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第15話 校外学習 その1


スマホのアラームが部屋中に鳴り響き、スマホに表示されている時刻を見る。現在時刻は8時30分。

やばい。遅刻した。遅刻の言い訳を考えようと思ったが、今日は校外学習だったことを思い出す。


そういえば、9時集合だった。物凄く焦った。少し気を抜く。

いつもよりも遅く登校出来るので、昨夜ちょっと夜更かしをしてしまった。余裕だと思っていたが、ギリギリで起きてしまう。


時間は待ってくれない。32分になった。あと28分しかない。いや、28分もある。

こういう時はポジティブポジティブ。


とりあえず歯磨きと洗顔をし、ハンガーにかけてある制服に着替える。

とりあえず最悪スマホがあれば何とかなる!と思い、カバンを持ってレッツゴー!!


壁にかけてある時計を見ると、8時47分。まだ余裕である。


いや、待てよ。なんだかおかしい気がする。

この違和感は一体……?


起きてから17分ほどしか経っていない頭をフル回転させる。


ーーあ、今日制服じゃなくて私服じゃない!?


おいおい着替え直さないといけないじゃん。全く余裕がないぜ!!焦りすぎて変な口調になるが、ふざけている場合ではない。本気で遅刻する時間になってきた。


大急ぎでクローゼットから私服を取り出し着替えて、寮から学校まで爆走する。


◇◆◇


息を荒らげながら、なんとか集合時間の2分前に教室にたどり着く。教室は3階にあるので、全力で階段を上がるのは体力のない私にとって地獄である。

もちろんだが、私が最後だったようだ。みんな着席している。

イブキくんはいつものように挨拶をしてくれる。


「おはよう、ヒマリ。大丈夫?」


なかなか息が整わず、すぐに返事が出来ない。深呼吸をし、息を整える。ようやく話せる。


「おはよう、イブキくん!元気だよ」


「それはよかった。あと、寝癖がついてるよ」


彼は微笑みながら私の頭を指さす。

そう言われて、スマホの反射を鏡代わりにすると、本当だ。前髪の右サイドがぴょんと、はねている。カバンのポケットに入っていた櫛で梳かすが全然直らない。諦める。


しかもよく見たら、このスマホこの世界用じゃなくて、人間界のスマホだし、やらかした。

最悪な気分になっている私に関係なく、先生はいつも通り時間ピッタリに教室に入ってきた。


「おはよう。今日は校外学習の日だ。


必ずグループごとで動くように。

そして今日は、特別にそのスマートフォンは人間界でも動くように校長が設定をしてくれたため、使えるようになっている。

また資金に関しても、校外学習費として、1人3,000ポイントが支給されている。人間界に行っても、このスマホで電子決済できるように校長がまた設定してくれているので、お金に関しては安心してほしい。


何か分からなかったり、困ったことがあったらすぐに連絡してくれ。連絡事項は以上だ。


今から体育館へ向かう。整列しろ」


先生に指示され、みんなは一斉にカバンを持って並ぶ。

待ってくれ。あのスマホが無いとお金の支払いも出来ない。やばい。このカバンにお財布が入ってなかったか、確かめる。

無事に財布を見つける。肝心の中身を見ると、6000円ほど入っていた。奇跡だ。

前回、凛ちゃんと遊びに行った時にお母さんが1万円札を渡してくれていて、その残りのお金が入っていたのだ。母親に感謝だ。

これで安心して校外学習を楽しめる。


急いで教室に入ってきたからあまり周囲を見ていなかったが、みんなの私服を初めて見るな。割と印象通りの服装をしている人や、ちょっと変わったファッションをしている人もいるが、似合っているので凄いなと感心する。

ヴァンパイア族の人はみんな生地が一級品の高そうな洋服を着ている。流石は貴族なだけある。ユアさんは黒で段のフリルの入ったワンピースで胸元にも赤色のリボンが結ばれていて、可愛いお嬢様スタイルだ。

シュウヤくんはスタイリッシュなグレーのセットアップで、ヒナタくんはちょっとやんちゃな今どきっぽい感じで、タクトくんはシンプル服装だが、スタイルがいいので絵になる。イブキくんもシンプルに黒一式だが、そういう服装の人は好きである。

