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帝の探偵  作者: 五十嵐 日陰
16/20

下働き

 「へ?」思わず変な声が出てしまった。

 「どうした?()()」本憲は笑っている。嫌な顔だ。

 「誰ですか、それは。」と目を逸らす。

 「とぼけるな、お前がユリだということは分かっているんだ。」

 これ以上言っても逃がさない気だ。ユイはため息をつき、

 「仕事の邪魔をするな、と言ったばかりでしょう、私は行きますから。」

 そう言って本憲の手を振り放った。 

 脱衣所の扉に手を掛けたが何かに気づき、振り返る。

 「……あの」

 「なんだ?」

 「何でついてくるんですか?」

 「一緒に行くかと言ったのはお前だろう、ならいいじゃないか。」と言ってくる。

 ユイは大きなため息をついた。


 (案の定だな……)

 「本憲様ー」目の前に映る光景は本憲の周りに集まっていく同僚たち、仕事どころではない。

(だから連れて行きたくなかったんだよな……)と思いながらまだ終わっていなさそうな所を探す。

 「ここか……」終わっていなかったのは厠だった。何で、最初にやらないのかねと思いながら袖を捲し上げる。

 「うげっ」そう声を上げたのは何故かここに入ってきた本憲だった。

 「何ですか?」しつこいなと思いながらこちらを睨む。

 「お前今までこんなところをやっていたのか……」

 「はい、そうですが。」変な質問だなと思いながら答える。

 いきなり肩をガッと掴まれた。さっきも似たようなことされたなと思いながら本憲の方を向く、

 「汚い――」と呟く、まあ確かに厠は下働きにとっては一番やりたくない場所ではあるが、ユイはあまり気にはならなかった。むしろ、ユリだった頃は今までやったことなかった経験だったので楽しんでやっている。

 「お前は今日からこんなところを掃除するな!明日から俺が掃除場所を決める。」

 「なんで?」訳が分からなかった。


 それからの仕事は酷い物だった。

 掃除場所はほこりすら見つからないよく手入れされた部屋の担当だったり、なぜか一度掃除された場所を確認のためだと言われやらされたり、恐らく本憲が介入したのだろう。自分にとっては大迷惑でしかない。とうとう不満が限界を超えそうになったので、本憲に直談判をすることにした。

 下働きの監督官は普通の役人とは少し離れた位置に仕事場がある。下働きの仕事場が近いというのもあるのだが、一番の理由は寮が近いということらしい。

 本憲の仕事場へ向かおうとしたのだが、不意に襖が少しだけ開いているのを見かけた。そこの部屋は物置として使われていて、人が出入りしたことはほとんどない。ユイは開いた隙間を凝視した。まるでなにかに吸い込まれれるように何かがおかしい、そう感じた。

 ユイの好奇心がそれを止められるはずもなく襖に手を掛ける。

 開けてみたが視界は暗く何があるのかよく分からなかった。

 明かりを開ける前に持ってきた方がよかったなと後悔しながら、周りを見渡す。しばらく使われてなかったであろう部屋はほこりが空気中に舞い、ただでさえ暗いのに余計悪くさせる。

 ふと、何かがあるという気配を感じた、得体のしれない何かが、嫌な匂いが鼻に入る。鉄か?

 足元で布が擦れる音がした。

 やっと目が慣れ置かれている物の判別がついてきてとある物体に目がいった。

 何かが倒れている?まるで人が……そう思った瞬間思考を止める。考えすぎだ、まさかな、と思いながらもやはり好奇心は止められないようで、恐る恐る見る。

 そこには、血を流して倒れている人がいた。上には箪笥が乗っかっている。

 「おい誰だそこにいるのは。」偶然通りかかった役人が奥から声を掛ける。

 「今すぐ来てくれ、人が倒れている!」運がよかったと少し思いながら役人へ叫ぶ。

 「何だと!見せてみろ。」とユイがいるところまで駆け寄る。

 「これは……」その役人も思わず声が出ない。

 「箪笥をどけられますか?」

 「やってみる。」と言って箪笥に手を掛ける。流石、力自慢の役人というべきか重そうに見えた箪笥が簡単に持ち上がる。

 「この人……」ユイが呟いた。

 「知っている人か?」その声に気づいた役人が声を掛ける。

 「私の同僚だ……」

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