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帝の探偵  作者: 五十嵐 日陰
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現場検証

 「は、はじめまして探偵のユイと申します。」

 「そうか、よろしくな。奥には入るなよ。」

 そう言って横を通り過ぎた。

 「はい、」すれ違いざまに言った。

 シュラ様は用事があるようで外出していった。

 「すみません、シュラ様は気の強い方なので、初対面の女性の方には特にあたりが強いのです。」

 「そうなんですね。」

 「申し遅れました。私、シュラ様の女中をさせていただいております。叶と申します。」

 丁寧にお辞儀をしてもらった。流石お家に仕える者だ礼儀作法が様になっている。日ごろからたたき込まれているのだろう。

 そうして、部屋の入口のみだが現場検証が始まった。

(ん?これは……)何か落ちている。しゃがんで拾った。何かの破片だろうか、茶色っぽい。

 「何かの破片か?」史郎が話しかけた。

 「さあ……」

 「無くなった壺はどんな色をしていますか?」そう問いかけた。

 「そうですね……確か白色と赤でしょうか?」

 「そうですか。」

 「では、これは無関係か……」

 本当にそうだろうか、何か引っかかる。そう思い欠片を服の中に入れた。

 「いつ無くなられましたか?」

 「5日前です。」

 「ここに入れる人は?」立ち上がりながら聞いた。

 「シュラ様の許可を取られた役人以上であれば」

 「なるほど、」なら女中以外にも役人も盗むのは可能か。

 「最近ここに来られたのは?」

 「官僚の義成さまと倉久さま、それに定輝さまです。」

 「ありがとうございます。」

 「何か分かりましたか?」様子を見ていた史郎が声を掛ける。

 「恐らく壺を盗んだ犯人は3人の官僚の方です。」

 「女中の可能性は?」目の前に女中がいるのにそれを聞くのは失礼だなと思いながらも答える。

 「いえ、もし盗んだとしたら盗むところを誰かに見られているはずです。」

 「だが、官僚も同じでは?」

 「ええ、ですがあの方たちならできる可能性があります。」

 「!! どういうことだ!」

 「もし、あなたの壺が見たいと言われたらどうしますか?」

 「そりゃあ見せるな。」

 「そうですね、ですが断られたら?……もしかしてシュラ様は装飾品を好みますか?」

 「ええ、帝様に振り向いてもらうためだと聞いておられます。」

 気が強いけれど努力家だなと心の中で思った。

 「では、そんな物に触れられたら?」

 「そうか!シュラ様は断る。」

 「そうです。だから見られないようにしたのでしょう。」

 「だが、なぜ壺がなくなる?それにあんなに大きな壺だ持ち運ぶにも無理がある。」

 「はい、そこなんです。それに犯人も……」

 「では、その聞いてみるか?」

 「いいのですか!」振り向いて元気な声で答えた。

 

 「ありがとうございました。」結局、玄関先まで見送ってもらった。

 「盗んだ方、見つかってくれると嬉しいのですが……」心配そうにうつむく。

 「必ず見つけ出します。」

 「ありがとうございます。」顔を上げ微笑んだ。彼女もきれいな顔立ちだ。

 

 「じゃあ、手配するからな。」

 服装を下働きの格好に戻し寮へ戻ろうとした。

 「ありがとう。」正直いつ手配しているのか気になるところだ。

 「じゃあ、明日、案内するからな。」

 そういえば、官僚の中に入ったことはないなと思った。

 「分かった。」

 カラスの声が鳴いている。もうこんな時間か、今日一日仕事をやっていないので怒られるか心配だ。

 そう思いながら廊下を歩いていると、誰かにぶつかってしまった。

 「わっ!」

 「す、すみません。」

 見上げると大物が目の前にいた。

 一ノ澤 キク――彼女はもう一人の“お家”妃候補だ。

 「も、申し訳ございません。」

 「いえいえ、気付かなかった私も悪いのよ。」

 「どう処分を……」彼女も権力者だ失礼なことがないようにと思ったが――

 「気にしなくていいわよ。にしても……」顔を近づけられた。嫌な予感が。

 「ど、どうされました?」

 「下働きにしてはいい顔してるわね。」

 「へ、」予想外な回答をしたため間抜けた声を出してしまった。

 「あら、ごめんなさい。では。」

 「はい……」

 そう言って行ってしまった。いきなりすぎて驚いてしまった。

(帰るか……)また廊下を歩いた。


 「先程の子、首にすればよかった……」

 キクは部屋でつぶやいた。

 

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