終章 魔法館の殺人と戦闘、リザルト
地下室での戦闘を終えた四人は地下室奥の一室で、防御魔法を展開していたジェネレーターを発見した。
すぐにロンデル達により機能が停止され、閉鎖空間は解かれた。
すぐさま駆けつけた治安部隊により賞金首マクガーソンは身柄を拘束・連行された。
取り調べの結果、彼は犯行を認めた。
自分を賞金首だと見抜き、詰め寄ったブリューを殺害し、カーマインに罪を着せることを決意。計画を進めるためジェネレーターを起動させて閉鎖空間をつくりだした。いずれ全員、殺すつもりだったという。
立場上、いずれこのような事態になると踏み、保険のため秘密裏にジェネレーターを設置したというが、入手ルートに関しては黙秘を続けている。魔法を具現化する機械は大変貴重なので、その後研究機関に引き渡された。
その後の調査でブリューの部屋から貯蔵された魔力回復ドリンクが見つかり、彼がマクガーソンの正体を見抜いた上で力の供給源を絶つために盗んだと推測された。
『魔法の宿屋』は店主が犯罪者だったということもあり、閉鎖を余儀なくされた。
突然の閉鎖だったが、宿屋界隈ではよくある話なので、次第に話題に上ることもなくなった。『あれでよくやったほうさ』と称える声も聞こえるほどだった。
使用人だったシエルとミリアンは今でも宿屋を切り盛りしている。
外部の客はとっていない。既に専属の宿泊者が四人もいるからだ。気持ち的にはリニューアルオープンをしたつもりだった。
その四人というのは――。
「ただいまー！」
事件後、パーティーを組んだロンデル、ティアリス、モック、ヘザーの四人だ。
「おかえりなさーい！」
食堂からシエルとミリアンが声を上げる。
玄関では四人がそれぞれ腕いっぱいに食べ物や飲み物を抱えている。
事件で相棒を失ったヘザーと、元々単独で冒険していたモックをロンデル・ティアリスペアが誘ってパーティーを結成した。
共に死線を乗り越えた者同士、妙に馬が合った。
近々冒険の旅に出ようと思っている。
事件が落ち着いた現在は、平原で経験積みをするのが四人の日課になっている。
その日々の中で着実に力をつけた四人は旅立つ決意を固め、シエルとミリアンも快く了承してくれたのだ。
今夜は宴だ。
色とりどりの料理が並べられた食堂で六人は談笑する。
「いつでも帰って来てね！」
シエルは目に涙を浮かべていた。
「帰る場所があるというのは、とても幸せだよ」
真面目な表情で語るヘザー。
「うん……うん……」
ついにシエルの頬を涙が伝った。
「もうシエルは！ いつでも帰って来られるんだから。泣きなさんなって」厨房から取り皿を持ってきたミリアンが言った。
アイテムショップには特定の場所へ瞬時に移動できるアイテムが売っている。が、とても高価だった。その上、必ずペアで買わないと冒険先へ戻れなくなる。
「うん……うん……一個は常に買っておくからね」
涙を拭いたシエルの頭を、ヘザーが優しく撫でた。
早速経験積みで稼いだ資金で瞬時にここへ帰還できるアイテムをペア購入した。そのせいで装備などに回す資金が枯渇したのは言うまでもない。
「まーだこの盾にはお世話になりそうだな」
ロンデルは随分使い込んだ木の盾をコンコンと叩いた。
「また稼げばいいじゃない！ 期待しているわよロンデル！ あとモックも！」
「盗みは得意だ。任せろ」
そう言うティアリスはちゃっかり新品の白いローブを購入していた。財布担当には逆らえない。
「ささ！ 料理が冷めちゃう！」
料理を囲む六人。ロンデルがグラスを持って宣言した。
「色々あったけど、事件が結んでくれた縁だ。これからもよろしく！」
グラス同士がぶつかり合う。
「あっ、ティアリス！ 今回のご褒美で、せめて剣を新しくしたいなあ！」
「ええぇ？ うーん、しょうがないなあ」
「おっしゃあ！ ほら、みんなも！ 今のティアリスは押しに弱いぞ」
「なっ！ こらロンデル！」
顔を赤くするティアリス。
「ちょうど短剣を買い替えようと思っていたところだ」
「ついでに槍もお願いしようかしらね」
深夜を過ぎても、『魔法の宿屋』の灯りが消えることはなかった。
完
読んで頂きありがとうございました。
テレビゲームのRPGが好きで、ミステリーと掛け合わせたものが書いてみたいと思ったのがきっかけです。
つまみ食いみたいなものになりましたが、お楽しみいただけたら幸いです。
ありがとうございました！
