名探偵と助手・三部作 第二部 天才名探偵、助手から逆襲される
「さて、助手くん。私は第一部で犯人だった天才名探偵だ。これは第二部だから、第一部とは犯人を変える必要がある。という訳で君、犯人になりなさい」
「また初っ端から飛ばしてますね、先生。何処の世界に、自分の助手を犯人に仕立てる名探偵が居るんですか」
「仕方ないだろう、登場人物が二人しか居ないんだから。また私が犯人だったら、私は只の事件起こし屋さんになってしまうじゃないか。さあ、きりきり白状しなさい」
「分かりましたよ、もう……えー、そうです。やったやった、私がやりました」
「何て事を……あんな恐ろしい事を君が、やってしまうなんて……ああ神様……」
「いや、待って先生。何? 私は何をやった事になってるんですか?」
「そんな事は私の口から言えない。それに、起きてしまった事は仕方ない。ここで解明すべきは、犯行の動機だ。猟奇的な事件の真相。犯行を起こした者の心理を追っていくのが、最近のミステリー界で流行ってるんじゃないかなぁと私は思う」
「何で、そんなフワッとした分析なんですか。えー? 何やったのかも分かってないのに、私は犯行の動機を告白させられるの? 嫌だなぁ……」
「猟奇的な事件に付いて説明させられるよりはマシだろう。何故、やったかを答えるだけで良いんだ。難しい事を考える必要は無い。自分の胸に手を当てて、よーく考えて発言しなさい」
「これ冤罪事件ですよね? しょうがないなぁ、もう……えーっと。私が、こんな事をしてしまったのは、強い想いによるものです」
「うむ、強すぎる想いは時に、凄惨な事件に繋がるものだ。話を続けてごらん」
「はい……私は、ある人に想いを寄せてきました。その人は、いつも私に無茶ぶりをしてばかり。いきなり自分が犯人とか言い出すし、かと思うと、私に犯行の動機を告白しろとか言うし。理不尽、極まりないですよ」
「う……うん……」
「でも、分かってるんです。私は、その人から離れられない……いいえ、離れたくない。だって好きだから。その人の一挙一動から、私は目が離せないんです」
「お、おぅふ……」
「私が、あんな事をしてしまったのも──実際、何をやったか分かってませんけど──私が想いを寄せた、あの人が原因でしょう。こう言うと責任転嫁みたいですね……でも知ってほしいんです! 私は、あの人のためなら何でも出来るって。人生を狂わされたって構わない! 好き、大好き! 彼女が私の全て!」
「あの、もういいです……続きは第三部で」