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第2話 自己紹介


教室に着くとすぐにチャイムがなり、慌てて席に着く。

担任のシバモト先生が、廊下側から自己紹介するように促す。

1番前の席の女の子は普通の子っぽく見える。


「ゾンビタウンからやってきました、ヒナです。

よろしくお願いします」


私の列の1番前の子はゾンビのようだ。その後に挨拶する人たちもみんなゾンビタウンから来た人のようだ。なんだかんだついに私の番がやってくる。


「初めまして、滝本陽葵(たきもとひまり)です。よろしくお願いします」


とりあえず無難な挨拶をすると、みんな驚くようにこちらを見る。私は何か変なこと言っちゃったのかと焦って、周囲を見渡す。

周りはこそこそし出すも、先生が「静かに」と言って、次に挨拶するように促す。まだ周りは少しざわざわしているが、隣の席の彼は聞こえていないのか、それとも気にしていないのか、何一つ動揺していない涼しげな顔で自己紹介をする。


「ユイト・イブキです。よろしくお願いします」


なるほど。ここは名前から名乗るスタイルが普通だということを忘れていたことに気がつく。みんながこそこそしていた理由も彼のおかげで理解した。


その後、みんなの挨拶を聞いて判明したのがこのクラスにはゾンビ族、ミイラ族、獣族、ヴァンパイア族という4種族の生徒が在籍していることがわかった。


特にヴァンパイア族の4人は華があり、みんな揃って髪の毛の色は銀色で、瞳は澄んだ赤色である。特にシュウヤくんはキリッとした目をしていて、全てを見透かしそうな鋭い眼差しを持つ容姿端麗な男の子だと思った。ヴァンパイア族の唯一の女の子はまるでお嬢様のようなですわよ口調で、2次元キャラクターなのではと疑うレベルで可愛いし美しい。ツインテールとかも似合いそうな、ロングヘアにストレートの髪型である。


パッと見たらみんな人間っぽく見えるがよく見ると、ゾンビ族の人たちは薄ら顔色が悪そうな人もいるし、ミイラ族は室内なのに帽子被っていたり、ニーハイやタイツ、アームカバーをしてどこかしら隠しているし、獣族は分かりやすく耳が生えていて、ヴァンパイアの人達はピリッとした緊張感と高貴な空気を漂わせている。


そして謎の存在である隣の席のイブキくんだ。自己紹介では私以外で唯一何族かも名乗らなかった。彼についてまだ何にも知らないが、ただなんとなく私と近い人だと思えた。

でも先ほどおじさんから忠告を受けたが、私が人間だとバレてはいけないので、私も自分が何族かは答えられるようにしないといけない。


クラスメイトの自己紹介も終わり、今日はお昼前に学校は終わるようだ。

やっと解放されたと息をつき、その場から気配を消すように近くのドアを開き出ていこうとすると、誰かに呼び止められた。振り向くと斜め前の席に座るゾンビ族のナルミさんだった。


「もう帰ってしまうの?」


「はい、何か私に用ですか?」


何故話しかけられたのか全く分からず、素っ気ない態度を取ってしまう。

彼女は興味津々そうに私の顔を覗く。


「あなたのことが気になっているのに、もう帰っちゃうの?」


何で私のことが気になるんだろうという不思議な気持ちと、これ以上話すとボロが出る前にここから一刻も早く去りたい気持ちが混ざり合う。


「わ、私なんて、みんなが注目するような存在じゃないですよ」


普段でも言わないような変なセリフを吐いて、その場から逃げ出すように教室を出る。

分からないことが多すぎるので、何でも知っているおじさんに会いに行くべく、校長室へ向かった。


校長室の扉の前に来てノックをするが、全く反応が無い。そろりと扉を開けると、校長室には誰もいなかった。

仕方なく扉を閉めて教室に戻ろうとすると、後ろから声をかけられた。誰かと思い、振り向くと、おじさんだった。声にならない叫びをあげてしまう。おじさんも驚いた顔をして、こちらをみる。


「驚かせてごめんね。

ここでの立ち話もなんだから、中に入ろう」


そう言われて校長室に入り、校長室の右側に接待用のテーブルと椅子と思わしき場所に腰をかける。


先ほどの現象について、おじさんから説明される。これは防犯システムで来訪予定者がいると校長室に入っておじさんのことが見えて、約束していない人が来ると部屋には誰もいないように見えるという魔法がかかっていると教えてくれた。


なるほど、魔法はこんなことも出来るんだと感心する。

ただ感心している場合ではなかった。

おじさんにはまだ聞きたいことが山ほどある。


「そういえば、女子寮ってどこにあるの?あと部屋の番号を教えて欲しい」


「あー、ちょっと待って」


おじさんは立派な机の引き出しから学校の構内図を持ってきて、目の前のテーブルに開き、現在地を照らし合わせながら説明してくれる。


「まず今の場所はA棟と言って、まあ学校のメインの教室とかある場所だね。次に、隣にあるのがB棟で食堂や音楽室、図書室などサブの教室が多い棟だよ。入学式で体育館に行った時に通ったのがB棟だよ」


おじさんの説明によって、少しずつ学校の場所が理解出来てきた。


「そしてA棟を出て、中庭を抜けて右に曲がる道があるんだけど、少し進むとマンションみたいな建物があってそこが女子寮になっているよ。ちなみに学校の正門から行く途中に右側に道があって、そこを進むと男子寮となっている。

