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第17話 校外学習 その3


「次は何をしましょうか?」


期待に満ちた目でユアさんは私を見る。


スマホの時計を見ると、12時30分。集合時間の17時まで、あと3時間ちょっとある。

楽しめる場所を考えると、頭に浮かんだのはゲームセンターだった。

私はゲームセンターに行きたいとみんなに提案する。


「ゲームセンターとはどこですの?」


「ゲーセンはさっきの建物の中にありましたよ!こちらです」


そういって今度はみんなと離れないように気をつけながら、ゲームセンターへ向かう。


ゲームセンターのフロアに着くと、まだ昼なのに太陽の光は入らない暗闇の中でクレーンゲームを始めとしたゲーム機が何十台もひしめき合っていて、周りは光と音で溢れていた。


見慣れない光景が広がっているからか、みんなは物珍しそうに周囲を見渡す。

こんな電子機器に囲まれた場所はそう滅多にないし、そもそもあっちの世界じゃ、こんなサブカルチャー的な施設はなさそうだ。


「まずは何をしましょうか?」


みんなに何をやりたいか尋ねる。


「ここは何が出来る場所なの?」


確かに入口はクレーンゲームで固められているが、もっと奥にいけば、音楽ゲームやレースゲーム、エアホッケーやプリクラなど色々遊べるものはある。だが、ゲームセンター初心者でも楽しめそうなものといえば、クレーンゲームか。操作も簡単だし、取れるまでは大変だが取れた喜びも味わえるので、オススメしてみる。


「このクレーンゲームをやってみますか?」


「それをやってみましょう」


初めて耳にするワードのはずなのに妙に乗り気だ。

そういって、私はまだ取りやすそうな駄菓子のクレーンゲームを探す。

クレーンゲームの景品を確認しながら歩くと、お菓子コーナーのところに色々な種類のクレーンゲームが設置されている。

まだ簡単そうなものを選び、プレイする。今のクレーンゲームは電子マネーでも支払いが出来るようで良い時代だ。私はスマホの決済アプリに数百円入っていることに気が付き、それでゲームをプレイする。

お金を入れるとゲームのBGMが変わり、レバーを動かせるようになる。


「見ててください」


みんなにクレーンゲームのプレーを見られるのは恥ずかしいが、ここは一発で取って、カッコつけたい。

レバーを細かく動かし、慎重に確実に1つ取れそうなところを調節して、掴むと書かれたボタンを押す。

キャッチャーは私の予想通りの場所に下りていき、チョコレートの棒2本を掴み、落としてくれる。


無事にゲットした。みんなに見せびらかすようにチョコレート棒を持つ。

みんなから賞賛と拍手をされ、良い気分になる。


「ヒマリさん、お上手ね!初めてこのゲームをやる人だとは思えないくらいの腕前だったわ」


やばい。本気でやりすぎた。

ユアさんの言うことは正しい。何度このクレーンゲームで悔しい思いをしてきたか。

だが、ここは初めてだと言わないと色々と辻褄が合わなくなるので、誤魔化す。


「いえいえ、初めてプレイしたんですが、予想通りのところに動かせたのがよかったです」


「ワタクシもやってみたいわ!」


小さい子供のように無邪気に言う。


「もちろんです!どのクレーンゲームで遊びますか?」


「せっかくなら、ヒマリさんと同じもので遊びたいわ!」


そういって、スマホをピッとかざして、クレーンゲームはプレイ出来るようになる。


ユアさんは私と違ってあまりゲームで遊んでいないせいか、おぼつかない操作をする。私は口出ししたくなる気持ちを抑えて、ユアさんのプレーを見守る。キャッチャーは思うようなところにいかず、1本も取れなかった。


