【問】断罪予定の悪役令嬢に転生してしまった私にできることは? 【答】なし
馬車を降り、目の前に広がる学園の光景を目にした瞬間、前世を思い出した。
どうも、卒業パーティで断罪予定の悪役令嬢です。
うわーまじかー……。王立の学園で、しかも衆人環視の卒業パーティで断罪って。それもう国の意志ってことじゃん。
あーどうすっかなー。前世を思い出した瞬間死亡確定って、やる気無くすわぁ。
え? 断罪回避しろって? いやいや、無理無理無理無理カタツムリ。たかが小娘に何ができるっていうのよ。
冤罪の証拠を集める? はい無理ー。そもそも頼める人材がいない。使用人に侍女? あいつらは当主に雇われているのよ、私にじゃない。そんな人を使ってみなさい。翌日には……、いや当日中に私は病気(意味深)になるでしょうね。
自分で証拠集め? はい無謀ー。あのね、ここは王立学園なのよ。ここで起きることは王が認めたことなの、わかる? それを覆す証拠集めって、ギロチンに首を差し出すようなものだわ。
家から逃げ出す? 頭の中がお花畑なの? ほんとに脳みそ入ってる? そんなに言うなら、無一文で、知らない国に、その身一つで行ってみなさいな。無事に生活できるわけないじゃない。
まあそもそも貴族街どころか屋敷の中、もっと言えば部屋から出た時点でばれるけどね。当たり前じゃない監視がついてるなんて。
いい、令息令嬢なんてね、当主のスペアでしかないのよ。当主じゃないから代わりなんていくらでもいるの。変な動きをするならポイすればいいの。わかる?
はあ〜、ほんと嫌になるわ。何事もなく(笑)卒業パーティ当日をむかえたわ。
前世の記憶とはちょっと違って、陛下は外遊先の隣国から戻って来れなかったみたい。
「婚約を破棄する!!」
はい。断罪は予定通りです。王子がやらかすってのはすでに公然の秘密状態だったので、周りの皆さんも落ち着いている。私も、もうどうにもならないとわかっているので落ち着いている。ただ死ぬにしても苦しまずに死にたい。
「承知致しました。毒杯を賜る慈悲をお願い申し上げます」
取り巻きその1である宰相の息子が変な顔をしている。あっ、ふーん。そういうことね。全てわかったわ。
陛下の外遊は宰相のプランだった。不在の間に王子が問題を起こして私が死ぬと。我が家には隣国からの血が入っているから、隣国が口と手を出す口実としてはうってつけだ。これは足止めされている陛下も生きてないんじゃないかな?
はあ〜、宰相が国を隣国に売るか〜。当然我が家の当主も仲間だろう。いや〜、やっぱり私にできることなんて何もなかったな。うんうん。
それじゃ皆様さようなら! ごっくん!
顔に出てしまった宰相の息子君はこの先生き残れるだろうか。