界の中心人物になるだろうとみんなが期待している存在である。

ちなみに私のいとこだ。

幼少期に何度か遊んだことはあるが、何を会話したかも覚えていないので、ほぼ初対面である。

彼はゆっくり歩いていき、ユアさんの隣に立つ。


「ワタクシの婚約者のチアキ・ナカタさんですわ」


彼女に紹介されて、私は思わず目を見開く。

周りを見ると、おおかた目星をつけていたのか、私ほど驚く者はいなかった。

チアキくんは私たちの顔を見ながら、話し始める。


「ユア、いきなり大胆な紹介だね。


はじめまして。僕はチアキ・ナカタです。

みんなより2学年上の3年生です。生徒会長もやっているので、何か困ったことがあったら頼って欲しい」


入学式の時も思ったが、改めて目の前にしても優しそうな人だ。気も遣えそうだし、なんか少女漫画の当て馬のキャラのような雰囲気を持っている。要は物凄く良い人だ。こういう人と結婚するのが、安定して幸せになれる。


この2ヶ月ほど一緒にユアさんといたが、チアキくんの話は聞いたことがないので、おそらくは政略結婚というものだとは思うが、この様子を見る限り2人ともそんなに嫌では無さそうだ。

彼女の顔を見ると、何だか深刻そうな顔をして、話し始める。


「さて、皆さんにワタクシの婚約者を紹介した理由がありますの。


来週、ウチで開かれるパーティーがありまして、それがワタクシの婚約者お披露目パーティーを開催する予定ですの。

父が盛大にやると聞かなくてワタクシの友達も呼んでいいということになりました。

みなさんを招待するために、今日は集合していただきました」


なるほど。お嬢様は婚約者のお披露目パーティーもするのか。

やっぱり次元が違う。


「本当はみなさんにもそこで婚約者のチアキさんを紹介をしようと思っていたのですが、困ったことがありまして……」


珍しく困った顔をするユアさん。

ユアさんが困ることとは一体何だろう?

みんなも彼女の言葉に耳を傾ける。


「チアキさんは婚約者なのに、まだ1度もお出かけしたことがないの。それに2人で撮った写真すらないのはおかしいとお父様にも指摘されてしまいましたの」


なるほど。確かに仲の良い人だったら、ツーショットの1枚や2枚ないと怪しいし、そもそもデートにすら行っていないのは妙だと思われてもしょうがない。


「ーーそこで皆さんにワタクシたちのデートプランを考えるお手伝いをして欲しいの」


何だか楽しいそうな話だ。人のデートプランほど考えるのは楽しいことはない。なんだか恋バナみたいで良い。

私はこの話に乗る。


「そのお話お受けします!」


「ヒマリさん、ありがとう」


ユアさんに手を握られて驚くが悪くはない。

私の鶴の一声で、みんなもユアさんに協力する流れとなった。


「まず、今週末にデートに行かないといけないのですが、どこに行ったらいいと思いますか?」


ユアさんは私たちに尋ねる。

みんな一斉に唸り、なかなか行きたいところが、ぱっと頭に思い浮かばない。


「2人で行きたいところとかはないのか?」


シュウヤくんはまともな質問をする。

確かに、まずは2人の行きたいところがないのか気になるところだ。


「ワタクシの行きたいところは思い浮かびません。だから、みなさんを頼っているの。


チアキさんはありますか?」


「僕ですか?


僕も特に行きたいところはありませんが、しいて挙げるとすれば遊園地ですかね?」


おお!遊園地の意見は賛成である。


「遊園地とてもいいと思います!カップルの行く定番スポットであり、色々な乗り物もあって老若男女楽しめますし、2人の距離も縮めやすい。写真も撮りやすくて思い出作りも出来ますし、最高の場所だと思います!」


私とチアキさんだけ盛り上がっているが、みんなはポカンとしている。

周りの様子を見るに、嫌な予感がする。

もしや、この世界には遊園地など存在しないのか。


「遊園地は回遊園(かいゆうえん)のことか?」


シュウヤくんが私たちにそう尋ねる。

この世界にも似たような施設はこの世界でも存在していた。


「そこだと思う」


「そこだと思うって、回遊園のこと知らないだろ」


呆れ気味なイブキくんにツッコミされる。

ヒナタくんが回遊園のことを説明してくれる。


「回遊園はね、色々な乗り物がある場所なんだけど、あまりにも乗り物が激しすぎて負傷者も出るから気を付けて遊びに行かないといけないんだ。

友達とか恋人同士ってより怖いもの試しで行くようなところなんだ。だから2人の話していた良いところではないよ」


ヒナタくんの説明にみんなも頷く。

そんな恐ろしい場所なんだ。まるで罰ゲームをするために使われるような施設ではないか。

負傷者が出るということは人間である私はワンチャン死ぬ可能性があるということだ。

みんなはヴァンパイアだったり、ウィザードだから問題は無いというか死には至らないが正解か。

うーん。そこだとデートスポットって感じがしないな。

頭を捻らしていると、ユアさんがお菓子を食べるよう勧めてくれる。

ちょうど糖分が欲していたところだった。手前にあるチョコチップが入ったクッキーを口に入れる。

安定の美味しさである。

説明してくれたヒナタくんは私とチアキくんに質問する。


「それで回遊園には行く?行かない?」


「行かない」


2人同時に行かない選択を下す。

私はみんなに他にデートスポットみたいなところは無いのか尋ねる。


「他にと言われても、この世界はそもそも娯楽が少ない。

だから娯楽の多い人間界に憧れを抱いて、この学園に入学してる生徒と少なからずいるだろう」


シュウヤくんは話す。

なるほど。そうなると、あとは人間界に行ってデートするしか方法がないということか。

これはなかなかに骨が折れそうだ。


今回の話し合いでは結局意見はまとまらず、明後日の放課後に再度集まることになった。

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