彼女は悔しがり、もう一度プレイするもダメだった。


「次はシュウヤがやってみなさい」


ユアさんは取れなかったせいで不機嫌になり、シュウヤくんを名指しする。今度は彼がこのクレーンゲームに挑戦するようだ。


100円を支払い、ゲームスタート。

彼はクレーンゲームをするのは初めてのはずなのに、慎重にレバーを動かして良いところにキャッチャーをセットする。

これは取れそうだ。

キャッチャーはチョコレート棒を3本掴み、落とす。


シュウヤくんは3本ゲットした。


「凄いね!シュウヤくん!!」


「俺はヒマリのやっている操作を真似して取れただけだ」


そんな見ただけで取れるなんて器用すぎる。流石は学年1の秀才というべきなのか。


「いやでも、見て真似して取れるのも才能だよ」


「そうか?」


シュウヤくんは嬉しそうにチョコレート棒を見つめる。そんなに取れたのが、嬉しかったんだな。

確かに、初めて景品が取れたときはとても嬉しかったことを思い出す。


「ワタクシもチョコレート棒欲しいですわ」


羨ましそうに見つめていたので、私が取ったチョコレート棒を1つ、ユアさんに渡す。


「2本取れたので1本あげます」


「本当にいいのですか?」


「はい!」


「ありがとうございます!大事にしますわ!」


渡したチョコレート棒を大事そうに見つめる。

そんな単価の安いものを高級品のチョコレートみたいに見つめないで、とツッコミたくなる。

まず、食べ物なので大事にしなくてもいいし、今日中に食べることをオススメする。


「俺もやっていい??」


こちらも目を輝かせてクレーンゲームを見ている。次はお菓子大好きなヒナタくんも挑戦するようだ。


「もちろん!」


100円投入すると、彼も筋がいいのか、スムーズにレバーを動かして、キャッチャーは良いところに止まり、チョコレート棒をキャッチする。


「やったー!取れた!!」


嬉しそうにチョコレート棒を見せてくれる。


「凄いね!!」


「そうでしょう!!寮に戻ったら食べよう!!」


タクトくんとイブキくんはクレーンゲームには興味がある無いのか、やらないようだ。

すると、シュウヤくんはチョコレート棒を3本取れていたので、プレイしない2人に1本ずつ渡してあげていた。


「他には何か楽しいことはないかしら?」


ユアさんはクレーンゲームを諦めたようだ。

彼女でも楽しめそうなものといえば、女の子が大好きなゲームセンターでのものいえば、プリクラだ。私はこのプリクラをスクールカースト上位軍団しか撮ってはいけないものという認識だったが、最近になって私みたいなオタクでも撮れるようにゲームやアイドルなどとコラボしたりすることで昔よりも撮りやすくなってきたのである。


「それじゃあ、せっかくならプリクラを撮りませんか?」


「プリクラとは?」


今度はシュウヤくんから聞かれる。説明するのも手間なので、プリ機のあるところまで進んでいく。


「これです!顔を加工して写真が撮れる機械です!」


「聞いたことはあったけれど、実物は初めて見たわ」


ユアさんを機械に印刷されている写真をまじまじと見る。


「この子たちみたいに撮れるってことかしら?」


「まあそうですね!でも、この子たち読者モデルとかSNSで人気な可愛い子たちなのであまり映りは参考にはなりませんがね」


つい皮肉を言ってしまう。ネガティブなことは言わないように心がけているのだが、つい口から(こぼ)れていた。話を変えないと。


「そういえば、プリクラって人数が多くても4

人とかで撮るイメージなんだよね!


6人だと上手く映らないかもしれないので、ここはグッパーで分かれて3と3で撮りましょうか?」


「グッパーとは?」


次はイブキくんからだ。私はさっきから解説しかしてない。解説ちゃんだな。


「じゃんけんのグーとパーどちらか選んで、グッとパーで分かれましょ?という掛け声をして、同じものを選んだ人で組みましょうってことです。分かりましたか?」


理解力があるのですぐに分かってくれる。そこはありがたい。


「それでは!グッとパーで分かれましょう!」


結果、私とシュウヤくんとイブキくん。ユアさんとヒナタくんとタクトくんに分かれた。


「各々好きな機械で撮りましょう」


そして、二手に分かれて撮るのを決める。

2人はまだ気まずそうだ。そういう私も気まずい。

どうにかこの空気を変えたいので、早くプリクラを撮ろう。


「どの機械で撮る?」


「こっち」 「あっち」


2人は真逆の機械を指差す。

揉めそうな雰囲気を感じて、両方撮ることにする。


「じゃあ、その2つで撮ろう」


プリクラも電子マネーで支払えるようだが、私はお財布から小銭を出して機械に投入する。モードを選択して、ポーズも適当なプランを選択し、撮影だ。


「この中に入るよ」


2人も一緒に入る。

カバンや羽織っていたアウターをモニターの隣のスペースに置く。

モニターに映るのは2人のイケメンと一般人という奇妙な組み合わせだが、プリ機のナレーションは待ってくれない。


☆まずはハートのポーズ。

私はキメキメの顔と両手でハートを作る。

お金を払えばちゃんと楽しむタイプである。


☆3・2・1 カシャ


☆次のポーズは小顔ポーズ


撮れた写真を見ると、シュウヤが背が高すぎて画角に入っていないし、イブキくんの表情が硬い。


「シュウヤくんはもう少ししゃがんで!

