丸坊主の山
時間
『丸坊主の山』
「一つ植えるの孫のためー。」
「二つ植えるの村のためー。」
清兵衛さんは村いちばんの大地主で村の山を全部持っていた。山には杉の木が植林されきれいな山じゃった。
清兵衛さんは毎日山へ出かけては手入れをしていた。
しかし、植林とは植えても植えてもすぐに収穫できる農業とは違い子孫のために新しい木を植えていくのじゃった。
だから清兵衛さんは
「一つ植えては孫のためー。」
「二つ植えては村のためー。」
と毎日歌いながら木々の世話をしていた。植えた木が材木になるのは何十年も先の話し。今、あちきが木々でおまんま食えんのも、みんなご先祖様のおかげじゃて。
そんなある日
「お国の一大事じゃ。木々を売ってくれんかのー。」
村長さんからのお願いだった。
「おらの木々がお国のためになるならええですよ。」
清兵衛さんは二つ返事で木を売ることにした。
「おらの材木国のためー。」
「おらの材木兵のためー。」
清兵衛さんは毎日毎日お国のために木々を切り出した。
半年もたつと木は山からなくなり丸坊主の山ができあがった。
清兵衛さんは、また一から木々を植え始めた。
「一つ植えるの孫のためー。」
「二つ植えるの国のためー。」
「三つ植えるの村のためー。」
しかし植えども植えども木々は大きくならず清兵衛さんは丸坊主の山に木々を植え終わってしまた。
清兵衛さんは子供たちを集めた・
「お国に売った木々の貯えはある。無駄に使わず木々が育つまでは、それで生活をするんじゃぞ。」
子供たちは清兵衛さんの話をあまり真剣に聞いていなかった。
清兵衛さんが亡くなると子供たちは豪勢に遊びだした。清兵衛さんの残したお金が無くなると山を切り売りし遊びを続けた。
そうしてとうとう売る山も無くなり子供たちは村から姿を消した。
今でも山からは
「一つ植えるの孫のためー。」
「二つ植えるの村のためー。」
と歌いながら山仕事をする人が居るらしい。
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