第二の世界 2
《Love second》では基本衣食住も可能だ。味覚を感じさせるといった技術もあるが、基本は食べ物のアイテムを注文することで現実世界の自宅に届くと言ったものだ。支払いはアイテム選択時、つまり仮想現実で行うことが出来るため、ほとんど現実世界に触れずに衣食住を達成する事が出来る。
そこで起きるのが現実世界と仮想現実の区別が出来なくなる、という事。そしてこれは同時に《Love second》の充実さを示している。無事《Love second》で魅了された者。つまるところ、仮想空間で自身の存在意義を見出し、承認欲求を満たした者がこういった廃人になりやすい傾向にある。
そういった廃人を現実世界に呼び覚まし、1年弱のカウンセリングを受けさせると言った事が、現在現実世界にて掲げられた日本政府の目標。すなわち、《Love second》のある意味で言う破壊だ。しかし廃人とまではいかないけど《Love second》を楽しんでいます、と言った一般的なプレイヤーもいるだろう。そんなプレイヤーに日本政府は《Love second》内に居る時間を設けた。それは何時間しかプレイ出来ない、という制限ではなく、1時間置きに20分現実世界で休憩をしなければいけないというものだ。これは実に効率的な対策だった。プレイヤーの反感を買いにくく、且つ誰でも出来るという点が功を奏した。結果として、殆どのプレイヤーが廃人とならずに上手く現実世界と仮想空間を両立させられていた。ではその殆どに入ることが出来なかったプレイヤーは? それが廃人と呼ばれる者だ。奴らは先の説明にもあったように、現実世界に強制的に呼び覚まし、1年弱のカウンセリングを受ける。そうして本来あるべき姿にさせていくのだ。…いや、戻していく、と言った方が正しい。