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第10話 イブキ・ユイト


今日は金曜日なので週末は休みである。

この前、おじさんに週末だけ人間界に帰りたいと話したらOKを貰い、帰れることになった。意外にもあっさりと許可を貰えたので驚いた。


いきなりこの世界に来てから3週間。家が恋しく感じていたので、帰ることがとても楽しみだった。


今日の放課後はユイトくんと図書室で談話する日。本来図書室は談話するべき所ではないが、談話スペースみたいなところがあるのでそこで話している。


「ヒマリ、今日はいつもより嬉しそうにしているけど、何か良いことあった?」


彼にそう指摘され、そんなに顔に出ていることに驚いた。


「え?そんなに分かりやすい?」


「ああ、物凄く顔に出てたよ」


「え〜、恥ずいな」


「恥ずいとは?」


「あ、恥ずかしいってことだよ!省略語」


「なるほど。聞いたことがなかったけど、僕も使ってみようかな」


「いやいや、普通に恥ずかしいって言った方がいいよ」


「僕もヒマリと同じ言葉を使いたいんだ」


そういうことを私以外には言わない方がいい。勘違いしてしまうから。私は少女漫画を読み漁っているからある程度免疫はある。


「ねえねえ、前から気になっていたんだけどさ、イブキくんって女の子からモテたりしない?」


「え!?どうして?」


明らかに動揺しており、やっぱりモテるんだと実感する。


「だって、イブキくんも顔が整ってるじゃん??

今からでもアイドルだってモデルになれそうなぐらい顔が良いじゃん!?それで、クラスでは素っ気ない一匹狼タイプで裏では優しい僕っ子とかもうそれは尊いのよ。最高すぎるギャップだから、昔から女の子にモテているのかなと思った」


彼は私の早口とオタク言葉に困惑していた。


「途中早口で何を言っていたのかよく分からなかったけど、僕のこと褒めてくれているで合っているよね?」


ついオタク特有の喋りをして、彼に伝わっておらず、悲しくなった。やめようと思ってやめられればいいのだが、オタクなので難しい。


「もちろん!!褒めてる!!そういうところ好きってこと」


「す……き……?」


「イエス!好き!」


興奮気味に話していたのでアメリカ人みたいなテンションで言ってしまった。

反省しながらイブキくんの顔を見ると、いつもクールな顔が真っ赤になって、顔を隠すように俯いていた。めっちゃ可愛いことするじゃんと思い、私はいたずらをするように彼の顔を覗こうとする。


「見るな」


「何でそんなに顔赤くなっているの?」


「軽々しく好きとか言うな」


可愛い。ツンデレの子みたいなこと言っていて可愛い。私の中の好きの重さは割とライトめだ。


「好き=良いじゃない?」


そう彼に話してみるが、納得していないように首を横に振った。


「もしかして他の者にもこんなこと言っていないか?」


「言ったような言ってないような」


身に覚えはちょっとある。


「はあー。ヒマリは人たらしだな」


そんなこと誰にも言われたことがない。

彼の言葉を全力で否定する。


「そんなことない!!

イブキくんがカッコイイから仕方がないんだ!!顔の良い人にカッコイイって言える権利があるんだから、これからもたくさん言っていくからね!覚悟してて!!」


開き直ったあげく、勢いでイブキくんに宣戦布告してしまった。

彼は私の熱弁に呆れてたのか、「わかったよ」と降参気味で話した。

この話のままだとなんだか気まずいので、話を変える。


「イブキくんってさ、人間界に行ったことはある?」


「そういうヒマリこそあるような言い方してるけど、あるの?」


質問返しされてしまったし、確かに行ったことはあるというか住んでいたのだが、その指摘は正しいので誤魔化す。


「なーに言ってるの?

行ったことある訳ないじゃん!!だから行くの凄く楽しみなんだよね!」


彼は私の言葉に嘘が無いか見極めているように見えた。


「そうか、僕ももちろんないよ。

だから、シブヤに行けることを楽しみにしている」


何とか見逃して貰えたし、彼も渋谷に行くのは初めてのようだ。


「イブキくんって人間界で行ってみたいところはないの?」


「僕の行きたいところ?」


「そうそう!授業の時はないって言ってたけど、本当はどうなのかなって!

例えば、渋谷の2択でもう1つの候補に出てた京都とかさ?」


「行きたいところと言われても、そもそも僕はこの学校に来れただけで十分なんだ。だからこれ以上望んだらいけないんだ」


彼は切なげにそう話した。

なんだか闇が深そうなので、これ以上の深堀りするのはやめておこう。


「シブヤだと有名なのってクレープだよね!