イブキくんはもう少し笑顔で!」


熱血の体育教師みたいなテンションで指示する。


☆3・2・1 カシャ


☆次のポーズはほっぺツンポーズ


最初のポーズよりも表情も良くなってきた。2人も少しはこの空気に慣れてきたようだ。


☆ 3・2・1 カシャ


☆最後はフリー!好きなポーズを取ってね!


「やばい。ポーズ決めてないよ!どうする??」


「何でもいいだろ」


そういってイブキくんは私の右ほっぺをつまむ。いきなり何なんだと思ったが、先程のポーズの応用版だと理解する。

それを見たシュウヤくんは私の左ほっぺをつまむ。


☆ 3・2・1 カシャ


何かもっと良いポーズがあった気がするけど、あともう1回撮るからいいや。


☆ これで撮影は終了だよ!次は落書きブースに行ってね!


「落書きブースに行くよ」


そういって誘導する。

張り切って落書きしようと思ったが、そもそも落書きすることが思い浮かばない。普段プリクラあまり撮らないのでその辺の知識は乏しい。


「落書きすること特にないな」


「まず落書きってなんだ?」


イブキくんが呟く。


「落書きはね、好きなことを書いていいんだよ!

たとえば、好きとかLOVEとかね!

だから友達でも好きとか書くし、恋人同士でも書くんだよ」


2人は納得したようだ。

何にも書いていない状態でとりあえず写真を撮っておく。


「何故画面を撮っているんだ?」


シュウヤくんに聞かれる。


「思い出だよ!こっちの方でも残しておけるようにね」


「そうか」


「私はとりあえず今日の日付だけ書いておくね!2人も好きに書いていいよ」


そして落書きタイムは終了し、プリントシールが印刷される。


完成したプリを見ると、やっぱり2人は加工されてても可愛く映ってるな。私は加工が入ってやっとマシになる。


「2人とも盛れてるね!」


「これが盛れてるということか?」


シュウヤくんはこの前教えたこと覚えているようだ。優秀である。


「そうそう!私、結構マシに映ってるでしょ?」


「いつも可愛いけど、これも可愛いな」


シュウヤくんはナチュラルに褒める。やはり心臓に悪い。


「イブキくんはどう?」


「これが俺なのか?」


「そうだよ!結構良く映ってるね!盛れてるよ」


「そうか。ヒマリが良いって言うなら良い」


こちらは私には従順だな。手懐けた覚えないけど。


「あともう1回撮るんだよね?あっちの方のプリ機で」


2人は頷き、もうひとつのプリ機にもお金を投入する。

適当に画面をポチポチして、いざ撮影。

2人も慣れてきたのか、画角に入るために距離感が先程よりも近い。この距離で話したりすることなんてないから、少しドキマギしてしまう。


☆まずは顔ハートを作ってね


こっちは顔ハートか。私はほっぺの横にハートを作る。

2人も私のポーズを見て作る。


☆3・2・1 カシャ


☆次はピース


シンプルなピース。アイドルみたいに顔の横にピースしておく。


☆3・2・1 カシャ


☆次はハグして


「え!?ハグ!?」


思わず口に出ていた。友達間でもハグしたことないぞ。いや、イブキくんにこの前ハグされたわ。

どうしよう。


「この指示は無視しよう」


「いや、ハグしよう」 「ダメだ」


2人は私をハグする気満々だ。

どうしよう。ハグされないように仁王立ちをする。


☆3・2・1 カシャ


ハグしてる人と真ん中に仁王立ちする人のなんだかカオスな写真になっている。


☆最後は自由にポーズを取ってね


「ねえ、憧れてたポーズやっていい?」


「もちろん」 「いいよ」


私が憧れていたポーズとは両手に花だ。

私の手の上に顎を置いて貰うという至ってシンプルだが、このプリ機の異空間な雰囲気でやれる気がしてきた。


「それじゃあ、まず2人は屈んで。次に私の手の上に顎を乗せて。終わり」


とりあえず2人は私の指示に従って、私の手の上に顎を乗せてくれた。


☆3・2・1 カシャ


☆これで撮影は終了だよ!隣の落書きブースに移動してね!