こんな美男美女集団が渋谷を歩いていたらスカウトされてしまうのでは?という、いらない妄想をしてしまう。


体育館に着くと、校長と真ん中に扉のようなものが立っている。

まるで○○ドアみたいじゃないか。こんなものまで作り出せるのか。魔法って凄い。


「おはよう、みんな。

今日は思う存分、校外学習を楽しんできて欲しい。


この扉を通るとすぐにシブヤに繋がっているので、注意してね。


時間は17時までにグループみんなで必ず帰ってくること。いいかな?」


みんな一斉に返事をし、1〜5班の順番で通っていく。私たちのグループは5番なので最後だ。

1人1人通っていくので、少し時間がかかりそう。

さっきから寝癖が気になって仕方がない。寝癖がついているところが気になって、ずっと触っている。

早くトイレに行って水で濡らして直したいな。


「ヒマリ、さっきからずっと髪の毛を触って、どうしたんだ?」


シュウヤくんが私の変な行動に気がつく。


「寝癖がついてるのが、ずっと気になっちゃって」


すると、ユアさんも会話に混ざってくる。


「ヒマリさん、今日慌てて教室に入ってきたものね」


ユアさんたちにも、朝の様子を見られていたようだ。恥ずかしくなってきた。


「お恥ずかしい話、いつもより起きる時間が遅くて、急いで部屋を出てきたので、寝癖がついていることにすら気が付きませんでした」


「あら、そうだったのね!ヒマリさんもそういうことがあるのね!

ワタクシは逆に楽しみすぎて、全く眠れませんでしたわ」


遠足を楽しみにして眠れない小学生みたいで可愛いな。


「だからワタクシもヒマリさんと似ていますわよ!

本当に楽しみだったんだから」


いつもよりも数倍、キラキラ輝く笑顔がとても眩しかった。

そう思っているとついに順番が回ってきて、扉を通る。


すると、目の前には209が中心となって建物が軒並みに並ぶ、あの有名な交差点の前に出る。


街は人や音で溢れかえっている。

車のエンジン音や救急車やパトカーの音、人々の話し声や笑い声、建物に飾られたモニターに映し出される映像。そして、色鮮やかに描かれた広告。こんなにも渋谷は賑やかな街だったことを実感する。

今日は天気も良くて、穏やかに晴れている。太陽が本気を出して、少し暑いぐらいだ。


隣にいるみんなの顔を見ると、目を輝かせて渋谷の街を見つめている。そういえば、初めて来たんだよね。私も初めて来た時は同じような顔をしていたと思う。特にユアさんの表情はとても印象的だ。珍しく口を開いて、笑っている。本当に感激している表情だ。


信号が青になると、信号機からピコンピコンと連続して音が鳴り、歩行人は歩き始める。

一斉に人が動き出して、みんなは驚いているようだ。

私が先導するしかないか。


「みんなこっちに行こう」


そういって、とりあえず209の方へ向かう。


今日も人が多すぎて本当に迷子になりそうだ。

そう思ってみんなが後ろについて来ているかを確認するといない。もう迷ってしまったようだ。


そういう時のスマホだと思い、連絡先を見ると、ない。まず、学校のアプリすらない。

これ、間違えてもらってきたスマホだった。


終わった。

とりあえず道の邪魔にならないように端っこで途方に暮れよう。


渋谷に来て約1分で迷子になるなんてアホすぎる。そう遠くは離れていないだろうから、早くみんなを探さなきゃいけないが、どうやって探すんだ。

大きな声で叫びながら探すのもいいが、周囲が音で溢れているから遠くまで届かないだろうし、この歳で迷子センターに行くのも恥ずかしくてダサいし、かといってスマホの連絡先も分からないし、どうしよう。ただ焦ることしか出来ない。焦っている間にも人の波に流されて209を通りすぎてしまう。


とりあえず、立ち止まれそうなところを探し、何か手段は無いかと考えるが全く思い浮かばない。朝ごはんを食べ忘れているから、空腹と焦りで脳みそはストップしている。

絶望していると、凛ちゃんらしき人が歩いているのが見えた。スマホで拡大機能を使いみると、凛ちゃんだ。

グッドタイミングすぎて女神に見えてきた。


私は彼女を見失わないように、急いで人の波を上手く避けながら彼女の元へ向かう。


平日なのに何故ここにいるんだろう。

そう疑問に思いながら、唯一の希望である友達の凛ちゃんに近づく。

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