だけど、流行してる最先端のスイーツも食べたいし、何にするか迷っちゃうね!」


「食べ物の話してるときはいつも楽しそうに話すよね」


「うん!食べること好きだからね!

でも気をつけないと、食べ過ぎて太っちゃうから嫌なの」


「ヒマリは少しぐらい太っても可愛いと思うけど?」


太っても可愛いなんて有り得ない。そんなことすらっと言えるな。本当にモテ男の素質ある。


「いやいや、私みたいに平凡なモブキャラは太ったらいじめられるから今のままをキープしておきたいの」


スクールカースト下位の者は目立たず、普通を目指さないと学校生活を平凡に過ごすのは難しい。今の私はもはや平凡な学校生活は送れないけれど。


「ヒマリがいじめられるなんてそんなことある訳ないだろう」


さらっとまた良い事を言ってくれる。私の彼への好感度はググッと上がる。


「ありがとう!そう言ってくれて嬉しいよ!」


「何か困ったことがあったら言ってほしい」


「了解!」


「そういえば、お昼ヴァンパイア族と食べてたらしいが大丈夫か?」


「うん!全然問題ないよ」


「よく信用出来るな」


あからさまに顔を険しくした。


「え?だって、話してみたけど悪い人って感じ全然しないよ?」


「アイツら人間の血を吸わないと生きていけないんだ」


「そうなの!?」


衝撃事実。やっぱり人間の血はちゃんと摂取しないといけないんだ。

じゃあ、あの時のトマトジュースはもしや血の混じったジュースなのか。よく分からないけど、もしそうならちょっと怖い。


「ヒマリが人間の血が混ざっているから気に入られているだけかもしれない」


その可能性もあるが、それだけで彼女たちのことは判断したくはない。


「最初はそれで気になったのかもしれないけど、話してみた感じそこまで悪い人には見えないけどな」


「ヒマリはヴァンパイア族の恐ろしさを知らないからそう言えるんだ」


彼はイライラしていた。とりあえず、彼の怒りを抑えようと、和解案を話す。


「それじゃあ、今度一緒にお昼ご飯食べよ?ヴァンパイア族のみんなと」


「嫌だ」


彼は私の言葉を遮って拒絶した。


「何で??」


「僕はヴァンパイア族が苦手なんだ」


本気で嫌がっている様子なので、流石に強制は出来ない。


「そっか。じゃあ、また誘われたら私は一緒に食べるけど文句言わないでね」


「分かった。でも変なことを言ったり信用はし過ぎないで」


「肝に銘じておくよ!もうこんな時間だね!そろそろ帰ろ〜!」


「そうだね。寮の前まで送って行くよ」


「いやいいよ!噂されちゃうし」


「この前、シュウヤには寮の前まで送らせていたのに?」


(え、何で知ってるの!?別に隠すようなことじゃないけど)


浮気現場を見られたような気持ちになった。


「ユアさんがシュウヤくんに私を送るようにお願いしてただけだから何にもないよ」


「分かってるよ。でも、心配だから僕にも送らせてよ」


「わかった。お願いします」


2人で女子寮へ向かうことになった。


「何でシュウヤくんと帰ってたこと知ってるの?」


「偶然、2人で帰ってるところを見かけたんだ」


彼は私と目を合わせない。本当なのだろうかと疑わしいが、彼の言葉を受け入れる。


「そうだったんだ。でも、女子寮の前までついてきてないよね?」


「当然だよ。他の女子が言ってたんだ。ヒマリがシュウヤに送られているところを見たって。

そもそも、その日はユアに連れて行かれてるところをクラスのみんな目撃してるからそこまで不思議じゃなかったけどな」


私を疑った子に怒っているのか、機嫌が悪そうだ。


「イブキくんは何で怒ってるの?」


「なんでもない」


「そう?」


この険悪な雰囲気から抜け出したいと思っていたら、シュウヤくんを見かける。中庭から男子寮に帰るところだろう。噂をするとその人が現れると言うが本当なんだ。

彼に話しかけようとすると、イブキくんに手を掴まれる。


「シュウヤのところに行くな」


イブキくんは声を荒らげる。


「何で?」


すると、私たちの話し声が聞こえたのかシュウヤくんが気が付いて、私たちの方に近づいてくる。


「シュウヤくん、今帰り?」


「そうだ。そちらも今帰りなのか?」


「そうだよ。イブキ、ユイトくんに送って貰ってるところ」


「そうか。こんな時間まで何をしていたんだ?」


「お前には関係ない話だ」


そう言ってイブキくんは会話を遮断させた。


「ユイト、話したいことがある」


切迫とした空気になる。この2人の間には何かあったような雰囲気だ。私がここにはいてはならない気がする。


「俺はシュウヤと話すことはない。

ーーほら、ヒマリ行くぞ」


イブキくんに強く手を握られて足早にこの場を去る。私はシュウヤくんに「またね」と言って、イブキくんに連れられる。

女子寮の前に着くと、イブキくんは悲しそうな顔をしていた。


「ヒマリ、ごめん」


「ううん。むしろごめん!

