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第14話 シュウヤ応援委員会


よし!シュウヤくんの恋を応援しよう!!

まずはシュウヤくんのことをもっと知る必要がある。


カフェから出ると、日は傾き、暗闇が世界を覆うように広がっている。外の街灯も夜道を照らし始めており、シュウヤくんは彼らに帰るように指示をする。


「ヒナタとタクトは2人で帰ってくれ。


俺はヒマリを送っていく」


「りょーかい!」 「またね!」


2人はそう言って、仲良く帰っていった。


私にはチャンス到来。ここでシュウヤくんのことを知れれば、ユイトくんと仲直りをするヒントが得られるかもしれない。


「俺たちも帰るか」


そう言って彼は歩き出す。私もそれについていく。


「前にも聞いたけど、シュウヤくんの好きなことって本当に無いの?」


シュウヤくんは他者にはとても優しいが、自分には厳しい性格をしている。彼にも何か好きなことは無いのかと改めて気になった。


「あの質問をされてから、俺は考えてみたんだ。


俺の好きなことはユアやヒナタ、タクト、ユイト、そしてヒマリだ。

みんなと話す時間が楽しいと思った。


これが答えじゃダメか?」


彼の誠実さが出た回答だ。

シュウヤが良い奴すぎて彼氏にしたいという夢女心が出てくるが、それを抑える。


「とっても素敵だと思う!!


友達が大事って言えるのは凄く良い!!


しかも、私のことも友達だと思っていてくれて嬉しいよ!ありがとう!!」


感謝を述べると、普段からクールな顔から珍しく照れて笑っている。


「そう言って貰えて俺も嬉しい。やはり、最初にヒマリに話してよかった」


優しい声で言われて私もたまらなくにやけてしまう。こんなにストレートに喜んで貰える機会はあまりないので、顔が熱くなる。


「それじゃあ、私たち友達記念ということで、まず握手しよう!」


私は歩みを止めて、彼に向かって右手を出す。


「わかった」


そう言って彼の右手は私の右手を握って振る。

めっちゃ男の人の手って感じで、温かくて結構ゴツゴツしているんだなとか初めて男の子の手を握った。


「ヒマリの手が冷えているが、大丈夫か?」


私の手を優しく撫でる。


「私冷え性なだけだから!!いつも冷たいよ!」


そう言って手を離す。

彼は心配そうに私を見る。


「だから大丈夫だってば!行こう?」


私は歩き出す。彼も渋々歩き出した。

やはり、シュウヤくんはめっちゃ背が高いな。私は156cm程度の低身長な方なので、彼の背が高すぎて目線は上手く合わない。たぶん、180cm近くはあると思う。


「ヒマリ、先程言っていた友達記念とは具体的には何をするんだ?」


何か考えながら歩いていると思ったら、そこに引っかかっていたんだ。


「友達記念でやることはそれぞれ違うんだけど、私の場合は握手して一緒にご飯食べたり、写真を撮るかな!めっちゃベタだけどね!」


「なるほど。そうなると、ここで出来るのは写真を撮るということか?」


「そうだね!じゃあ、写真撮ろうか」


私は制服のジャケットのポケットからスマホを出す。周りに歩いている人達はいるので、街灯側により、通行人の邪魔にならないようにする。


「この世界のカメラアプリ、ノーマルしかないから加工出来なくて盛れないのしんどいな」


「盛れないとはどういう意味だ?」


私は独り言のように呟いたつもりが、心の声が漏れていた。


「あ〜、要は可愛く映らないってことだよ」


「ヒマリは今のままで十分可愛いぞ」


シンプルな褒め言葉が心にぶっ刺さる。顔が良いだけでなく、中身までイケメンなのは反則だ。


「いや!!そんなことないよ!お世辞言ってくれてありがとう」


彼は私の言葉に不思議にそうにしているが、私はカメラの画角に夢中になる。


あまり自撮りをしないのと、腕が短くてなかなか撮る角度が決まらない。

この様子にしびれを切らしたのか、彼は「スマホ、借りるぞ?」と言って、私のスマホは彼の手に渡る。

そして、長い腕で私を包みこむ。


「この画角はどうか?」


いつもより彼の声が近く聞こえる。

距離が近いのとカップルポーズみたいで恥ずかしくて早く終われと思い、「これでいいよ」と適当に返事する。

そして撮影は終了する。


「さっきの写真、俺の方にも送ってくれ」


「もちろん」


すぐに彼にもこの写真を送る。

彼は送った写真を大事そうに見ている。そんなに写真って大切なものかと聞きたくなるが、野暮なのでやめておく。


この写真をユアさんに見られたら怒られるんじゃない。そもそもこれを見たら、みんな私たち付き合ってる?って勘違いするんじゃない?

