翌日
「みんなぁっ! 今日もアルミナのライブに来てくれてありがとうっ!」
「「「「うおぉぉぉっ!」」」」
熱を感じるほど眩いスポットライトに照らされて、アイドルである私、アルミナは脚光を浴びていた。
みんなが私を見て、私はみんなを見ている。
この光景はやはり最高だ。
みんなが私に熱狂してくれているのだから。
今日もマイクを握り、私の歌声を、私を知ってくれたみんなに届ける。一糸乱れぬ踊りを加えて、2曲3曲と歌を歌っていく。みんなの幸せそうな顔を見ると、堪らず嬉しくなった。そしてそれは私の生きがいになっていた。あぁ、《Love second》しかない。《Love second》こそが私の本来あるべき居場所なんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「アイドルなんてもんも《Love second》にいんのか」
『あったりまえだろ。もう《Love second》に無いものなんてねぇって。なんなら現実世界に無くて《Love second》にある物なんてのもあるしさ』
「…それ人類の本末転倒じゃねぇか?」
翌日の今日。俺は唯一と言っていい(利用価値を見出した)友人とボイスチャットを通して会話をしていた。
もちろん、内容は《Love second》に関するもので昨日の出来事も伝達済みだ。
「にしてもだな伊瀬。お前は推薦されなかったのか?」
『あーお前の言ってた奴か。どうせあれだろ。お前の推薦は五十嵐専務のおかげだって。そこら辺融通効いてるんだろ』
伊瀬は根拠も無しにそう語る。十中八九合っているのだが。因み五十嵐専務とは昨日俺に《Love second》の作戦の推薦をした女だ。
「まぁな。そんな感じだ。人数とかどんなもんなんだろうな。こっちに提供された情報は少なすぎんなこりゃ」
『お前が後日に資料送れって言うから遅れてんだろ。自覚ないのかよ』
「あぁそうだった。ならもうすぐ来るんじゃねぇか?」
ピンポーン
案の定。噂をすればってタイミングで見事インターホンが鳴った。
「タイミングが良いな。資料とってくるわ」
『あ、あぁ。てかインターホン鳴るって事はポスト投k…』
なんか伊瀬言いかけてたが…まぁ問題ないだろう。
俺はヘッドホンを外し椅子から立ち上がる。
玄関のドアを開き、配達員と思しき人間に声をかける。
「あーすいません。資料ですよね。預かりま…」
「澄川仁さんですね。こちら事務局からのお届け物ですね。こちらに印鑑を」
は?
『だから言っただろ。資料はポスト投函だからインターホンが鳴らないんだよ。てかお前外面だけは聖人みたいな言葉遣いだなおい』
「はぁ。ったくでけぇよ、これ」
伊瀬の言葉を流し、仁は部屋のダンボールに目をやる。部屋に運ばれていたのは自身の身長程のダンボール。幅もそれなりにあるためだいぶ部屋が圧迫された感じだ。
「こんなデケェもんなのか。…てか伊瀬、お前は《Love second》入ってことあんのか?」
「ん? あぁあるよ。もうランクも62だからな」
「ガチ勢じゃねぇか。てかランク制度もあるんだな」
『そりゃね。ランクって制度はプレイヤーを楽しませるエンターテインメント且つ継続力を増やすモチベーションでもある。プレイヤーも運営もウィンウィンな制度なんだよねこれがさ』
なるほどね。
とりあえずはこれを開封して馬鹿でかいこのダンボールをどうにかしないとな。恐らく中身はそこまで大きくないと考えている。というか実際に家電製品店でも確認したからな。
「お前暇か? これを機に俺ん家来ないか? 開封手伝ってくれよ」
『え、マジで? 行くわ。住所送ってくんね。都内だよな?』
「ほい」
俺は携帯のチャットで伊瀬に住所を送信。
『あーはいはい。結構近いから15分くらいで着くか…って。お前マンションかよ。それも中々な…』
「こまけぇこたぁいいんだよ。ほんじゃよろしく」
俺は通話を切り、ダンボールから一式を取り出す作業を開始した。