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帝の探偵  作者: 五十嵐 日陰
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犯人は、

いつもより少し文章が多いです。

手配がてこずったらしく、聞き込みが午後になった。

 「すまんな。どうにも許可が出ずらくてな。」

 しょうがない、彼にも仕事があるし私が勝手に連れまわしている。

 お人よしなんだなと少し思った。

 「ねえ、ユイ最近仕事さぼってるって?」食堂でリンに聞かれたくないことを言われてしまった。

 「う……」。ユイは目を逸らした。

 「えっとそれは、」どう言い訳をするか考えていると。

 「ユイ様はこちらのお手伝いをさせていただいているのです。」

 後ろから声がした。史郎だ。

 周りは珍しいものを見るようにこちらを見ている。

 「え、そうなのいいなー」

 実際のところ有り得ない、底辺の下働きが王宮の中心部の手伝いをするようなことは。

 「迷惑をかけただろうか?」

 「い、いえユイがそんな所でお手伝いをしていたなんて友人として嬉しいです。」

 どうやら私はいい友を持ったようだ。

 「それで、手配は?」

 「もちろん、済んでおります。」

 分かっていたが、すごいなと思った。

 「じゃあ、始めようか。」立ち上がって食堂を出た。

 

 まず、義成の仕事場へ向かった。

 「はあ、壺?それがどうした。」少し荒々しく喋り片目に包帯がしてある。

 彼の仕事は経理だ。周りではそろばんの音が立っている。

 「仕事中申し訳ございません。ご協力をお願いします。」

 舌打ちが聞こえた。嫌なのはよくわかる。

 「この包帯は。」

 「これか、火傷したんだ。夜中にろうそくを立ててたからな。」若干いら立っているようだ。

 「そうですか、シュラ様との関係は?」

 「壺とシュラ様一体何が関係するんだ?」

 「聞いていないんですか?シュラ様の壺が盗まれたんです。」史郎が補足する。

 「そうなのか、だから騒がしかったんだな。」

 「どういうことです。」ユイが驚いたように言った。

 「誰かが言ってたんだよ。誰もいないシュラ様の部屋に誰かが侵入したって噂。」

 「そんなのが広まってたとは。」史郎が呟く。

 「それはどこで?」

 「おい、お前ら。あの噂どこからだ。」後ろの後輩らしき人に聞く。

 「ええと、あれは、女中達だったよな。」

 「ああ、湯湯原家のウト様の世話係だ。」

 ウト様はシュラ様の母親だ。

 「だそうだ。」

 「ありがとうございます。それでは最後にこれが何か、分かりますか。」

 とユイは服の中にしまっておいた欠片を取り出し見せた。

 「ん?なんだ。」ぐっと顔を近づける。

 「土?」これが絞り出した答えだろう。

 「お忙しいところありがとうございました。では、」そう振り向いて帰ろうとしたところ。

 「あ、そうだ。お前、俺がシュラ様の部屋に入ったこと知りたかったんだろ。」そう、止められた。

 「あ、」思い出したように振り向く。

 「シュラ様の女中に俺の妹がいるんだ。そいつに会うためにな。」

 「失礼ですが、妹さんのお名前は。」

 「ああ、叶だ。」彼の顔は誇らしそうだった。

 叶――私達を部屋で案内してくれた女中だ。

 「そうでしたか、では今度こそ。」

 「ああ」ユイは義成がいいお兄さんだなと思った。

 「そういえば、欠片、持っていたのか。」史郎が呆れながら言った。

 「まあね」ユイは俯いて暗い顔をしていた。

 

 倉久の仕事場は宝物庫の確認だ。

 「はい、聞いています。盗まれたんですよね。」少し弱々しい印象を受けた。指には包帯をしている。

 「ええ、では3つほど、指の包帯は?」

 「猫です。かわいいなと思って触ろうとしたら引っかかれたんです。」

 「猫引っかかれると痛いですよね。私も何回か引っかかれて腕が傷だらけになりました。」

 史郎がその話に同情するように言った。

 「そうですよね。痛いんですよ。」そう雑談していたが。

 「そうですか、ではシュラ様との関係は?」お構いなしに質問をする。

 「昔からの知り合いでお茶を誘ったんだ。結局断られてしまってすぐに帰ったがな。」

 倉久は寂しそうな顔をしていた。

 「そうですか。昔からとは?」ユイはそんなことを気にせず、話を続けた。

 「では最後にこれ、何なのかわかりますか。」

 先ほどの欠片を見せた。

 「何ですか?これ、分かりません。」

 「そうですか。ありがとうございました。では。」

 「ええ、早く見つかってくれると嬉しいですね。」

 「はい。」そう言って次へ行った。

 「意外とあっさり終わったな。」史郎が言ってくる。

 「まあ、聞かれたことにすぐ答えてくれるからね。」


 最後に定輝の居る仕事場だ。彼の仕事は王宮設備の確認だ。

 「なるほどな。壺が無くなったのか。」

 「何か知っていることはありますか?」

 「俺が確認した時はあったしな。」

 「それはシュラ様の部屋に行った時ですか。」

 「ああ、あの壺扱いが難しいからな、定期的に確認しねぇと。」

 「じゃあ、その仕事が減ってよかったな。」と史郎が言う。

 「はあ?無くなったのは俺が原因じゃねぇよ。」

 「余計なこと言わないでください。」と史郎に呟く。

 「だって、怪しいじゃねぇか。あいつは壺を触れるんだぜ。」とお互いヒソヒソと話した。

 官僚があいつと言ってもいいのだろうか、そうユイは思った。

 「では、最後にこれ何か分かります?」ここでも破片を見せた。

 「は?んだこれ何かの破片か?」

 「いえ、聞いてみただけです。お手数かけました。」

 「おう、そういや最近高ぇ壺を買ったやつが居たような。」

 「!なるほど、ありがとうございました。」

 そう言って真っ先に走っていった。

 「何かわかったのか?」

 「ああ、犯人は分かった。あとどうやって壺を持って行ったのか。」

 「どこへ?」

 「シュラ様の邸宅へ、聞きたいことがある。」

 「なるほど、俺は許可を取ってくる。」

 「ありがとう。」

 そう言って、邸宅へ向かった。

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