第20話 リュウ先生と1日 その1
校外学習が終わり、日々の落ち着きを取り戻すと思ったが、昇降口に入ると他のクラスの人が私を見て、こそこそと噂話をしているように見えた。
先程の反応を不思議に思いながら教室に入っていくと、私を見てザワザワしだす。
おかしいと思い、急いで安全地帯である自分の席に座る。隣の席のイブキくんは普段と変わらない様子で読書している。
みんなの視線を入れないように、顔をうつ伏せにして、机とにらめっこする。
やっぱり何かやらかしてしまったようだ。
自分の行動を振り返ると、校外学習の日は色々ありすぎてどれが引っかかったのか分からなかった。
とりあえず寝たフリをしてHRが始まるまで乗り切る。
ユアさんたちもいつも通り挨拶をしてくれたので、よく分からなかった。
教室に担任のリュウ先生が入ってくる。この教室がピリッとした緊張感に襲われる。
「おはよう。今日もみんな揃っているな。
諸君も知っているだろうが、このクラスで校外学習でのルールを破った者がいる。
その者はHR後に至急職員室へ来るように。
ーー以上だ」
簡潔に伝えて、先生は教室を出ていった。
イブキくんが席を立つ。珍しいと思い、横を見ると、ヴァンパイア族の4人も立ってどこかに移動しようとしていた。1時限目は教室を移動する教科ではないはずなのに。
「ヒマリも行こう」
イブキくんに言われて、私もみんなの後を追う。
やはり、校外学習でやらかしたことがバレてしまったようだ。
どう言い訳しようかと考えながら、職員室にたどり着く。
シュウヤくんを筆頭に職員室に入っていく。
リュウ先生は待っていたという感じで、私たちを出迎える。
職員室の端っこのちょっとしたソファーとテーブルの置いてある客間のようなところに、ユアさんとシュウヤくんがソファーに座り、残りの4人は後ろに立ち、先生の話を聞く。先生は手にコーヒーカップを持ち、1口飲み、音を立てないよう丁寧にテーブルに置く。
「お前たちを朝から呼び出した訳だが、この前の校外学習で、迷子になった者がいるらしいな?」
そう問いただすと、犯人を見つけるような疑いの目と鋭い声で指摘されて、私はビクっとする。これはマズイ。どこから漏れ出たんだ、この情報。
「隣のAクラスの者が目撃したそうだ。
グループのメンバーと行動せずに、見たことがない者と行動しているところを見かけて、不可解だと思ったらしく、すぐにAクラスの担任から俺に連絡がきたんだ。
だから校長にお願いして、魔法でお前たちの会話を一部だけ聞かせてもらった。
迷子になったあげく、人間に助けて貰った、ヒマリ・タキモト」
ついに名指しされてしまう。
冷や汗が止まらず、動揺する。
「これには深い、深い訳がありまして……」
私は先生と目を合わせるのが怖くて、目はきょろきょろと右往左往してしまう。
「どういう訳だ?」
先生は怒っているのか、鋭い眼光でこちらを見る。物凄く怖い。今の先生はヴァンパイアじゃなくて、鬼に見える。
「リュウ先生。これに関してはヒマリだけでなく、俺たちにも非はあります」
シュウヤくんが助け舟を出してくれる。
「どういうことだ?」
「ヒマリが迷子になったのは、5人もいたのにシブヤの景色に夢中になって、ヒマリを見失った俺たちも悪いです。
ヒマリも初めてのシブヤということで、はしゃぎすぎたようですが、この件は俺たち5人も悪いので、ヒマリだけを責めるのはやめてください」
シュウヤくん。私を庇ってくれるなんて本当に優しい。心の中で滝行の水の流れぐらいの激しい勢いで涙が流れている。
「そうですわ。ワタクシたちも悪いので、みんなで罰を受けます」
「お前たちの言いたいことはわかった。
ヒマリ・タキモト。お前はどう思っているんだ?」
リュウ先生は私の言葉も聞きたいようだ。謝罪しないとな。
「ご迷惑おかけしてすみません。
シブヤを見て、ついテンションが上がりすぎて、1人で行動してしまいました。
偶然助けてくれた人間が良い人たちで良かったものの、間違えて悪い者と出くわしてしまったらと考えると、私の行動は軽はずみでしたこととはいえ、許されないことをしました。
本当にすみませんでした」
精一杯考えた言葉を伝えて、頭を下げる。
「頭を上げろ」
先生の声がして、頭を上げる。先生の目はまだ怒りを宿して見える。
「6人が今日中に反省文を出すことと、ヒマリ・タキモトは1週間、俺の助手をしなさい
そうすれば、今回の件は許す」
当たり前だけど、私だけ罰が重い。先生厳しい。
「先生の助手って何をするんですか?」
「俺が頼んだことを何でもやるんだ。いいな?」
まるで雑用係じゃないか。拒否権も与えられていないし、まあこれで許されるならまだいいかと納得する。
「はい」
「この件はこれで終了だ。
もうすぐ1時限目が始まるから用意しなさい。
廊下は走らないように移動しなさい」
やっと解放される。廊下を早歩きで移動し、教室に戻る。




