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すべてはハルヒから  作者: まっつん
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出会いは唐突に

 私がハルヒに出会ったのは中学生の頃だ。

 私の中学校では朝の8時から20分ほど「朝読書」という時間が設けられていた。これは読んで字の如く、読書をする時間である。本を読むことで集中力や教養を身につけようといった趣旨で行われていた。

 私は本を読むのは嫌いではなかったが、こういう時間でもなければ自らすすんで読もうともしなかった。その時間のためにいつも図書館から本を借りていたのだが、だんだんと読みたい本もなくなってきた。しょうがないから何か本でも買いに行くかと休日に本屋にでかけた時のことだ。

 小学生の頃にこども版三国志にはまっていたということもあり、何か歴史ものでも探すか……と店内をあてもなくさまよっているうちに何やら見慣れぬキラキラと輝く表紙が並ぶコーナーにたどり着いた。

 そこはいわゆる「ライトノベル」コーナーだった。当時の私はオタクでもなんでもなかったため、「こういうのってオタクが読むんだよね」と思いつつ、なんとなく手を伸ばしてちらりと中を覗いてみた。そのなんとなく手にとってみたライトノベルこそが『涼宮ハルヒの憂鬱』だったのだ。

 それがすべての始まりだった。


 たった一行、たった一文、いや、文字が目に飛び込んできたその瞬間かもしれない。私の全身を電撃が貫いた。この時の感覚はいまでも忘れられないとてつもない衝撃だった。本当に瞬間的に「これめちゃくちゃ面白い」と感じたのである。

 もう、迷う必要はなかった。涼宮ハルヒシリーズ第一巻『涼宮ハルヒの憂鬱』をもちレジに直行。朝読書用の本のつもりだったが、大好きなゲームの時間も差し置き、とにかく時間があるときには本を開いて読んでいた。


 『涼宮ハルヒの憂鬱』はキョンという男子高校生の視点で描かれる物語だ。ボキャブラリーに富んだツッコミや、おっと思うような比喩表現が面白く、もうひとりの主人公涼宮ハルヒとの絶妙な距離感も魅力的な作品だ。その主人公キョンの語りがこれまでにないほど私の中にストレートに入ってきたのだ。

 なんの面白みもないと感じていた学校や人生にまばゆい光が差し込んできた。 

 これまでの私の人生にはきっと足りないものがあったのだろう。人生に何か空洞のようなものを感じていた。寂しいとか辛いとか、そのような感情ではなく、ただただ何もない。それを1ミリの隙間もなく埋めてくれたのが「ハルヒ」という存在だ。今なら確信を持って言えることがある。私の中にあった空洞はハルヒのために存在したのだと。私の人生は彼女無しでは語れないほどであると。


 別の見方をすれば私が足を踏み外した瞬間でもある。

 誰が朝読書の時間がきっかけでオタクに転落する奴が出てくると想像しただろう。先生たちが期待する教養なんてものとは正反対と言ってもいいレベルのものだろう。

 しかし人生の推進剤として重要な要素というものは、本人や周りの考えによらず本当に千差万別だと思う。勉強がそれに当たる人もいるし、恋愛や青春を謳歌することがそれに当たる人もいるかもしれない。 

 私にとっては、一見くだらない、人生が後退してしまうのではないかと思われるようなこの出会いこそが重要だったのだ。

次回

何もかもが変わっていく

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