女子寮も男子寮も内装の造りは同じで、1階が食堂やお風呂、シアタールーム、ランドリールーム、自販機など完備されている。

もちろん全て無料で利用が出来る。以前までは入寮制では無かったんだけど、この設備に惹かれて入寮希望者が増えて、今では基本的には入寮してもらうことになったんだよね」


おじさんの話に頷く。確かに、こんなに魅力的な施設であり、しかも全て無料で利用出来るなんて神すぎる。こんな場所使わない方が損だと思い、入寮を希望する人が増えるわけだ。


「2階から4階が学年ごとに分かれていて、1年生は1番上の4階に部屋があるよ。君の部屋番号は1208番だよ。分かったかな?」


私はおじさんが言っていたことを学校から支給されたスマートフォンのメモアプリを使って、書き残す。

おじさんがもしよかったらと学校の構内図の写真も撮らせてくれた。

これで教室の場所に迷わずに済むと安心する。


「今日は色々あって大変だったと思う。

明日から本格的に授業が始まるからより忙しいと思うけど、ひまりちゃんならきっと出来るよ!

また何か困ったことがあったら、この部屋においで。あ、君と連絡先を交換しておけばいいか」


おじさんはジャケットの内側のポケットからスマートフォンを出して、おじさんの交換コードを読み取って登録した。


「ここでもスマートフォンの利用は同じように出来るけど、人間界のことを調べたり、ニュースなどは見えないようになっているから注意してね」


そう警告をされて、私は校長室を出た。

女子寮まで歩きながら、この世界は本当に異世界なのか、未だに実感が湧かなかった。

すれ違う人もクラスの人もみんな人間に見えるし、アンデッドと想像すると、人間を脅かす存在なイメージだが、実際見ても人を襲うような怖い印象もなかった。

まだ誰とも会話をしていないからそう思ってしまっているだけかもしれないけど、そういう人たちがいるように思えなかった。


そんなことを考えていたら女子寮までたどり着いた。

扉を開くと目の前にはエントランスがあり、右側には食堂のようなテーブルや椅子が並んだホールのような綺麗な部屋があり、左側にランドリールームやシアタールームなど並んでいた。

正面に進むと階段があり、二手に分かれた階段を上ると、そのフロアにたどり着けるようだ。4階となると結構階段上りがキツそうな印象がある。エレベーターとかないか辺りを見渡すと、ランドリールームの隣にエレベーターがあり、試しに乗ってみることにした。


エレベーターはすぐに扉が開き、4階のボタンを押す。1回で6人は乗れそうなぐらいのスペースがあるが、時間に余裕が無い時は利用しない方が良さそうだ。

あっという間に4階まで着き、エレベーターを出ると、マンションのように一定の感覚に部屋が並んでいた。

私の部屋は階段やエレベーターから1番奥の部屋のようだ。


部屋の前にやって来て、部屋の鍵を貰うのを忘れていたことに気が付いた。

でもその部屋には鍵穴などはなくホテルのようにルームカードが無いと入れなさそうと察して落ち込む。

一応鍵がかかっているとは思うけど、ドアノブを握ると、カチャをロックが解除される音がし、ドアが開いた。何に反応したのかよく分からないが、とりあえず入室出来た。

部屋は2人部屋なので、ベッドや勉強机と椅子、クローゼット、窓が右と左それぞれに1つ設置されている。

真ん中のカーテンを開けると大きな窓があり、その先にちょっとしたちいさなベランダがあった。

トイレやシャワールーム、洗面台は部屋から見て左側にあり、シャワールームとトイレは別になっているのでありがたい。


部屋の中の確認は終わり、とりあえずベッドに寝転がる。

肩の力が抜けてリラックスする。いきなり分からないことだらけで考えてばかりいたから、とても疲れた。

ベッドが考え事を受け止めてくれるように私を包み込む。


気が付くと、月明かりに照らされた見知らぬ天井があり、辺りは暗かった。


電気を付けて、壁にかけてある時計を見ると20時になっていた。2時間ほど寝てしまったようだ。

お腹が空いたので、1階にある食堂へ向かう。


食堂に行くと想像よりも人は少なく、カウンター席には誰1人居なくて、ぼっち飯がしやすい環境であった。

食券でカツカレーを選び、渡し口の列に並ぶと魔法のようにすぐに食券で選んだものが出てきて受け取ることが出来るようだ。


カレーがのったお盆を受け取ると、カレーの良い香りが目の前に広がり早く食べたいと思い、足早にカウンター席に着く。

スプーンを持ち、カレーを1口頬張る。口に広がるカレーのスパイスが食欲を増幅し、スプーンが止まらない。カツも衣サクッと中はジューシーでカレーとの相性が良く、あっという間に食べ終えてしまった。


あまりの美味しさと無料で食べれることに便乗し、もう少し何か食べようとお皿を戻し、食券を買いに行く。

メニューを見るとカツカレーの他にも、ラーメンや生姜焼きや唐揚げ定食、おにぎり、サラダなどメニューのバリエーションが豊富で本当に無料でこんなに食べられることに感動してしまう。


流石に先程カツカレーを食べてしまっているから控えめにおにぎりとサラダを頼む。

おにぎりの中身は鮭で、サラダはレタスとキャベツ、コーン、トマトで和風ドレッシングがかかったシンプルに美味しいもので、楽園のような食堂だ。


お腹も満たされたところで部屋に戻ろうと階段に向かうが、4階まで階段を上るのはちょっと面倒なので、エレベーターに向かう。


エレベーターの前には数人並んでいて、ちょっと気まずいと思いながら、エレベーターが来て乗り込む。

エレベーターに乗った私含めた5人。

4階のボタンだけライトが付いているので、みんな1年生のようだ。4階で全員降りて、各自の部屋に戻った。

私も部屋に戻り、シャワーを浴びて、またベッドに横になる。

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