私、イブキくんがシュウヤくんと仲良くないことを知らなかったの。本当にごめんなさい」


全力で謝罪する。


「いいや、僕が悪いんだ。だからヒマリは謝らないで。


それじゃあまた来週ね」


彼はすぐに背を向けて帰ってしまった。


私は自室に戻ってからも、申し訳ないことしてしまったと後悔している。

ただ後悔していても意味がないので、他のことを考えてみる。


今日のシュウヤくんとの会話を聞いて、イブキくんはヴァンパイア族説を唱える。


①イブキくんは苗字を持っている。

普通は苗字があるのはおかしいというか位が高くないと与えられていないらしいので、苗字があるのはおかしい。


②先程シュウヤくんと昔何かあったことを察するに、関わったことが過去にあるということはヴァンパイア族の可能性がある。


これは新事実であるため、まだ確証はないが、彼の正体を教えてくれていないのも、ここに何かあると思う。


③イブキくんも人間の血が混ざった混血種の可能性がある。

ヴァンパイアは確か、純血種から血を吸われるとヴァンパイアになるという作品を見たことがある。この世界にもそういう人がいてもおかしくない。だけど、もしそれが周囲にバレてしまっているのなら相当大変な人生を送ってきたのではないだろうか。


以下の3つにおいて、彼がヴァンパイア族であるかもなと思いました。


だが、彼はヴァンパイア族特有の銀髪の髪と赤い瞳はしていない。髪の毛は黒髪だし、紫色の瞳だったのでヴァンパイア族ではないと思う。カラコンや染めている可能性もゼロではないけれど。

まあ確定ではないし、仮にそうだったとしても私には関係ないことだ。彼の口から話してくれるまで待つのが1番だ。


すぐ妄想してしまう癖やめたいな。

間違えてたら恥ずかしいし、こんなこと考えている暇があるのなら勉強しろって怒られる。だが、妄想は楽しいのでしょうがないよね。


時計を見ると、19時だ。校長室に行かないと。

校長と約束の時間は19時30分。


私服に着替えてみんなに見つからないように小さめのカバンを持って出かける。


クラスの人に見つからずに何とか女子寮を出れた。とりあえず、女子寮と中庭を抜けてB棟にある校長室へ。


中庭を歩いていると、先程分かれたはずのイブキくんが中庭のベンチに腰かけていた。

先程のことを悩んでいるのだろうか。

でもこちらも彼に構っている暇はない。

彼を視界に入れないよう、足音を立てずに歩いて行く。


もう少しで中庭を抜けられると思ったところでイブキくんに話しかけられた。


「ヒマリどこに行くんだ?」


「え?さっき図書室に忘れ物してたことに気が付いてさ、急いで取りに行こうかと思って!」


咄嗟に嘘をついてしまう。


「それなら一緒に着いていくよ」


「いやいいよ!すぐに終わるし、わざわざ付き合って貰うのは申し訳ないので、遠慮します」


「いや、心配だから」


「大丈夫!!

じゃあ、私急いでるからまたね!」


そう言ってイブキから逃げるように早歩きでその場を切り抜けて、校長室に着く。


ノックをし、おじさんの声が聞こえて入る。


「失礼します」


「待っていたよ。早速だけど、他の誰かに見られてはいけないので今すぐに君を元世界に戻そう。


この鏡の前に立ってくれ。魔法をかけるから」


そう言われて鏡の前に立つ。


「日曜日の20時までに君の部屋にある鏡で呼びかけて欲しい。20時以降だと僕がこの部屋にいるのはおかしいと思われるのでね」


「分かりました!それではお願いします」


鏡に魔法をかけると、最初に出会ったダークホールみたいなものが鏡の中に出来ていた。


「ここを通れば君の家の玄関前に着くはずだ。

久しぶりに家族と話すといい。お父さんにもよろしく伝えてるおいてね」


「ありがとうございます」


私は鏡の中に飛び込む。

目を開けると我が家の玄関があった。

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