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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

永遠の愛を手に入れる方法/怪物の糸

後書きに歌詞を記載しておりますが、以下の事項へのご理解をよろしくお願いします。

・歌詞の著作権は私の所属する「十六夜音楽隊」に所在しております。

・「十六夜音楽隊」は「小説家になろう」において私(紅榴るな)が歌詞を使用することを総意として認めております。

視界がぼんやりと霞む中、僕はいつ筈もない誰かの視線を感じた。少しずつ焦点が合ってくると、そこには"君"がいた。僕のベッドのそばに座り、じっとこちらを見つめていた。


「どうしたんだ…?」


声が(かす)れていた。


「家の前で倒れていたから、ベッドに運んできたの。」


君は優しく微笑んで答えた。その微笑みは、まるで本物のようだった。君の手の温もりが、記憶のそれと全く同じだったことに、驚きと、恐怖と、安心感を得た。


どうやら、人間の持つ"感覚"は、人間の持つ"感情"は、どう足掻(あが)いてもこの類の事象を都合よく誤解するように出来ているらしい。


僕は戸惑いながらも、君の言葉を信じるしかなかった。君の姿は、その存在に対して抗うことを誰にも許さないような風格を帯びていた。それでいて生々しかった。




その日の午後、彼は友人との会食を思い出した。遠方に住む友人が数日間この街にいるとのことで、夕食を外で食べるつもりだった。迎えにいく間際、君が玄関先で見送ってくれた。その姿が目にフィルムの様に焼き付いていた。


レストランに到着すると、友人はすでに待っていた。彼は少し憔悴した様子で、心配そうに僕を見つめた。


「疲れてるのか?」友人は眉をひそめた。


「あの日から、どうも変わってしまった。無理はするなよ。」

「無理なんてしてないさ。昔からそうじゃないか?」

「正気か?君のその目に、生気(せいき)がてんでないのだよ。」

「あははっ。そうかもしれないな。」


僕はため息混じりに笑って答えた。言葉を濁してはいるが、彼の気遣いには本当に感謝している。


ーーいっそ彼に自分の心の重荷を打ち明けられたら…。


だが、どうしても言葉が出なかった。友人は深い皺を刻んでいた。




そんなこんなで、いつの間にか酔っていたらしい。しかし、あの後の会話の記憶が一切ない。酔いというものは思ったより早く醒めるものらしい。家路の途中に醒め、友人と別れて1人で歩いていたことに気がついた。


何事もなく家にたどり着いた。君が出迎えた。その瞳は、僕を見つめて離さない。君の存在に対する魅了が混じり合う奇妙な感覚を抱いていた。


「君は…」


なぜ外に出てきているのか…?そう問い詰めようとしたが、それ以上の言葉は出なかった。君の微笑みが、何も言わせまいとしていた。


君は指を弾き、閑散とした住宅街に、音が響いた。その瞬間、僕は無力化され、君の意のままに動かされてしまった。自分が寝かしつけられるその光景を、辛うじてある意識で見守ることしかできなかった。


眠りに落ちる寸前に見た君の顔は、あまりにも妖艶だった。しかし、不気味さ、儚さ、そして一抹の愛しさの他には、何も感じなかった。




夜、彼は悪夢にうなされた。あの一刻も早く忘れたい記憶が、また夢に現れたのだった。


目を覚ますと、また君が、こちらを覗いていた。起き上がって見た景色に目を疑った。友人が床に倒れ、血みどろになっていたのだ。胸に恐怖と絶望が広がった。


「これは…どう…いう…こと…だ?」


僕は君を問い詰めた。声は震えていた。君は表情一つすら変えず、楽曲の様な透き通った声で話し始めた。


「彼は私のあなたへの愛を否定しました。その上…」


これ以上、何も耳に入ってこなかった。言葉を失い、君の無表情に恐怖しか感じられなかった。心が混乱し、何が正しいのか分からなくなっていた。出迎えの際に見送ってくれたあの姿さえ、フィルムが白飛びしたかの様に色が()せてしまった。


