準備
式典まで残り数週間。
ユイもその準備でひっきりなしに働かされていた。
(ここの部屋広い……)そう呆然としながら、掃除を始める。
(この部屋使うのか?)そう思いながら床を掃いていた。
ここ最近掃除している部屋は殆どがそういう部屋だ。まあ、式典で人がたくさん来るから万が一という訳だが――
(本当に使うのかここ……)と呆れていた。
「ふぅー何とか終わったな、後は報告に行くだけか……」
そう言って廊下を歩いていた。
日もだいぶ短くなり秋が近づいているのを感じる。
「サンマ食べたくなるな……」
家出する前は食事も豪華だったためたまに恋しくなってしまう。
ボーっとしていたら。
「きゃぁああ」と耳がキーンとするぐらい大きな叫び声がした。
(ここから近い、何があったのか――)そう急いで声の方へ向かった。
「大丈夫ですか!」付いた途端に叫んだ。
「!!」見ると衝撃な光景が広がっていた。
なんと額に弓が刺さりそのまま息絶えている官僚が目の前にいた。叫んでいた給仕係は腰を抜かし声が出なくなっていた。
首元を触ってみたが脈がない、状態からして先程亡くなったようだ。血が少ししか出ていない。
(硬直もあまりしていない……)腕を動かしながら考えていた。
「これは……」よく見ると弓には文が結んであった。
ユイはその文を弓から外し、開いた。
書いていた内容にユイは驚愕した。
―― ――
(これは――)明らかな殺害予告だ。
(早く伝えなければ。)そして、報告も忘れ真っ先に文のことを帝へ伝えに行った。
そこを草陰かな覗くものは誰も気づかなかった。
「なるほど、伝えてくれてありがとうな。」
ユイは帝の部屋に行き話をした。最初は護衛に止められたが事情を話したらすぐに許可をくれた。
「一応文の内容はこんな感じです。」と帝に向けて見せた。
――帝 お前もいつかこうなる――
「かなり堂々としているな。ところでそいつは俺をいつ狙うと思う?」
「はい、恐らく式典の時を狙うでしょう。」
「ふむ、なぜそう思う?」
「帝様はあまり表には出ませんし、この御所で何か起きればすぐに誰がやったか分かるからでしょう。」
「ですが、式典を中止するわけにもいきません、どうされますか?」
これを決めるのは帝だろう。
帝は少し考えていた。少し時間が経ち顔を上げて言った。
「では、このことに関してはユリお主に任せる。」
解決しろということだ。帝の探偵になった以上こうなることは予想していたが、予想より早くその時が来てしまったようだ。
「御意。」ユイは静かに言った。
翌日は官僚が亡くなったことで話は持ちきりだった。
「怖いよねー」リンが怖がりながら言う。
「はい、心配です。」アミは落ち着いているようだ。
「弓で一撃だったみたいだよ。」ユイはそんなことを気にせず黙々と昼食を食べていた。
「うんうん聞いたよーそれに亡くなった人、帝様の補佐をしていたみたいだし。」
「!それって本当?」それは初めて聞いた話だ。
「そう、何か心配だよねー」
「そんなに心配ですか?」世間知らずのアミが言う。
「まあね、補佐が亡くなると帝がいざとなったときに守れなくなるから――」段々と声が小さくなり遂には呟き声になった。
「?どうしたの」
「もしかしてこれって」
「何かわかったのか?ユイ殿」またもや後ろから史郎が声を掛けて来た。
(もうお決まりだな。)心の中で思っていた。
「そうですね。まず単独犯の可能性があります。そして狙われるときは護衛が薄くなる時、弓で殺すでしょう。」
「ほう、なぜ?」
「まず弓で亡くなった人は帝の護衛らしいです。そうだよねリン。」
「う、うん」驚きながらも答える。
「そして文にはお前もいつかこうなる。と書かれていました。ということは官僚と同じ額に弓で撃たれるという犯行声明。よっぽど弓に自信があるのでしょう。」
「最後に官僚の遺体が廊下にあったことだ、私なら帝に直接遺体を送り付けます。」
「ヒェッ」と誰かが言ったのが聞こえた。
「そ、そうか報告してくる。」そう言って逃げるようにその場を離れた。
「すごい、探偵みたい!」リンが言う。
「あ、」しまったツイ癖で喋りすぎてしまった。
「ホントですね。流石です。」アミも笑顔だ。
「でも、これはただ事ではなさそうだ……」そう呟いて食事を終えたユイはまた部屋の掃除へ取り掛かった。