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帝の探偵  作者: 五十嵐 日陰
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ユイ

この世で一番欲しいもの、財力、容姿、才能、人望、武力だろうか、しかし結局のところこの世のすべては『権力』である。

 「おい、ここにユリ様はおられるか?」誰かの叫ぶ声が聞こえる。

 「いったいどこへ行かれた。」そう呟いている。

 探している役人とすれ違った少女、彼女はユイ 帝の探偵である。

 

 数日前

 ユイはこの国の中心宮廷で下働きとして働いている。午前中の仕事が片付き昼食休憩として食堂にいた。

 「ユイお疲れー疲れたー」

 声を掛けてきたのはリン ユイの隣へ座る。

 「お疲れ、今日の食事はリンの好きな漬物があるよ」

 「ホント!嬉しい頑張ってよかったー」

 今日の昼食はご飯に味噌汁、焼き魚に野沢菜の漬物だ。決して豪華ではないがこれでも十分だと思っている。

 

 「そういえば今度式典があるよね」

 「うん」建国記念日で式典が毎年行われるが今年は節目の時期ということで大々的に行われる。

 「そこで帝様に会えたらな…」

 「会えるわけないでしょ私たちは下働きだから準備に駆り出されるでしょ、それに、会えたとしても顔隠れているよ」

 「そんなー残念せっかく“お家”の人にも会えると思ったのに」

 「何の話をしているのですか?」

 声を掛けてきたのはアミ下働きの中でもかなりの美人だ。

 「うんとねー“お家”の人に会えるかなって話してた。」

 「あの、“お家”って何ですか?」

 向かいに座りながら聞いてきた。

 「えー知らないのー」

 「すみません私世間知らずで」

 「“お家”っていうのは――」

 「ちょっと待ってよユイ!ここは私に任せて!」

 「いいかアミ!お家というものはこの国の中でも権力が最高峰に高い人たちのことだ!」

 リンがノリノリで解説している。

 「ほう、ほう!」

 アミも目を輝かして聞いている。

 ユイはあきれながらも半笑いで聞いた。

 「お家の人になれるのは湯湯原家、一ノ澤家、そして呉座谷(ござたに)家でその3家の跡継ぎは帝の妃候補にもなるんだよ」

 「そんなすごい人たちなの!」

 「そう、でもね……」真剣な眼差しになる。

 「!?」

 「呉座谷家の一人娘 ユリ様が」

 「失踪してる。でしょ」

 「あーユイ!いいとこだったのにーもう」

 先に言われてしまいリンは若干怒っている。

 「でも心配です。大丈夫でしょうか?」

 「大丈夫だと思うよだって……」

 「「?」」

 「……なんでもない」

 ユイはそっぽを向いて頬杖をした。


 ユイは誰にも言っていないことがある……それは彼女が失踪した本人であるからだ。

 簡単に言えば家出したのである。

(こんなこと誰にも言えるわけないだろ)

 「他にも湯湯原家のシュラ様は……」

 「えーすごいです!……」

 二人はお家の人について盛り上がっていた。

 最後の一口を食べ終えたユイは立ち上がり、「そろそろ午後の仕事始まるよ」と言った。

 「え、うそうそ」

 「早くしないと……」

 二人は急いで昼食をかき込んだ。


 「うんじゃ、午後もがんばって。」

 「うん!またねー」

 ユイは洗濯物を運んだ。

 (この世は権力で動いている。私の家だってそうだ、立場を利用し好き勝手やってる。)

 そう考えているうちに目的地へ着いた。

 「洗濯物を持ってきましたー」

 「はーいここに置いといてね――」

 ユイは部屋の中へと入っていった。

 その様子を陰でじっと見ている男にユイは気付かなかった。


 「えっと、次の仕事は風呂の掃除か。」

 そう言いながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。

 「おい、ちょっといいか?」

 「!、はい、何でしょうか?」

 若干驚きながらも後ろを向いた。

 居たのは今にも真面目そうな男だ。

(公家か、何かあったのか?)

 「君、ユリという女性を知っているか?」

 「⁉、もちろんですとも、それがどうされました?」

 まさか自分の名前が出てくるとは思わなかった。頬に一筋の汗が流れているのが分かった。

 「……似てるなと思ってな。」

 ユイは目を逸らし、一歩後ずさりをした。

(これは……)バレたなと正直思った。

 「き、気のせいでは。」

 「そうか?」

 男は顔をぐっと、近づけた。もう一歩後ずさりする。

 「ごまかしても無駄だぞ。」

 きっぱり言われてしまった。

 「はい……申し訳ございません……」

 やはり隠し通すのは無理だった。このあとの言い訳をどうしようかと考えた。


 「付いてこい」

 そう言われて付いてきているがどうも自分の家ではなさそうだ。

 「あの、ここは」

 「君に会いたいと言っている方が居られる。」

 「はあ、」

 一体だれかもし両親だったら一目散に逃げるなと思った。

 「ここだ。」

 ユイは言われた場所を見上げた。そこにはとてもでかい襖があった。

 あまり見覚えのない部屋、通ったこともない、いったい誰がいるのか、そう思いながら襖を開けた。

 「……失礼します。」

 「久しぶりだなユリ」

 「!、え……」

 ユイの正面には帝が座っていた。

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