伊瀬…お前…
「これどうなってやがるっ」
俺は悪戦苦闘を強いられていた。ダンボールに。
「くそっ! や、やべぇ…あかねぇ」
割と本当に開かない。というか届いた時から感じてはいたがガムテープがガチガチベタベタについてやがるもんだから手腕じゃビクともしなかった。
かれこれ10分程の格闘の末、遂に力尽きた。
本来ならばハサミを使用したい所なのだが生憎と今までの生活でハサミを欲したことは無かった。というか普通にゴリ押しで開けていた。つまり、家にハサミが無いのだ。
頼みの綱として伊瀬に送ったチャットは既読すらつかず。完全に詰みとなった訳だ。
ピンポーン
そんな中、リビングで倒れ伏す事10分。遂にインターホンが鳴った。
「やっと来やがった。何が15分だ。5分も遅れやがって…」
重い足取りで玄関へ向けて歩を進める中、仁はふと考えていた。実は伊勢と実際に会うのは初めての事の為、お互いで把握していたのはその声と感じ取った性格のみ。実際に顔を見て話したことはなかったし、その機会がある訳でもなかった為ある意味で興味はあった。
どんな奴だろうか。声は低く性格も控えめとまではいかないにしろ落ち着いていた奴だった。
しかし実際に見ると意外なパターンが多いイメージだから結局は分からないもんか。
「考えても仕方ないか。てかもう前にいるし見た方が早いか」
玄関に着くとドアの施錠を外し、扉を開ける。
ガチャ
「おい遅い…ってあれ?」
あれ、いない。
え、幻聴?
でもインターホン鳴ったよな…。
辺りを見回すも該当する人影すらない。
しばらくの沈黙の末、とりあえず俺は玄関のドアを閉じた。
いや、どういうことだろうか。これが俗に言う怪奇現象と言うやつなのだろうか。
悶々としていても答えは見つからない為俺は伊勢に携帯でチャットを送った。
『インターホン押した?』と。
すると既読が着く。
『押した』と。
「押したのかよっ!?」
ここで彼は思考が完全に混乱していた。まず何から考えるべきなのだろうか。初めて相手の思考が読めず自分の思考すら混乱を招くというよく分からない自体が起きていた。
しかしここで自身の携帯が震える。
『いやあの、今更言うのもなんだけどさ。急に恥ずかしくなったっていうか』
携帯にはそんなピュアなメッセージが送られていた。