そう思われそうなぐらい親しげに映っている。

最早消したくなってきた。黒歴史だ。


私は全く盛れてないが、ノーマルでシュウヤくんはカッコよくてホントにイケメンって羨ましい。ルッキズムも発動して余計にしんどい。


はあーとドデカいため息を吐く。


「ヒマリ、どうした?」


「あ、ごめん。私が悪いの」


「何が悪いんだ?」


「自分自身の偏見やルッキズムに囚われて悲しみに暮れているだけだから。シュウヤくんは気にしなくていいの。むしろそのままでいてほしい」


「ああ?わかった?」


早口でオタク構文を並べて話す私。彼はまた奇妙なものを見るように私を見つめる。その視線は無視する。彼に説明してもおそらく通じないだろう。これは日陰者ではないと分からないものだから。


少し憂鬱な気分で歩き出すと、私の足が上がっていなかったのか、何にもない所で躓く(つまず)。膝を擦りむいたようだ。少し血も出ている。こういう傷は地味に痛い。


「大丈夫か?」


「大丈夫だよ!」


血を拭けるものを探す。

ハンカチは今日に限って持ってくるのを忘れていたので、ティッシュをカバンに入っていたことを思い出し、カバンのポケットを漁る。


シュウヤくんは私の転んだ膝に顔を近づかせペロリを舐めた。


……え?

私は彼のことを一瞬ひいてしまう。


そういえば吸血鬼だったわ。血があったら気になるものね。

いやそんな呑気なことを言ってる場合じゃない。


「汚いからやめな?」


私は小さい子に注意をするように言葉をかける。

だが、彼は私の血を1滴足りとも落とさないように丁寧舐めていた。

血が無くなると、牙を立てようとしていた。

流石に牙を立てられるのは恐ろしいので、彼の顔にビンタをする。


「シュウヤ!何をするの!!」


身の危険を感じて、大きな声を出す。

ビンタした手は痛かった。彼の頬にも私の手と同じように頬が赤くなっていた。


彼はビンタされて理性が戻ったのか、子犬みたいに収縮しているように見える。


「すまない。ヒマリの血が美味しすぎて、制御がきかなくなってしまった。本当にすまない」


土下座する勢いで謝罪してきたので、流石にこちらが申し訳なくなってきたので許す。


「頭を上げて。もう二度とこんなことはしないでね」


「ヒマリ、ありがとう」


そう言って女子寮までは無言のままたどり着く。


「送ってくれてありがとう。またね」


「ああ」


私はすぐにその場から逃げるように寮に入り、爆速で部屋に向かう。


ドアを閉めて、その場で力が抜けて座る。1人の空間になってようやく感情を出せる。


え?血を飲んでいたときのシュウヤくんマジで色気セクシー兄さんすぎてやばかったんだが。あれは公共の場所では見せてはいけないやつよ。


運良く周りには誰もいなかったし、辺りは夕方で暗かったので見えずらかったとはいえ、血を吸うってそんなに夢中になることなんだな。

私の足じゃなければもっと嬉しかっただろうに。何で私の足だったんだよ。美しい足の方が美味しそうだよな。


あと、牙を初めて目の前で見たがかなり鋭利だったな。注射針よりも太くて、噛まれたらきちんと跡がつきそうだった。そもそも注射苦手だから、反射でビンタしてしまったが。

彼の頬が赤く腫れていたな。謝罪し忘れたけど。正当防衛だから許してくれ。


まあともかくシュウヤくんとは少し仲良くなれた気もするし、イブキくんの言っていた通り、警戒もしなきゃいけなくなってしまった。


ふと、さっき撮った写真を見返したくなり、スマホを見る。

シュウヤくんを拡大して見ても全然毛穴見えないし、肌が綺麗すぎる。

補正かかってるだろと思うレベルで整いすぎ。本当に凄い。


てか、ヴァンパイア族ってみんな綺麗じゃない?

みんなの顔を思い出すと、ユアさんもシュウヤくんもヒナタくんもタクトくんもイブキくんもさ、みんな美男美女集団なんだよ。何でそんな人たちと仲良くなれたんだよ。

やっぱり自分だけ場違いすぎる。


はあー、整形するしかないのか。整形するお金もないし、そもそもここ異世界だし。どうしよ。そもそも整形出来る程の金もないし、手術する勇気も出ないのでやる予定はないけれど。

そんな憂鬱な状態のままやることをやって寝る。


そして、あっという間に校外学習の日を迎える。


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