「最後のポーズは何なんだ?」


シュウヤくんに聞かれて私は自信満々に答える。


「え?両手に花ってポーズ。名前は私が考えたんだけど、イケメン二人を手の上に乗せるなんて夢じゃない?

今この空間でしか出来ないことがしたくてね!2人とも手伝ってくれてありがとう」


2人とも何故か照れていた。オタクの願望に付き合わせて悪いなと思ったが、彼らは嫌がるどころかまんざらでもなさそうなので、安心する。

とりあえず落書きブースに行き、先ほどと同じように日付だけ入れて、シールが印刷された。人数分に割って、印刷された写真を確認する。もちろん、仁王立ちとハグポーズは選択していない。あんなもの世に残ってしまったら本当に黒歴史になってしまうから。


「こっちの方がめっちゃ盛れてる!最高じゃん!」


2人にも印刷されたプリクラを渡す。

2人は奇妙そうに写真を見ている。まあ加工しなくてもイケメンだと、逆におかしく見えるのかな。


「撮り終わったから、3人と合流しよう」


3人を探しながらゲームセンターを練り歩くと入口付近にいた。ユアさんはまたクレーンゲームに挑戦していた様子だった。また取れていなかったけれど。

合流し、ヒナタくんを見ると別のお菓子もゲットしていた。


外に出ると夕日が建物や私たちを照らしていた。もう少ししたら暗くなりそうだ。そんなにゲームセンターにいたのかと驚く。想像していたよりもみんなが楽しんでくれてよかった。


帰りは渋谷駅付近に向かう。

歩きながらユアさんたちが撮ったプリを見せて貰う。ユアさんが可愛すぎて無双していた。もちろん、ヒナタくんとタクトくんも盛れてる。


「ユアさんマジでめっちゃ可愛すぎますね!!鬼盛れてます!」


私は彼女に興奮気味に伝える。


「そう?ありがとう!!

あと、鬼盛れてるとはどういう意味?」


「鬼はマジでとか本当にという意味で、盛れてるは凄く可愛いだったり、美しく映ってることですよ!褒めてます!!」


早口で語ってしまう。この癖やめたい。


「そうかしら!とても嬉しいわ!」


「ヒマリさんのはどんな感じなの?」


私のも恥ずかしいが見せる。


「凄く良く撮れているじゃない!鬼盛れてるわよ」


ユアさんがその言葉使うとやや違和感があるが、可愛いので何でもいい。


「ありがとうございます!でも、ユアさんの方がマジで可愛いんで!!」


「あら、ワタクシのこと褒めても何にも出ないわよ」


「可愛い子を褒めるのって私にとって息を吸うことと一緒なので、何回でも言いますよ?」


ノリとはいえ、よくわからないイケメンセリフを言ってしまい、少し恥ずかしい。


「あら、嬉しいわ!これからもたくさんワタクシを褒めていいわよ」


「ありがとうございます!」


褒めることの許可を得た。

後ろで私たちのやり取りを見ている男子たちは私の事を変な奴だと思っているだろう。本当にそうだけど。


無事に渋谷駅付近の壁にたどり着き、目立たないように急ぐ。壁にドアノブがあるイメージをして掴むんで捻る。

すると、扉が浮き出てくる。その扉を通り、元の世界に戻る。


「おかえり、みんな」


校長が私たちを出迎えてくれる。


「5班、遅いぞ。17時ピッタリじゃないか」


先生に注意される。


「まあまあギリギリ間に合っているんだし、いいでしょう」


おじさんナイスフォロー!リュウ先生は少し怒り気味だから何とか見逃してくれる。


「次から気をつけるように」


「はい」


教室に戻るとみんないつもより楽しそうにしていた。

斜め前の席のナルミさんに話しかけられる。


「5班はどこに行ったの?」


「私たちはカフェでお昼ご飯食べて、最後はゲーセンでプリ撮ったよ」


「プリって何??」


「プリントシール!これだよ」


そういって先程撮ったプリクラを見せる。


「うわー!凄い!!初めて見た!こんなものがシブヤにあるんだ!」


「渋谷以外にもどこにでもゲームセンターがあれば置いてあるよ!」


「そうなの!?次の校外学習の時、一緒に撮ろうよ!」


「いいよ!一緒のグループになったら撮ろう」


「やったー!ありがとう」


そして先生が教室に戻って、解散と言われ、放課後となる。


みんな帰るのが早いというか二次会みたいなのに行くようだ。

みんな元気だなとお婆さんみたいなことを思って、クラスのみんなを眺める。

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