君は何もなかったかのように、習慣であるハグを求めてきたが、僕は突き放した。

「もう、終わりにしよう。」


自分の声をこれほどまでに冷淡だと感じたのは、初めてのことだった。


君は「あなたまで…私を疑うの?」と泣き出した。


初めて見た君の涙に、幾つもの意味で『一瞬だけ心を揺さぶられた』が、すぐに友人の死が現実であることを思い出し、辛うじて冷静さを保った。


「君は人殺しだ。少し断られるだけでは済まない罪を、禁忌を犯したのだ。私の唯一無二の友人は、君の手によって殺された。その事実は揺るがない。」


僕は冷たく言い放った。心には痛みと虚しさが同居していた。僕は君の手を払いのけ、息が既にない友人の元に駆け寄った。君はもう、指を弾いて彼を支配下に置こうとはしなかった。しかし、友人の手にナイフを見つけ、ハッとした。


「彼は…君を…」


僕は言葉を失った。友人が君に危害を加えようとしていたことを理解し、混乱と後悔が胸を締め付けた。


ーーあれ。なんで…なんで自分も泣いているのだろう。


ーー…そうか、どうやら自分は、どこかで君を何とか理解しようとしていたようだ。


君は静かに答えた。


「酔った貴方が私のことを話してしまった様ね。彼は貴方の友人だと言うから、容易く家にあげてしまったけど、実際は私の様なものを破壊しようとまでする、ただの残忍な人だった。ここは、周りから望まれない存在をみな置き去りにする世界だと知ったわ。貴方にとっては大切な人だったのでしょうけど、再起不能にするまで戦わざるを得なかった。」


君の息遣いが激しくなっていく。いつの間にこのようなことを覚えたのだろうか…。


「いくら私が作品の様なものだと言っても…!かけがえなどこれっぽっちもない存在でも…!私が貴方を愛しているという事実だって揺るがないじゃない!どうして誰も信じてくれないの!」


その言葉に混乱した。君の愛は偽物なんかではなくて、本当に、本物なのか…?幾らでも替えが利くのであれば、『そのうちのたった1つ』など無価値に等しいのではないか。


ーーそれでも、君は確かにここに生きているんだ。


「…約束するよ。もう、君を泣かせない。」




数年後、遂に僕も死んだ。友人が死ぬ数年前に血塗れにして死んだ君と、(ようや)くお揃いになった。もう寿命なんか関係なくない。異端なら異端で構わない。これから永遠の愛を築いていこう、そう、改めて誓った。この機械仕掛けの様な心から。



















ーーそうか。僕らはヒューマンアンドロイドなのか。

【歌詞】

目を覚ますと そこには

君が座って こちらを覗いていた

「疲れてるの?」「正気か?」

消えてしまって 呆れられていた


君の弾く その音で僕は もう君に抗えない

君との運命の糸に 縛り付けられ

僕の何かを 吸って嗤う君は まさに怪物

不気味なようで 儚いようで どこか愛しい


悪夢が覚めて そこには

君が座って こちらを覗いていた

過去の記憶は 兇器さ

月日も経って もう癒えたけどさ


Ah...Ah!

覚悟を決めた もう終わりにしようか

Ah...Ah!

彼は…君の手で...!


君からの 抱擁さえ拒んだ もう君を許せない

僕の大切な人は また一人消えて

こんな時さえ 表情変わらぬ君は やはり怪物

なのになんで ただ泣いていて どんな意図なの?


周りから 望まれないからって 置き去りにされる世界

これまで僕は非情な 過去を拗らせ

やっと気づいた "本物"の方が むしろ怪物

"作品"だって 堪忍だって 何が"人"なの?


君の愛は "本物"なのだろうか この"複製"的な生体

"本物"は緋色に 染まり朽ち果て


底に消えても

"君"に生きている もう君を泣かせない

僕の運命の人は ただ一人君で

君の何かを 喰って嗤う僕も やっと怪物

"お揃い"なって 喰らいあって ふたり糸繋がる


たとえ僕らが "想定外"だろうと もう君と離れない

僕の大切な人は ただ一人君で

"永久"を破って ずっと一緒の僕ら ふたり怪物

いつまでだって いつまでだって ふたり糸絡め

"人"すら超えて 愛しさ増して ふたり糸だらけ

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